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誰も教えてくれなかった仕組み 第9回

その一票は、どこへ運ばれて、何に変わるのか

政治の仕組み

選挙の日、投票所で紙を1枚もらいます。

名前を書いて、折って、箱に入れる。

そのあと、あの紙はどこへ行くんでしょうか。

第4回「その税金は、どこへ歩いていったのか」(別タブで開く)で、レシートの1行から、税金の行き先をたどりました。今日は、あの紙の行き先をたどります。

この連載の、第1期の最後の回です。いちばん気をつけて書きます。


政治は、"みんなで決めないといけないこと"を決める仕組みです

まず、言葉の話から。

政治、と聞くと、テレビの向こうの、大きくて遠い場所を思い浮かべるかもしれません。わたしもそうでした。

でも、仕組みとして見ると、政治はもっと地味なものです。

ひとりでは決められないことを、みんなで決めるための、段取り。

たとえば、集まった会費(第4回の税金です)を、何に使うか。道路か、学校か、病院か、借りたお金の返済か。ひとりの気分では決められません。

たとえば、みんなが守るルール(法律です)を、どうするか。これも、ひとりでは決められません。

第12講「社会は、どんな仕組みで回っているのか」(別タブで開く)で、会費の使い道を決める係を選ぶ場が選挙だ、と書きました。今日は、その係が、どこで、どう決めているのか、という話です。


決める場所は、2階建てです

税金が国とまちの二手に分かれていたように、決める場所も2階建てになっています。

国のことを決める場所と、住んでいるまちのことを決める場所です。

国のほうには、法律を作る国会、決まったことを実際に動かす内閣、争いごとやルール違反を確かめる裁判所があります。

まちのほうには、まちのルールと予算を決める議会と、まちを実際に動かす首長(しゅちょう・市長や知事のこと)がいます。議会の人と首長は、別々の選挙で選ばれます。

ごみの収集、公園、学校の校舎、図書館。第4回で、家から歩いて行ける範囲に来ていたもの。あれの多くは、まちのほうで決まっています。国より、ずっと近いところで。


ひとりに、全部やらせない仕組みです

国のほうの3つは、わざと分けられています。

ルールを作る係(国会)。作ったルールで動かす係(内閣)。動かし方がルールに合っているか確かめる係(裁判所)。

なぜ分けるのか。

全部をひとりに任せると、そのひとりが間違えたときに、誰も止められないからです。作る人と、動かす人と、確かめる人を分けておけば、どこかで止まる。

学校の言葉で言うと、三権分立(さんけんぶんりつ)です。名前は難しいですが、中身は「ひとりに全部やらせない」というだけの話です。

ついでに、ひとつ。国会が総理大臣を選び、総理大臣が大臣を選んで内閣を作ります。そして裁判所は、作られた法律が憲法に合っているかどうかも、確かめることができます。


一票は、こう運ばれます

さて、本題です。箱に入れたあの紙は、どこへ行くのか。

まず、開けて数えられます(開票)。多く集めた人が、席に座ります(当選・とうせん)。

席に座った人たちが、国会や議会に集まります。話し合って、最後は多数決で決めます。決まったものが、法律や予算になります。予算というのは、税金の使い道のことです。

そして、その使い道が、ごみ収集車や信号や学校のプールになって、あなたの暮らしに戻ってきます。

つまり、、、あの紙は、箱のあと、国会や議会を通って、法律と予算に姿を変えて、暮らしに戻ってきます。第4回の「税金の行き先」と、今日の「一票の行き先」は、途中で同じ道を通っています。

選挙に出ている人たちは、考えの近い人同士でグループを作っていることが多いです。政党(せいとう)と呼ばれます。どのグループがいい、という話は、この連載ではしません。仕組みとして、そういうグループがある、というところまでです。

投票は、18歳からできます。第10講「18歳になったら、何が変わるのか」(別タブで開く)でも書きました。立候補にも年齢の条件があって、選挙の種類によって違います。

