公開日: 2026-08-10
更新しました(2026年9月26日) 挿絵を入れました
コンビニで、おにぎりを1個買います。鮭でも、ツナマヨでも、なんでもいいです。
レジで130円くらい払って、袋に入れてもらって、外に出る。ここまで、たぶん1分もかかっていません。
その1分の裏に、何人の仕事が入っていると思いますか。
おにぎりを手に持ったまま、時間を巻き戻してみます。
その前の1分。店員さんがレジを打ちました。バーコードが読まれて、値段が出て、在庫が1個減りました。
その前の朝。だれかがトラックで運んできて、店員さんが棚に並べました。棚の位置は、たぶん決まっています。どの商品をどこに置くかを考えている人が、どこかにいます。
その前の夜。工場で、おにぎりがつくられました。にぎるのは機械かもしれません。でも、その機械を設計した人がいて、動かす人がいて、直す人がいます。ごはんの水加減を決めた人がいます。具の量を決めた人がいます。
その前。お米が届きました。海苔が届きました。鮭が届きました。フィルムが届きました。ラベルのシールが届きました。ぜんぶ、別の場所から、別のトラックで。
その前。田んぼでお米ができました。田植えをして、水を管理して、稲刈りをして、乾かして、精米しました。海では海苔を育てて、干して、焼きました。鮭をとって、さばいて、味をつけて、冷凍しました。
その前。田んぼに使う肥料をつくった人がいます。トラクターをつくった人がいます。トラクターを直す人がいます。海苔の網をつくった人がいます。漁船のエンジンをつくった人がいます。
その前。トラックが走る道路をつくった人がいます。工場の電気をつくった人がいます。
まだ終わりません。

ここまでは「モノにさわる仕事」の話でした。でも、おにぎり1個の裏には、モノにさわらない仕事もたくさん入っています。
新商品を考えた人がいます。「今年の夏は、ちょっと酸味を強くしよう」と決めた人がいます。
パッケージをデザインした人がいます。フィルムのどこを引っぱれば海苔がパリパリのまま出てくるか、あの仕組みを考えた人がいます(あれ、けっこうな発明だと思いませんか)。
売れ行きを数えて、次に何個つくるかを決めた人がいます。多すぎれば捨てることになるし、少なすぎれば売り切れる。毎日、その線を引いている人がいます。
工場で働く人を採用した人がいます。給料を計算した人がいます。取引先にお金を払った人がいます。食品の安全を検査した人がいます。表示のルールを守っているか確かめた人がいます。
ざっと数えて、数十種類。もっと細かく見れば、100を超えます。
130円のおにぎり1個です。

同じことを、他のものでもやってみてください。
朝に着た服。スマホ。歯ブラシ。自転車。教科書。電車。学校の建物。今日の給食。
ぜんぶ、だれかの仕事でできています。例外がありません。
さらに言うと、モノだけではありません。学校で授業を受けられるのも、道を安心して歩けるのも、ケガをしたら病院に行けるのも、だれかの仕事です。
これが、世の中のいちばん基本のルールです。
世の中は、分業でできている。
分業(ぶんぎょう)というのは、みんなで手分けをすること。ひとりでぜんぶやらずに、それぞれが得意なところを受け持つ。そうすると、ひとりでは絶対につくれないものが、つくれるようになります。
おにぎり1個を、ぜんぶ自分でつくることを想像してみてください。田んぼを耕して、海苔を養殖して、鮭をとって、フィルムをつくって・・・。一生かかっても、たぶん1個はできません。
でも、みんなで手分けをすると、130円で1分です。
働いている人が、どのあたりにいるかを見てみます。
国は、産業を大きく3つに分けています。第1次産業(農業・林業・漁業)、第2次産業(製造業・建設業など)、第3次産業(サービス・販売・運輸など)。
働く人の割合は、こうです。

10年前(平成22年)は、第1次が4.2%、第2次が25.2%でした。人はゆっくり、モノをつくる側から、サービスの側へ移り続けています。
(総務省「令和2年国勢調査」)
おにぎりの旅でいうと、田んぼや工場の人は思ったより少なくて、運ぶ人・売る人・考える人・支える人のほうが、ずっと多いということです。
今日、あなたが買ったもの、もらったもの、使ったものを、ひとつ選んでください。なんでもいいです。
そして、5つだけ、さかのぼってみてください。
「これを売ったのはだれ?」
「その前に、運んだのはだれ?」
「その前に、つくったのはだれ?」
「その前に、材料をとったのはだれ?」
「その材料をとる道具は、だれがつくった?」
5つさかのぼると、たいてい、自分がまったく知らなかった仕事にぶつかります。その"知らなかった仕事"が、あなたの地図にまだ描かれていない場所です。
おにぎりの旅で、仕事がつながっていることはわかりました。
でも、つながっているだけでは、地図になりません。地図には目盛りが必要です。
次回は、世の中のどんな仕事でも説明できてしまう、たった1つの文を紹介します。この文の穴埋めができるようになると、はじめて聞いた仕事でも、だいたいの正体がつかめるようになります。
2026年9月27日 ファクトチェックを行い、数字の窓の令和2年の割合を、第2次産業「23.1%」から「23.4%」に、第3次産業「71.9%」から「73.4%」に直しました。総務省「令和2年国勢調査 就業状態等基本集計」の結果の概要の値です。第1次産業の3.2%と、10年前(平成22年)の4.2%・25.2%は、確認したうえでそのままにしています。