朝、冷蔵庫を開けて、そのまま数秒固まる。
夕方、スーパーの通路で「今日なに食べよう」と立ち止まる。夜、野菜室の奥から、干からびたきゅうりが出てくる。
これ、料理が下手なのでも、だらしないのでもありません。決める場所が悪いだけです。
献立を頭の中で決めようとすると、毎回ゼロから考えることになります。しかも、いちばん考えたくない時間帯・・・朝いちばんと、疲れ切った夕方に。うまくいくほうが不思議です。
そこで、考え方をひとつ変えます。
冷蔵庫は、保存場所ではありません。意思決定を代行してくれる装置です。
中身を「しまう」のではなく、「選ばなくてすむように置く」。それだけで、朝の5分と夕方の10分が返ってきます。
やることは、冷蔵庫の中を4つのゾーンに分けるだけです。手順ではなく、位置の話です。
扉を開けて、視線がまっすぐ届く高さの手前。ここが一等地です。
置くもの:刻みネギ、納豆、味噌、冷奴、作り置きの味噌汁ベース。そのまま食べられるか、温めるだけで食べられるものだけを置きます。
朝の動線は、これで完成します。
開ける → ①から3つ取る → 火を入れるか、そのまま → 5分以内に座る。
考える場所が一つもありません。それが狙いです。
蒸した鶏むね、豆腐、ヨーグルト、豆乳。「もう一品ほしい」ときに手が伸びる場所です。
一等地ではないけれど、迷わず届く高さ。ここが埋まっていると、夕食が一品足りない日の焦りが消えます。
冷凍ごはん、おにぎり、パン。量を調整するものは、あえて少し遠くに置きます。
近いと無意識に増え、遠いと考えてから取ります。距離が、そのままブレーキです。
甘いデザート、ジャム、ご褒美のもの。
捨てる必要はありません。朝のあいだだけ、存在を消す。 目に入らない場所に移すだけで、選択肢から自然に外れます。
我慢する必要がないのが、この方法のいいところです。意志ではなく、視界で決めているからです。
この配置がうまくいく理由は、はっきりしています。人は、目に入ったものから選ぶからです。
だから朝の自分に「賢い判断」をさせるのではなく、前の晩の自分が、選択肢のほうを並べ替えておく。冷蔵庫が、代わりに決めてくれる状態を作るわけです。
ただ、正直に書きます。ゾーン分けは万能ではありません。
うまくいかない日があります。買い出しの直後で庫内がぐちゃぐちゃな日。作り置きが尽きた週。中途半端に余った野菜が3種類だけある夜。
そういう日にわたしが考えたのは、こういうことでした。
配置で決められないなら、写真に決めてもらえばいいのでは。
冷蔵庫を1枚撮る。あるものを見て、今夜の3品を出してもらう。そこから選ぶ。
考えることが「0から作る」ではなく「3つから選ぶ」に変わります。これは、ゾーン分けとまったく同じ発想です。決める場所を、頭の外へ移している。
考えただけで終わらせたくなかったので、実際に作りました。
冷蔵庫コンシェルジュ(β)。写真1枚から、今夜の3品を出すだけのアプリです。
設計で決めたことは、多くありません。むしろ、足さないことを決めました。
庫内が雑然としていて写真だけでは足りないときは、「ほかに卵と味噌があります」と一行足せます。完璧に片づいた冷蔵庫を前提にしていません。そんな日は、めったに来ないからです。
無料で使えます。合わなければ、そっと閉じてもらって大丈夫です。
ゾーン分けもアプリも、やっていることは一つです。
「今日なに食べよう」を、頭の中から追い出す。
置き場所で決めるか、写真で決めるか。どちらでも構いません。大事なのは、疲れている時間帯の自分に、ゼロから考える仕事をさせないことです。
献立が思いつかないのは、能力の問題ではありません。毎日ゼロから考える設計の問題です。設計は、今日から変えられます。
人生は、たとえ遠回りしても、いつでも今からリニューアルできます。冷蔵庫の中も、同じです。
(秋元進吾)
冷蔵庫を開けて、いちばん目に入る場所に、朝すぐ食べられるものを3つ集めてください。それだけで明日の朝が変わります。
記事の後半で紹介したアプリは、こちらです。無料で使えます。
食事は、体の土台の3本柱のひとつです。
ほかに作ったアプリとゲームは、こちらにまとめてあります。