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30年飛び級講習 第4講

「将来、何になりたいの?」は、かなり無茶な質問です

こんにちは。秋元進吾です。

第4講は、進路の話をします。

はじめに、大人を代表して謝っておきます。

「将来、何になりたいの?」

あの質問、答えられなくて当たり前です。無茶な質問なんです。

「好きなことが見つからない」
「やりたいことがないまま、時間だけが過ぎていく」

そう思っている人にこそ、読んでほしい回です。今日は、あの質問が無茶な理由と、代わりに何を考えればいいかの話をします。


その質問、答えられなくて当たり前です

大人はよく聞きますよね。

「将来、何になりたいの?」

答えられないと、なんとなく気まずい空気が流れる。「まだ決まってなくて・・・」と言うと、心配そうな顔をされる。

でも、ちょっと考えてみてください。

この質問、「職業の名前で答えろ」と言っているんです。

じゃあ、あなたは職業の名前をいくつ言えますか。

先生。医者。看護師。警察官。美容師。パティシエ。プログラマー。ユーチューバー。保育士。公務員。・・・数えてみると、だいたい20か30くらいで止まりませんか。

🤔 ここで、クイズです

世の中には、仕事が何種類あると思いますか?

  1. 約100種類
  2. 約1,000種類
  3. 約10,000種類

・・・どれだと思いますか。ちょっと考えてみてください。

正解は、3番です。

でも実は、3番でもまだ足りません。

厚生労働省が作っている職業分類の索引には、18,725件の職業名が載っています。1万どころか、その倍近くあるんです。

20個 対 18,725件。

あなたが名前を知らない仕事のほうが、圧倒的に多い。

つまり「将来、何になりたいの?」という質問は、こう言っているのと同じです。

「見たことのないメニュー表から、今すぐ1つ選べ」

無茶ですよね。

答えられないのは、あなたの意欲や能力の問題じゃありません。質問のほうが、ちょっと無茶なんです。

だから今日は、質問を変えます。

「何になりたい?」ではなく、
「自分は、何に反応する人間なのか?」

こっちなら、答えの材料が自分の中にあります。


進路は「3つの円」で考える

紙に、丸を3つ描いてみてください。少しずつ重なるように。

興味自然に気持ちが向いてしまうもの
適性自分にとって、やりやすいこと
需要人や社会から求められること

この3つが重なるところが、あなたのスタート地点になります。

先に大事なことを言っておきますね。

重なった場所は「絶対の正解」ではありません。 納得して一歩踏み出せる場所、というだけです。

進路は、正解を当てるクイズじゃなくて、自分の地図を作っていく作業です。だから、それで十分なんです。

では、1つずつ見ていきます。


1つ目の円:興味「つい反応してしまうもの」

興味とは、自然に気持ちが向いてしまうものです。

誰にも言われてないのに気になる。つい見てしまう。またやりたくなる。その話題になると、ちょっと前のめりになる。

ここ、大事なところなんですが。

興味は、立派な夢の形で出てくるとは限りません。

「医師になりたい」「デザイナーになりたい」と言える人もいます。でも、そうじゃない人のほうが多いです。

最初は、もっと小さくていい。

「なんか気になる」
「これなら見ていられる」
「これをしてると時間を忘れる」

その小さな反応が、材料になります。


2つ目の円:適性「自分では気づいていないことが多い」

適性とは、自分にとって比較的やりやすいことです。

ここで多いのが、「才能がないから、適性なんてない」という勘違い。

適性は、最初から上手にできる特別な才能のことじゃありません。こういう形をしています。

友達に勉強を説明するのが苦じゃない。細かい作業をしても、そんなに疲れない。人の話を聞くのが自然にできる。整理や分類が好き。攻略法を考えるのが苦にならない。

これ、全部ヒントです。

そして適性には、やっかいな性質があります。

