コンビニでおにぎりを買うと、レシートが出てきますよね。
いちばん下のあたりに、小さい字で1行あります。内消費税、いくら、と書いてあるやつです。
あれ、見ていますか。
わたしは、ほとんど見ていませんでした。合計金額だけ確認して、財布にねじ込んで、そのまま捨てる。何十年もそうしてきました。
でも、あの数十円にも、ちゃんと行き先があります。
前回の第2回「振り込まれた金額が、求人票より少ない理由」(別タブで開く)で、給料から引かれるものの話をしました。健康保険・厚生年金・雇用保険・所得税・住民税。振り込まれた金額が求人票より少ない理由です。
今日は、その続きです。引かれたあと、そのお金がどこへ歩いていくのか。
まず、入口の話から。
税金は、確定申告のときだけ払うもの、みたいな顔をしていますが、そうではありません。だいたい3つの場面で、しれっとくっついてきます。
ひとつめ。稼いだとき。
給料をもらったときの所得税と住民税です。前回の主役ですね。
ふたつめ。使ったとき。
買い物をしたときの消費税。おにぎり・電池・散髪代・映画のチケット・引っ越しのトラック代。生活のほぼ全部です。
みっつめ。持っているとき。
家や土地を持っていれば、それにかかる税があります。車も同じです。持っているだけで、毎年ちゃんと請求が来ます。
つまり、、、税金は「特別な日に払うもの」ではありません。稼ぐ・使う・持つという、暮らしのほぼ全部の動作にくっついています。
前回、控除欄(こうじょらん・給料から先に引かれるものが並ぶ欄)は先回りの支払いの一覧だ、という話をしました。今日はもう一段だけ広げて、レシートの1行まで含めて見ている、ということになります。
集まった税金は、いきなり使われるわけではありません。まず、行き先が二手に分かれます。
国へ行くものと、住んでいるまちへ行くものです。
給料から引かれていた2つで言うと、所得税は国のほう。住民税は、まちのほうです。名前のとおりですね。
おもしろいのは消費税で、これは1本に見えて、途中で国のぶんと地方のぶんに分かれています。おにぎりを買った数十円が、駅前の道路の話と、遠い国の予算の話に、両方つながっている。
どの税がどっちに行くか、覚える必要はありません。
覚えておくといいのは、二手に分かれる、ということだけです。これを知っているだけで、あとの話がぜんぶ読めるようになります。
さて、本題です。
集まったお金は、どこへ歩いていくのか。
わたしは長いこと、税金は遠いところへ行くものだと思っていました。自分とは関係のない、大きくて硬い場所。
でも、身のまわりを見ていくと、ちょっと様子が違うんですね。
朝、ごみ収集車が来ます。信号が光っています。横断歩道の白線が引き直されています。消防車が出動しています。公園のブランコが直っています。図書館の新刊が入っています。学校のプールに水が入り、給食のごはんが炊かれ、雪の日には道に融雪剤(ゆうせつざい・雪を溶かす薬)がまかれています。
ぜんぶ、誰かが払っています。
そして、その多くが税金です。
つまり、、、税金の行き先は、遠い場所だけではありません。家から歩いて行ける範囲の中に、けっこうな量が来ています。
前回の話とも、ここでつながります。
病院の窓口が3割で済むのは健康保険という会費のおかげ、という話をしました。実はあの仕組み、保険料だけでまかなわれているわけではなくて、税金も一緒に入っています。
年をとったときの年金も、子育ての支援も、介護も、同じように、保険料と税金の合わせ技で回っています。
このあたりを全部ひっくるめて、社会保障と呼びます。難しそうな名前ですが、中身は「病気・老後・失業・子育て・介護のときに、みんなで支える」という、それだけの話です。
そして、税金の使い道の中でも、ここはとても大きな部分を占めています。
ここは、正直に書きます。
払った税金が、そのまま全部あなたのところへ戻ってくるかというと、そうではありません。
たとえば、借りたお金の返済に回っている部分があります。
国も、まちも、足りないときにはお金を借ります。借りたら、返します。利息もつきます。その返済に、いま集めている税金の一部が使われています。
言いかえると、いま払っているお金の中には、昔の分の後払いが混ざっている。
これは、あまりうれしい話ではないですよね。わたしも、最初に知ったときはちょっと黙りました。
そして、ここから先は、意見が分かれるところです。
税金が高いか安いか。使い道が正しいか間違っているか。何を増やして何を減らすべきか。
これは、人によって考えが違います。育ってきた場所も、いまの立場も、支えている家族の形も、みんな違うからです。
だから、この連載はそこには立ち入りません。
仕組みを説明するところまでが、わたしの仕事です。それを知ったうえでどう考えるかは、いつだってあなたの主導権のほうにあります。
もうひとつだけ、仕組みの話を。
税金の使い道は、誰かの気分で決まっているわけではありません。予算(よさん・1年分のお金の使い道の計画)という形で、毎年決められています。
国のぶんは国会で。まちのぶんは、そのまちの議会で。
そして、その場にいる人たちは、選挙で選ばれた人たちです。
ここまでが仕組みです。
投票に行くべきかどうか、どこを選ぶべきか、という話は、この記事ではしません。それは、あなたが決めることです。
ただ、ひとつだけ言えることがあります。
行き先を知らないまま「取られている」と思っているのと、行き先の地図をなんとなく持っているのとでは、同じニュースを見たときの見え方が、まるで違います。
第10講「18歳になったら、何が変わるのか」(別タブで開く)の中で、投票の話にも少しふれています。気が向いたら、そちらもどうぞ。
ここまで読んで、割合や金額が知りたくなった方もいると思います。
社会保障が何割で、借金の返済が何割で、という数字です。
その数字は、この記事にはあえて書きません。
理由は2つあります。
ひとつ。毎年変わるからです。書いた瞬間から、少しずつ古くなっていきます。
ふたつ。これがわたしの本音ですが、他人がまとめた数字を読むより、自分で1回見にいったほうが、はるかに頭に残るからです。
見にいく方法は、そんなに難しくありません。
国のぶんは、「一般会計 歳出」(歳出=さいしゅつ・1年に使うお金のこと)で検索すると、円グラフが出てきます。何が大きくて何が小さいか、一目でわかります。
まちのぶんは、もっと近いところにあります。自治体の広報誌の、予算のページ。あるいは、自治体のホームページの予算のところ。
だいたい、1ページで足ります。
いつもどおり、最後にひとつだけお願いをします。ひとつだけです。
そして、いちばん下のあたりの、消費税の行を見てください。
その数十円の一部は、いま、あなたが住んでいるまちのほうへ向かっています。ごみ収集車や、信号や、公園のブランコのほうへ。
見るだけでいいです。今日はそれで十分です。
もし余裕があれば、まちの広報誌の予算のページを1ページだけ開いてみてください。開くだけで、税金は「取られるもの」から「行き先のあるもの」に変わります。
わたしも、この記事を書きながら、レシートを1枚出して見ました。
見るまでは、ただの紙くずでした。見たあとは、ちょっとだけ、地図に見えてきます。
前回。給料から引かれるものの話。
投票の話に、少しだけふれた回。
今日すでに税金を使っている、という話(この連載の地図)。
連載の棚はこちら。
この回で育てる力:お金(副:知性)
次回は、年金の話。控除の中でいちばん大きい会費が、どういう仕組みで回っているのか。
この連載の土台:仕組みには、作った側の目的や意図があります。作られた側からは、それが見えにくい。だから、知らなかったのは、あなたのせいじゃない。習ってないだけです。
秋元進吾でした。