こんにちは。秋元進吾です。
いきなりですが、質問です。あなたが今日ふれた"無料のもの"、いくつ思い浮かびますか。
無料の動画。無料のアプリ。無料の記事。無料のお試し。スーパーの試食。街で配られるポケットティッシュ。数えはじめるとキリがないくらい、世の中は無料であふれています。
無料はうれしい。僕も大好きです。そして、これだけ無料が並んでいると「何でもかんでも、ただでくれ」という気持ちになる人が出てくるのも、正直わからなくはないんです。だって、隣に無料があるのに、お金を払うほうが"損"に見えてきますから。
でも今日は、ひとつだけ立ち止まって考えてみたいことがあります。
無料のものは、"タダで生まれた"わけではない、ということです。
原価(そのものを作って届けるまでにかかった費用のこと)は、世の中のすべてのものについています。材料代、人の手間、機械代、電気代、運ぶ費用。形のないコンテンツも同じで、作る人の時間、道具代、公開しておくための場所代がかかっています。
つまり、、、あなたが何かを"無料"で受け取れたとき、その原価が消えてなくなったわけではありません。
「誰が?」
いい質問です。ここからが今日の本題です。
飛行機に乗ると、前のほうに広くてゆったりした席がありますよね。ファーストクラスやビジネスクラス。同じ飛行機で、同じ時間、同じ空を飛ぶのに、席の幅とリクライニングが違うだけで、料金は何倍にもなります。
エコノミークラスに座りながら、こう思ったことはないでしょうか。
「いいなあ。ずるいなあ」と。
でもね、ここでちょっと想像してみてほしいんです。飛行機を一回飛ばすには、機体代、燃料代、乗務員さんの人件費、空港の使用料・・・かなりの費用がかかっているはずです。その費用を、全部の席で"均等割り"にしたら、ひとりぶんはいくらになるでしょうか。
正確な数字は、航空会社の中の人にしかわかりません。ただ、同じ空を同じ時間だけ飛ぶのに料金がこれだけ違うのなら、高いほうの席が全体の売り上げを厚くしている・・・そういう見方は、してみてもいいはずです。世の中には、内部補助(もうかる部分の収入で、もうからない部分を支えるやりくりのこと)と呼ばれる考え方があります。
もしそうなら、「ずるいなあ」の相手は、「ありがとう」の相手でもあったことになります。そう考えると、機内の景色が少し違って見えてきませんか。
もうひとつ、身近な例を。テレビです。
ドラマも、バラエティも、ニュースも、民放の番組は無料で見られます。番組を一本作るには、出演者さん、スタッフさん、機材、スタジオと、たくさんの費用がかかっているのに、です。
ここで、番組の途中に流れるCMを思い出してみてください。あの枠には、お金を出している会社があります。広告主(CMを出す会社のこと)は、自社を知ってもらい、商品を買ってもらうために、あの枠を買っている。そして僕たち視聴者は、一円も払っていません。
このように、見る人ではなく、広告を出す側が費用を負担するやり方を広告モデルと呼びます。テレビ番組を無料で見られる配信サービスでも、途中でCMが流れることがありますよね。あれも、同じ形です。
逆に、CMのない有料チャンネルは、見る人が月額料金を払っています。払う人が入れ替わっているだけで、費用そのものは消えていません。
飛行機とテレビ。分野はぜんぜん違うのに、裏側の仕組みは同じです。
ここまでは他人事の例でしたが、実は僕自身も、この仕組みの"払う側"に立っています。
僕は独自ドメイン(自分専用のインターネット上の住所のこと)でポートフォリオサイトを運営していて、記事や配布物など、たくさんのコンテンツを無料で公開しています。でも、すべてを無料にすることはできません。なかには、公開しておくだけで原価がかかり続けるコンテンツがあるからです。
たとえば、独自ドメインの毎年の更新料。独自ドメインのメールを使うためのサービス利用料。そして、記事や配布物、アプリを作って動かすためのAIツールや外部サービスの利用料。あなたがこのページを無料で読めているあいだも、こうした費用は毎月・毎年、静かに発生し続けています。
いまは、その原価を僕が肩代わりすることで、無料で提供できています。ただ、正直に言うと、この先もずっと同じようにできる保証はありません。無料は、続けるための体力があってはじめて成り立つものだからです。
じゃあ、僕は損をしているだけなのか。実は、そうとも言い切れないんです。
無料で価値のあるものを出し続けることは、僕にとっての"広告"でもあります。テレビの広告主がCMにお金を払うように、僕は無料コンテンツに原価と時間を払っている。それを読んだ誰かが「この人の仕事、信頼できそうだな」と思ってくれたら、いつか有料の仕事につながるかもしれない。つまり無料は、ただの持ち出しではなく、未来への投資でもあるわけです。
ここまで読んでくださったあなたに、ひとつだけ提案があります。
無料のものに出会ったとき、「ラッキー、タダだ」で終わらせずに、ほんの一瞬だけ「これ、誰が払ってるんだろう?」と想像してみませんか。
広告主かもしれない。上位プランのお客さんかもしれない。作った本人の持ち出しかもしれない。答えがわからなくてもいいんです。"誰かが先に払っている"という事実に気づけるだけで、無料への向き合い方が変わります。
そして、払える人がちゃんと払うから、無料は無料のままでいられる。誰も払わなくなったら、無料は消えるか、有料に変わるか、そのどちらかです。世の中の現実として、払いたくても払えない状況の人もいます。だからこそ、いま払える立場にいる人の支払いが、めぐりめぐって誰かの"無料"を支えている。僕はそう考えています。
最後に、僕自身の宣言も書いておきます。
僕のサイトには、これからも無料のコンテンツと有料のコンテンツが両方並びます。有料のものには、原価と手間に見合った値段を、堂々とつけます。
それはケチだからでも、意地悪だからでもありません。有料でちゃんと受け取るものがあるから、無料を無料のまま続けられる。飛行機の前の席が後ろの席を支えているのと、同じ仕組みを自分のサイトの中に作っておく・・・そういう話なんです。
このめがねをかけて世の中を見ると、いろんな"値段"の風景が、ちょっとやさしく見えてくると思います。
よかったら、その答えを僕にも教えてくださいね。
それでは、また。
この連載は、世の中の仕組みを、ひとつずつ拡大していきます。今日は「無料のからくり」でした。
次回は、給料明細の話です。書いてある金額と、振り込まれる金額が違う。あの差し引かれているものの正体を、1枚ずつめくっていきます。
秋元進吾でした。