自分にとっては普通すぎて、本人が気づいていない。

苦労せずにできることって、「みんなできるでしょ」と思ってしまうんですよね。だから自分では数えない。

だから、こうしてみてください。

人から「それ助かる」「よくできるね」と言われたことを、メモしておく。

自分に見えない適性を、他人が先に見つけていることがあります。褒め言葉は、お世辞じゃなくてデータです。


3つ目の円:需要「好きな世界の、周りを見る」

需要とは、人や社会から求められることです。

どれだけ好きで、どれだけ向いていても、社会とつながる形にならないと、仕事にはなりにくい。だから、ここも見ておきます。

ただし、これは「お金になりそうな道を選べ」という話ではありません。

自分の興味や適性が、社会の中でどう活かせるかを見る。 そういう意味です。

好きなものを、そのまま仕事の名前にする必要はありません。

好きな世界の周りには、いろいろな関わり方があります。

これが、次の話につながります。


料理で考えると、3つの円が腑に落ちる

いったん、料理に置きかえてみますね。

自分は餃子が好き。でも、包む作業がまだ難しい。

逆に、味噌汁なら作れる。でも、そこまでワクワクしない。

さらに、凝った料理を作りたいけど、家族はすぐ食べられる夕食を求めている。

このとき、「好きだからこれ」「作れるからこれ」「喜ばれるからこれ」と、どれか1つだけで決めると、たいてい無理が出ます。

自分も作ってみたい。今の自分でも挑戦できそう。食べる人にも喜ばれそう。

この3つが重なると、納得のいく一品になる。

進路も、まったく同じです。


白状します。私はここで失敗しました

偉そうに書いてきましたが、私自身がここで失敗しています。

中学・高校のころ、私は数字が大の得意でした。公文で特訓もして、計算はかなり速かった。だから、自然にこう考えたんです。

「数字に関わる仕事につこう」

そこで目標にしたのが、税理士や公認会計士でした。大学も商業系の学部を選びました。筋は通っていますよね。数字が得意だから、数字の仕事へ。

ところが、入って愕然としました。

数字は、電卓が計算してくれるんです。

そして実際に学ぶ中身は、難しくてややこしい法律用語ばかりでした。私が得意だった「速く正確に計算する力」は、ほとんど出番がなかった。

思っていたのと、違った。

いま振り返ると、自分が何をしくじったのか、はっきり分かります。「数字が得意」を、そのまま職業名に直結させてしまった。その仕事が毎日どんな作業をしているのかを、一度も分解して見ていませんでした。税理士の仕事の中身は「計算」ではなく「法律を読むこと」だった。それを知らずに、看板の名前だけで選んでいたんです。

だから、次の話をします。この記事でいちばん伝えたいことです。


この記事でいちばん伝えたいこと:「好き」には種類がある

進路の話になると、よくこう言われます。

「好きなことを仕事にすればいい」

でも、この言葉でかえって苦しくなる人がいます。

「絵は好きだけど、描くのは下手だし・・・」
「音楽好きって言っても、楽器できないし・・・」

そうやって、好きなものを進路の候補から外してしまう。

ちょっと待ってください。

好きには、種類があります。

これ、「本当は好きじゃない」という意味じゃありません。

その世界への、関わり方が違うだけです。

ここを分けて考えると、道が一気に広がります。

好きの種類具体例進路のヒント
見るのが好き絵を見る、動画を見る、試合を見る鑑賞、紹介、編集、分析、販売
やるのが好き描く、演奏する、競技する実技、制作、表現、技術職
作るのが好き動画編集、料理、工作、文章を書く企画、制作、デザイン、開発
調べるのが好き推し情報、攻略、ニュース情報収集、分析、研究、編集
教えるのが好き友達に説明する、後輩に教える教育、研修、接客、サポート
支えるのが好き裏方、準備、相談役事務、福祉、運営、マネジメント
広めるのが好きSNS投稿、紹介、レビュー広報、マーケティング、発信
応援するのが好き推し活、チーム応援コミュニティ運営、企画、販売