そして、投票に行くかどうか、誰に入れるか。これは、あなたが決めることです。行くべき、とも、行かなくていい、とも、この連載は書きません。


選挙以外にも、入口があります

一票の話をすると、選挙が唯一の入口のように聞こえます。そうではありません。

意見を届ける入口は、ほかにもあります。

国やまちが新しいルールを作る前に、案を公開して、意見を受け付ける期間があります。誰でも出せます。

議会は、傍聴(ぼうちょう・その場で見ること)できます。何を話したかの記録も、公開されています。

困りごとや要望を、文書で届ける仕組みもあります。

つまり、、、決めている場所は、鍵のかかった部屋ではありません。中で何が話されたかは、読もうと思えば読めます。

これは、第4回の着地と同じです。行き先は公開されている。自分で確かめられる。


意見が分かれることが、この仕組みの材料です

この回は、連載でいちばん、意見が分かれるところに近い回です。だから、はっきり書いておきます。

どの考えが正しいか、どのグループを選ぶべきか。この連載は、いっさい言いません。

そして、もうひとつ。

意見が分かれることは、悪いことではありません。意見が分かれるから、決めるための仕組みが必要になった。分かれることそのものが、この仕組みの材料です。

家族と意見が違ってもいい。友だちと違ってもいい。そのために、話し合いと多数決という段取りがあります。

政治の話を人前でするのが苦手な人も、多いと思います。しなくても大丈夫です。仕組みを知っているだけで、同じニュースの見え方が変わります。それで十分です。

政治にどのくらい期待するか、という書き手の考えは、第10講のほうに少しだけ書きました。今日は、仕組みだけです。


地図が、一周しました

第12講で、登場人物は3人だと書きました。わたしたち、会社、国やまち。そのあいだを、お金と働きとサービスが回っている。

この連載は、その地図のマスを、ひとつずつ拡大してきました。

無料の裏側。給料の中身。だましの台本。税金の行き先。年金の仕送り。会社という箱。値段と金利。学校の設計。そして今日、一票の行き先。

3人と、矢印が、これで一周しました。

もちろん、まだ拡大していないマスがあります。棚は、これからも増えていきます。ただ、今日でいったん、一区切りです。


今日、ひとつだけ

いつもどおり、最後にひとつだけお願いをします。ひとつだけです。

🗳️ 今日の1つだけ
あなたが住んでいる市区町村の名前と、「議会」という言葉を、いっしょに検索してみてください。

そして、いちばん最近の会議の日付を、ひとつだけ見てください。

中身は読まなくていいです。何が決まったかも、今日は知らなくていいです。自分の住んでいるまちで、つい最近、誰かが集まって何かを決めていた。その日付を目で見るだけで、十分です。

わたしも、この記事を書きながら、自分のまちの議会のページを開いてみました。

見るまでは、遠い場所でした。見たあとは、ちょっとだけ、近所の話に見えてきます。


この連載について

📖 連載 第9回
誰も教えてくれなかった仕組み
知らなかったのは、あなたのせいじゃない。
習ってないだけです。

対になる回。お金の行き先をたどりました。

連載 第4回
その税金は、どこへ歩いていったのか
記事を読む

この連載の地図(1枚目)はこちら。

30年飛び級講習 第12講
社会は、どんな仕組みで回っているのか
記事を読む

投票と、政治への期待値の話は、こちら。

30年飛び級講習 第10講
18歳になったら、何が変わるのか
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第1期は、ここから始まりました。

連載 第1回
その"無料"、誰が払っているか考えたことありますか?
記事を読む

第1期・全9回はこちら。順番は自由です。

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この回で育てる力:知性(副:関係性)

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次の期は、お金そのものの話から。お札はなぜものと交換できるのか。預けたお金は、どこにあるのか。

この連載の土台:仕組みには、作った側の目的や意図があります。作られた側からは、それが見えにくい。だから、知らなかったのは、あなたのせいじゃない。習ってないだけです。

秋元進吾でした。

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