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誰も教えてくれなかった仕組み 第4回

その税金は、どこへ歩いていったのか

税金の仕組み

コンビニでおにぎりを買うと、レシートが出てきますよね。

いちばん下のあたりに、小さい字で1行あります。内消費税、いくら、と書いてあるやつです。

あれ、見ていますか。

わたしは、ほとんど見ていませんでした。合計金額だけ確認して、財布にねじ込んで、そのまま捨てる。何十年もそうしてきました。

でも、あの数十円にも、ちゃんと行き先があります。

前回の第2回「振り込まれた金額が、求人票より少ない理由」(別タブで開く)で、給料から引かれるものの話をしました。健康保険・厚生年金・雇用保険・所得税・住民税。振り込まれた金額が求人票より少ない理由です。

今日は、その続きです。引かれたあと、そのお金がどこへ歩いていくのか。


税金は、3つの場面でくっついてくる

まず、入口の話から。

税金は、確定申告のときだけ払うもの、みたいな顔をしていますが、そうではありません。だいたい3つの場面で、しれっとくっついてきます。

ひとつめ。稼いだとき。

給料をもらったときの所得税と住民税です。前回の主役ですね。

ふたつめ。使ったとき。

買い物をしたときの消費税。おにぎり・電池・散髪代・映画のチケット・引っ越しのトラック代。生活のほぼ全部です。

みっつめ。持っているとき。

家や土地を持っていれば、それにかかる税があります。車も同じです。持っているだけで、毎年ちゃんと請求が来ます。

つまり、、、税金は「特別な日に払うもの」ではありません。稼ぐ・使う・持つという、暮らしのほぼ全部の動作にくっついています。

前回、控除欄(こうじょらん・給料から先に引かれるものが並ぶ欄)は先回りの支払いの一覧だ、という話をしました。今日はもう一段だけ広げて、レシートの1行まで含めて見ている、ということになります。


集まったお金は、まず二手に分かれます

集まった税金は、いきなり使われるわけではありません。まず、行き先が二手に分かれます。

国へ行くものと、住んでいるまちへ行くものです。

給料から引かれていた2つで言うと、所得税は国のほう。住民税は、まちのほうです。名前のとおりですね。

おもしろいのは消費税で、これは1本に見えて、途中で国のぶんと地方のぶんに分かれています。おにぎりを買った数十円が、駅前の道路の話と、遠い国の予算の話に、両方つながっている。

どの税がどっちに行くか、覚える必要はありません。

覚えておくといいのは、二手に分かれる、ということだけです。これを知っているだけで、あとの話がぜんぶ読めるようになります。


行き先は、思っているより近い

さて、本題です。

集まったお金は、どこへ歩いていくのか。

わたしは長いこと、税金は遠いところへ行くものだと思っていました。自分とは関係のない、大きくて硬い場所。

でも、身のまわりを見ていくと、ちょっと様子が違うんですね。

朝、ごみ収集車が来ます。信号が光っています。横断歩道の白線が引き直されています。消防車が出動しています。公園のブランコが直っています。図書館の新刊が入っています。学校のプールに水が入り、給食のごはんが炊かれ、雪の日には道に融雪剤(ゆうせつざい・雪を溶かす薬)がまかれています。

ぜんぶ、誰かが払っています。

そして、その多くが税金です。

つまり、、、税金の行き先は、遠い場所だけではありません。家から歩いて行ける範囲の中に、けっこうな量が来ています。

前回の話とも、ここでつながります。

病院の窓口が3割で済むのは健康保険という会費のおかげ、という話をしました。実はあの仕組み、保険料だけでまかなわれているわけではなくて、税金も一緒に入っています。

年をとったときの年金も、子育ての支援も、介護も、同じように、保険料と税金の合わせ技で回っています。

このあたりを全部ひっくるめて、社会保障と呼びます。難しそうな名前ですが、中身は「病気・老後・失業・子育て・介護のときに、みんなで支える」という、それだけの話です。