絵を描くのが苦手でも、絵を見るのが好きなら。展示の企画、広報、編集、販売、SNS運用、アートの紹介。

演奏したくなくても、音楽が好きなら。イベント運営、音響、配信、レビュー、マネジメント。

全部、その世界の中にある仕事です。

つまり、こういうことです。

好きな世界に、プレイヤーとして入らなくてもいい。

見る人。支える人。広める人。整える人。届ける人。分析する人。

コンサートは、演奏する人だけでは成立しません。会場を用意する人、音を調整する人、チケットを売る人、宣伝する人、記録する人がいて、はじめて成り立ちます。

いや、コンサートに限りません。あなたの身のまわり、ぜんぶそうです。

コンビニのおにぎり
米を育てる人。具を考える人。工場の機械を整える人。あの「パリッと開く包装」を設計した人。夜中に運ぶ人。棚に並べる人。

今日の給食
調理する人。献立を考える栄養士さん。食材を仕入れる人。アレルギーを管理する人。あの大きな釜を洗う人。

文化祭のステージ
出る人。照明。音響。看板を描く人。タイムキーパー。受付。写真を撮る人。そして、片づける人。

好きなアニメの1話
声優さんと絵を描く人だけじゃない。音楽を作る人。効果音を入れる人。色を決める人。宣伝する人。グッズを企画する人。配信を動かす人。

サッカーの試合
選手。監督。トレーナー。審判。芝を育てる人。実況する人。カメラマン。チケットを売る人。

今、手に持っているスマホ
設計する人。部品を作る人。アプリを作る人。電波を届ける人。お店で売る人。壊れたときに直す人。

YouTubeの動画1本
出演する人だけじゃない。撮る人。編集する人。サムネイルを作る人。企画を考える人。再生数を分析する人。

毎日乗る電車
運転士さん。車両を整備する人。ダイヤを組む人。夜中に線路を点検する人。駅でアナウンスする人。

病院
お医者さん。看護師さん。受付の人。検査する人。薬を出す人。掃除する人。書類を処理する人。

好きなお菓子
味を決める人。パッケージをデザインする人。CMを作る人。工場の機械を直す人。お店に届ける人。

・・・どうでしょうか。

表に出るのは、たいてい1人か2人。 でも、その世界を成り立たせているのは、何十人、何百人です。

そして、その全員が「その世界に関わっている人」です。

あなたの「好き」も、たぶん同じです。


言葉にするのが苦手なら、選ぶだけでいい

「好きなことは何?」と聞かれて、すぐ答えられない人。

普通です。

そういうときは、白紙から絞り出すより、選択肢を見ながら選ぶほうがずっと楽です。

自由研究のテーマ決めと同じですね。「何を研究したい?」と言われると困るけど、候補が並んでいれば選べる。

実は私、この「候補を並べる」を、自由研究そのものでやってみました。人気のテーマを100個集めて、実験・観察・工作・調べ学習・料理の5つに分け、難易度と必要な日数まで付けた一覧です。

🌻 いっしょに公開しました
夏休み自由研究コンシェルジュ

100のテーマから、あなたに合う1つを。
カテゴリ・難易度・残り日数でも絞り込めます。

テーマを探しに行く
まとめ方の型つき。登録不要で使えます

眺めてみてください。たぶん、いくつか「お、これは」と反応するものがあるはずです。

興味は、頭から絞り出すものだけじゃなく、選択肢に触れたときの反応として見つかるものでもあります。

学校のパンフレット、職業一覧、大学の学部名。ぱらぱら眺めて、「お、これは?」と反応したものに印をつける。

冒頭で言った「見たことのないメニュー表」問題、これで解決します。選べないなら、まずメニューを見にいけばいい。


ひとりになる時間を、少しだけ取る

進路を考えるには情報も要ります。でも、情報だけでは決まりません。

家では家族の声がある。学校では友達や先生の目がある。スマホを開けば情報が流れ続ける。

そういう場所だと、自分の本音って見えにくいんですよね。

だから、少しでいいので、ひとりになれる時間を作ってみてください。

自分の部屋。図書館。公園のベンチ。放課後の教室。通学途中の静かな道。散歩しながらでもいいです。

そこで、こんな質問を自分にしてみる。

進路は、外から来る情報だけで決めるものじゃありません。自分の内側の声も、大事な材料です。


ケースで考えてみる

ケース1:ゲームが好きな中学生

ゲームが好き。でも、それだけだと進路につながりにくい。

そこで、もう一段下ります。この子は、ゲームの何が好きなのか。

この違いで、方向が変わります。

攻略を考えるのが好きなら、分析や戦略。仲間との協力が好きなら、チーム活動や支援。世界観が好きなら、物語・デザイン・企画。配信が好きなら、動画編集・発信・広報。

「ゲームが好き」で止めない。ゲームの中の、何に反応しているのか。 ここまで下りると、進路の材料になります。

ケース2:「好きなことがない」と思っている高3生

「自分には好きなことがない」

そう感じる人もいます。時間もない、余裕もない。焦りますよね。

その場合、無理に興味から探さなくて大丈夫です。 別の入口から入ればいい。

たとえば、人と話すのは苦じゃない。細かい作業は嫌いじゃない。調べものならできる。体を動かすほうが楽。

これも全部、進路の材料です。

とくに「避けたいこと」は強い材料になります。何が好きか分からなくても、これなら分かる、という人は多いんです。

しかもこれ、ただの愚痴じゃありません。ちゃんと選択肢につながります。

満員電車がいや、通うのがしんどい。ここまで分かっているなら、在宅でできる仕事や、通勤時間の短い地元の職場を先に調べればいい。今は家で働ける仕事も、通信で学べる学校も、昔よりずっと増えています。

