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7つのそだてる力 知性の枝

「うまく説明できない」は、
才能じゃなくて手順

言語化は3段階でできている・・・気づく、名前をつける、形にする

会議で意見を求められて、「えっと、つまり・・・」のまま順番が過ぎていく。

映画の感想を聞かれて、「やばかった」しか出てこない。頭の中には確かに何かあるのに、外に出すと三割くらいに薄まってしまう。LINEの文面を、10分かけて書いては消している。

そういう経験が重なると、人はこう結論します。「自分は、言語化が苦手なんだ」と。

でも、先に言い切っておきます。

言語化は、才能ではありません。手順です。

そして手順である以上、どの工程で詰まっているかを見つければ、そこだけ直せます。「言語化が苦手」というのは診断として大ざっぱすぎるのです。エンジンが悪いのか、タイヤなのか、ガソリンが入っていないのか・・・車の不調をぜんぶ「走るのが苦手な車」と呼ばないのと同じです。

言語化は、3段階でできている

頭の中のものが言葉になって外に出るまでには、3つの段階があります。

  1. 気づく・・・心や頭の中に「何かある」という信号をキャッチする
  2. 名前をつける・・・その何かに、いちばん近い言葉を当てる
  3. 形にする・・・当てた言葉を、順番と大きさをととのえて、相手に届く形で出す

大事なのはここからです。詰まる場所は、人によって違います。

この記事の主戦場は、③です。①と②の道具はもうサイトにあるので、最後の工程「形にする」の技術を5つ置いていきます。

形にする技術1・・・主語を、自分に戻す

散らかる話には、共通点があります。主語が「世間」になっていることです。

「普通はこうですよね」「みんなそう思うはずで」・・・主語が大きいと、話は証明になってしまい、証明は難しいので長くなります。

「わたしは、こう感じた」から始めてください。 自分の感じたことなら、世界でいちばん詳しいのは自分です。証明が要らないから、短くなります。

形にする技術2・・・事実と、解釈を分ける

次に、文を2つに割ります。起きたこと(事実)と、自分がどう受け取ったか(解釈)です。

分けると、相手は事実の確認から入れます。混ぜると、相手は反論から入ります。伝わり方がまるで変わるのです。

形にする技術3・・・粒度を、1段おろす

「ちゃんとしたい」「いい感じにして」「もっと本気で」・・・大きい言葉は、便利ですが届きません。

大きい言葉が出たら、「具体的には?」を自分に1回だけ問いて、1段だけおろします。

全部を細かくする必要はありません。1段おろすだけで、言葉は急に手ざわりを持ちます。

形にする技術4・・・たとえを、1つ持つ

説明のうまい人は、その場でたとえを発明しているのではありません。自分の定番のたとえを、少数だけ持って使い回しています。

わたしの場合は「家(土台と柱)」「川(流れと合流)」「道具箱」の3つです。新しい概念に出会ったら、まずこの3つのどれかに当てはめてみる。当てはまれば説明はもう半分できています。

あなたの定番は、野球でも、料理でも、ゲームでもかまいません。自分がいちばん細部まで知っている世界を1つ、たとえの母艦にしてください。

形にする技術5・・・相手を、1人に決める

最後の技術です。書く前、話す前に、届けたい相手を1人だけ思い浮かべます。

誰にでも届く言葉を目指すと、言葉はどんどん抽象的になって、結局誰にも刺さりません。誰にでも届く文章は、誰にも届かないのです。

「みんなに分かるように」ではなく「あの人に分かるように」。1人に向けて研いだ言葉は、不思議と他の人にも届きます。

練習は、1日3行でいい

技術を5つ並べましたが、覚えるより、小さく回すほうが早く身につきます。

おすすめは、寝る前の3行アウトプットです。

  1. 印象・・・今日いちばん心が動いたことを1行(技術1=主語は自分)
  2. 理由・・・なぜ動いたのかを1行(技術2=事実と解釈)
  3. 接続・・・それが自分の生活とどうつながるかを1行(技術3=1段おろす)

ノートでもスマホでも3分で終わります。続けるうちに、話す前に頭の中で3行が組み上がる感覚が出てきます。言語化の練習は、話す練習ではなく、この小さな組み立ての反復なのです。

AIは、代筆者ではなく壁打ち相手

最後に、いまの時代ならではの道具の話をひとつ。

言葉に詰まったとき、AIに「この気持ちの言い換えを5案ください」と頼むのは、とてもいい使い方です。ただし、条件が1つあります。

選ぶのは、自分。

5案を眺めて、「これは違う」「これが近い」「この2つを混ぜたい」と選り分ける瞬間に、実は言語化の筋力が使われています。逆に、出てきた文章をそのままコピーして使い続けると、その筋力は育ちません。

AIに書かせるのではなく、AIに出させて、自分が決める。壁打ち相手としてのAIは、言語化の練習台として最高の道具です。

おわりに・・・「苦手」は、才能の名前ではない

「言語化が苦手」は、性格でも頭の良し悪しでもなく、3段階のどこかで詰まっているという状態の名前です。

状態なら、変えられます。気づく練習、名前をつける道具、形にする技術。どれも今日から使えるものばかりです。

人生は、たとえ遠回りしても、いつでも今からリニューアルできます。頭の中のものを外に出す力も、同じです。

(秋元進吾)


今日、ひとつだけ

今夜、寝る前に3行アウトプットを1回だけやってみてください。①今日いちばん心が動いたこと ②その理由 ③自分の生活とのつながり。うまく書けなくて大丈夫です。3行書けたら、今日は合格です。



段階①「気づく」の練習は、この講に書きました。

30年飛び級講習 第8講
うまく言えないのは、
語彙が足りないからじゃない
第8講を読む

段階②「名前をつける」の道具は、こちらです。

保存版・意味と使いどころつき
感情辞典
気持ちに名前をつける180語
辞典を開く

言葉を受け取る側の頭の中を想像する話は、こちらです。

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