そして、税金の使い道の中でも、ここはとても大きな部分を占めています。


でも、全部が戻ってくるわけではありません

ここは、正直に書きます。

払った税金が、そのまま全部あなたのところへ戻ってくるかというと、そうではありません。

たとえば、借りたお金の返済に回っている部分があります。

国も、まちも、足りないときにはお金を借ります。借りたら、返します。利息もつきます。その返済に、いま集めている税金の一部が使われています。

言いかえると、いま払っているお金の中には、昔の分の後払いが混ざっている。

これは、あまりうれしい話ではないですよね。わたしも、最初に知ったときはちょっと黙りました。

そして、ここから先は、意見が分かれるところです。

税金が高いか安いか。使い道が正しいか間違っているか。何を増やして何を減らすべきか。

これは、人によって考えが違います。育ってきた場所も、いまの立場も、支えている家族の形も、みんな違うからです。

だから、この連載はそこには立ち入りません。

仕組みを説明するところまでが、わたしの仕事です。それを知ったうえでどう考えるかは、いつだってあなたの主導権のほうにあります。


使い道は、誰が決めているのか

もうひとつだけ、仕組みの話を。

税金の使い道は、誰かの気分で決まっているわけではありません。予算(よさん・1年分のお金の使い道の計画)という形で、毎年決められています。

国のぶんは国会で。まちのぶんは、そのまちの議会で。

そして、その場にいる人たちは、選挙で選ばれた人たちです。

ここまでが仕組みです。

投票に行くべきかどうか、どこを選ぶべきか、という話は、この記事ではしません。それは、あなたが決めることです。

ただ、ひとつだけ言えることがあります。

行き先を知らないまま「取られている」と思っているのと、行き先の地図をなんとなく持っているのとでは、同じニュースを見たときの見え方が、まるで違います。

第10講「18歳になったら、何が変わるのか」(別タブで開く)の中で、投票の話にも少しふれています。気が向いたら、そちらもどうぞ。


数字は、書きません

ここまで読んで、割合や金額が知りたくなった方もいると思います。

社会保障が何割で、借金の返済が何割で、という数字です。

その数字は、この記事にはあえて書きません。

理由は2つあります。

ひとつ。毎年変わるからです。書いた瞬間から、少しずつ古くなっていきます。

ふたつ。これがわたしの本音ですが、他人がまとめた数字を読むより、自分で1回見にいったほうが、はるかに頭に残るからです。

見にいく方法は、そんなに難しくありません。

国のぶんは、「一般会計 歳出」(歳出=さいしゅつ・1年に使うお金のこと)で検索すると、円グラフが出てきます。何が大きくて何が小さいか、一目でわかります。

まちのぶんは、もっと近いところにあります。自治体の広報誌の、予算のページ。あるいは、自治体のホームページの予算のところ。

だいたい、1ページで足ります。


今日、ひとつだけ

いつもどおり、最後にひとつだけお願いをします。ひとつだけです。

🧾 今日の1つだけ
財布かカバンの中から、レシートを1枚出してください。

そして、いちばん下のあたりの、消費税の行を見てください。

その数十円の一部は、いま、あなたが住んでいるまちのほうへ向かっています。ごみ収集車や、信号や、公園のブランコのほうへ。

見るだけでいいです。今日はそれで十分です。

もし余裕があれば、まちの広報誌の予算のページを1ページだけ開いてみてください。開くだけで、税金は「取られるもの」から「行き先のあるもの」に変わります。

わたしも、この記事を書きながら、レシートを1枚出して見ました。

見るまでは、ただの紙くずでした。見たあとは、ちょっとだけ、地図に見えてきます。


この連載について

📖 連載 第4回
誰も教えてくれなかった仕組み
知らなかったのは、あなたのせいじゃない。
習ってないだけです。

前回。給料から引かれるものの話。

連載 第2回
振り込まれた金額が、求人票より少ない理由
記事を読む

投票の話に、少しだけふれた回。

30年飛び級講習 第10講
18歳になったら、何が変わるのか
記事を読む

今日すでに税金を使っている、という話(この連載の地図)。

30年飛び級講習 第12講
社会は、どんな仕組みで回っているのか
記事を読む

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この回で育てる力:お金(副:知性)

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次回は、年金の話。控除の中でいちばん大きい会費が、どういう仕組みで回っているのか。

この連載の土台:仕組みには、作った側の目的や意図があります。作られた側からは、それが見えにくい。だから、知らなかったのは、あなたのせいじゃない。習ってないだけです。

秋元進吾でした。

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