嫌なことを消していくだけでも、選択肢は絞れます。

情熱が見つかっていなくても、進路は考えられます。今ある材料で、一歩を選べばいいんです。


よくある落とし穴

進路選びで危ないのは、どれか1つだけで決めてしまうことです。

好きだけで決める・・・好きは大事。でも仕事の中身や環境との相性を見ないと、入ってから苦しくなることがあります。

向いているだけで決める・・・周りに「向いてる」と言われても、自分の気持ちがないと続きにくい。

将来性だけで決める・・・需要は大事。でも自分との相性を無視すると、毎日がつらくなります。

偏差値や学校名だけで決める・・・学校名も大事ですが、そこで何を学べるか、自分が育ちやすい環境かも見てください。

親や先生の期待だけで決める・・・周りの意見は大切です。でも自分の納得がゼロのままだと、後でしんどくなります。

情報を集めるだけで、試さない・・・調べるだけでは分からないことがあります。見に行く、聞く、作る、体験する。小さく試して初めて見えるものがあります。


今日の「1つだけ」

この講習では毎回、最後に「1つだけ」お願いをします。全部やらなくていいです。1つだけ。

今日の1つは、これです。

🧭 今日の1つだけ
ノートかスマホのメモを開いて、「つい反応してしまうもの」を1つだけ書いてみませんか?

たった1つでいいです。

余力があれば、こんなリストにしていくと、3つの円の材料が揃っていきます。

  1. つい反応するものを5個
  2. 苦じゃないことを5個
  3. 人に頼まれること・褒められたことを5個
  4. 絶対に避けたいことを3個
  5. 気になる進路・学びを3つ

完璧に埋まらなくて大丈夫。空欄があっても大丈夫です。

大事なのは、頭の中だけで悩み続けないこと

頭の中にあるうちは、同じ悩みがぐるぐる回るだけなんですよね。紙に出した瞬間に、それは「考えられる材料」に変わります。


まとめ:進路は正解当てじゃなく、自分の取扱説明書づくり

進路選びは、未来を一発で完璧に決める作業ではありません。

自分の反応を拾う。気になることを書き出す。苦じゃないことを見つける。人に頼まれることを思い出す。社会で求められることを調べる。小さく試す。そして、また見直す。

その繰り返しで、進みたい方向が少しずつ見えてきます。

興味は、変わってもいい。
適性は、経験の中で見えてくる。
需要は、調べながら更新すればいい。

だから、今すぐ完璧な答えを出さなくて大丈夫です。

ただ、何もしないまま時間だけが過ぎるのは、もったいない。

今日できる小さな一歩を、ひとつだけ選んでみてください。

気になることを1つメモする。苦じゃないことを1つ書く。興味のある学校を1つ調べる。先輩に話を聞く。本を1冊手に取る。自分の反応を1日だけ記録する。

その小さな一歩が、あなたの地図に、最初の印をつけます。

進路選びは、才能の証明ではありません。自分の取扱説明書を作る作業です。

焦らなくていい。でも、止まらなくていい。

まずは、自分の中の小さな反応をひとつ拾うところから、始めてみてください。


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次回の第5講は、同じ「3つの円」を、親御さん・先生の側から見た話をします。子どもに渡せるものと、渡せないもの。関わり方の話です。

もし今の話が少しでも「参考になった」と思ってもらえたなら・・・この講習は、あなたにとって価値があった証拠です。この時間は、無駄ではありません。

もしよく分からなかったとか、つまらなかったとしても大丈夫です。今日学んだことを、しっかり覚えておいてください。いつか学んだことの意味を、肌で感じるときが来ることでしょう。あせらなくて大丈夫です。

秋元進吾でした。

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※職業名の件数は「職業名索引(第5回改定 厚生労働省編職業分類)」に収録された18,725件によります。