第4講「「将来、何になりたいの?」は、かなり無茶な質問です」(別タブで開く)の続きにあたる回です。
こんにちは。秋元進吾でっす。
残暑がまだしぶといですね。水分だけは、忘れずに。
今日は少しだけ、真面目な話をさせてください。
テーマは「目的」と「目標」。
ちゃんと考えないうちに大人になっちゃった人が多いと思いますが、この二つの語の意味の違いを理解しておくことはとっても大切なんです。
高校に合格した日のこと、覚えていますか?
もしこれを見てくれてるのがまだ中学生なら、自分が高校に合格したときのことを想像してみてください。
その人が、入学式のあとに何をしていると思いますか?
それまでずっと机に向かって勉強の日々だったかもしれない。
あせりと不安と緊張で、夜も眠れなかったかもしれない。
でもやっと試験が終わり、無事に合格した。
その時あなたは、どんな気持ちだったと思いますか?
きっと、うれしくて・・・うれしくて・・・しょうがなかったことでしょう。
もう勉強の毎日は終わりだと、解放感に満たされたかもしれません。
明日から何しよう、遊びに行きたい、好きな漫画や映画を見まくりたい、
などと思いをはせていたかもしれません。
緊張の糸が一回ほどけると、しばらくは元には戻らないかもしれません。
そうしているうちにあっという間に春休みが終わり、入学式も終わり、学校生活が始まります。
でも気持ちは、まだ夢見ている状態かもしれません。
エンジンがなかなかかからないうちに、1学期が終わり、2学期が終わり、あっという間に2年生になります。
なぜそうなってしまったのでしょうか?
中学生のとき、受験勉強を始めたころに巻き戻ってみましょう。
そのときのあなたは、きっと志望校に受かるために「偏差値はいくつ」「内申点はいくつ」と目標を立てて、それに合わせて勉強を開始したことでしょう。
行きたい学校に受かりたいという気持ちが、原動力となっていたでしょう。
合格することが目標、つまり山頂だと思って登っていたのではないでしょうか?
本当は・・・
受験に合格することは、人生の山登りという観点では一合目(ごうめ→頂上までの道のりを10に分けた区切り)だったのに、もうすぐ山頂に着くという気持ちで登っていたのです。
だから合格した時点で、登り続ける理由がなくなってしまった。
それが現実であり、空白の期間を作ってしまった原因です。
その合格発表の一瞬のために、その後を無駄にしてしまうとしたら・・・
もったいないですよね!
ここで、あなたのモヤモヤを代弁させてください。
「なんで勉強しなきゃいけないの?」
聞いたこと、ありますよね。
で、返ってきた答えは、たぶんこんな感じ。
「将来のためだよ」
「いい大学に行くためだよ」
「いい会社に入るためだよ」
「安定した生活のためだよ」
「老後のためだよ」
「日本のためだよ」
「地球のためだよ」
・・・最後のほう、誰も言ってないですね。すみません。
でも、言われた側の気持ちは、たぶんこう。
「いや、それ全部"あとで"の話じゃん」
そうなんです。
大人が渡してくれるのは、テスト・偏差値・志望校・成績表。
ぜんぶ「目標」です。
でも「なぜそれを目指すのか」という「目的」のほうは、渡されない。
つまり、あなたは地図の「五合目」「八合目」だけ渡されて、
どの山に登るのかを教えてもらえていない状態。
つまり・・・やる気が出ないのは、怠けているからじゃない。
登る理由のわからない山を登れと言われたら、足が止まるのは自然な反応です。
ここから本題です。
目的(もくてき)=なぜ、それをやるのか。山頂。
目標(もくひょう)=目的に向かう途中の通過点。
一合目、五合目、八合目。
似た言葉なのに、役割がぜんぜん違います。
そしていちばん大事なのは「順番」。
山頂が決まって、はじめて五合目に意味が出る。
逆に、五合目があるから山頂まで歩き続けられる。
どちらか片方だけでは、成り立たない関係です。
目標は、何十個も立てて、次々と達成していくもの。
目的は、たぶん一生で数個。簡単には変わらないもの。
数のスケールが、ぜんぜん違うんですね。
じゃあ、自分の目標が目的とつながっているか、どう確かめるか。
方法は、一問だけです。
たとえば「次のテストで80点」。
これを達成すると、何に近づく?
「・・・いい高校?」
いい高校に入ると、何に近づく?
「・・・いい大学?」
いい大学に入ると、何に近づく?
「・・・わかんない」
はい、ここ。
この「わかんない」が出たら、正解です。
目標が悪いんじゃなくて、山頂がまだ決まっていないだけ。
それが分かっただけで、一歩目としては十分すぎます。
逆に「好きなことを仕事にしたいから、そのための知識がいる」みたいに、
スッと答えが出るなら、その目標は本物。安心して登ってください。
ここで、たぶん出てくる不安。
「でも、山頂なんて15歳で決められないよ」
「決めたあとで、違う山だったらどうするの」
大丈夫です。目的は、その都度、見直していくものです。
隣の山の本当の姿は、地上からは見えません。
この山を五合目まで登ったから、はじめて見える。
だから「あっちの山に登るべきだった」と気づいたとき、それは失敗ではなく「更新」です。
登った分は、ちゃんと次の山で効いています。
それに、登ってみて「簡単すぎた」「物足りない」と感じたなら、
それは本当の目的(たとえば「挑戦し続けたい」)が、まだ満たされていないサイン。
つまり目的は死んでいなくて、次の山を選ぶ羅針盤(方角を教えてくれるコンパス)として、ちゃんと働いている。
ここからは、少しだけ未来の話。
「大人になれば分かる」と言われがちですが、
実は大人も、あなたとまったく同じところでつまずいています。
気づきましたか。
「合格した春に無気力」と「貯金達成で燃え尽き」は、同じ形。
「いいねの数で疲れる」と「フォロワー1万人で売上ゼロ」も、同じ形。
「みんなが行くから進路を決める」と「他人が用意した山を登る」も、同じ形です。
大人になっても、問題は消えません。
ただ、大人はもっと大きな数字で、もっと長い時間をかけて、同じ穴に落ちる。
だから今、この構造を知っておくのは、かなり有利なんです。
大人との違いを、ひとつだけ。
大人は「目標を追ううちに目的を見失う」。
あなたは「目的を渡されないまま目標だけ渡される」。
だから大人は"思い出せば"いいけど、あなたは"見つけて言葉にする"ところから。
ここがいちばん難しくて、いちばんわくわくするところです。
小学生時代、算数が難しくて「なぜ勉強しないといけないの?」と思った人は多いと思います。
僕もそうでした。
そして何人もの生徒も、そう言っていました。
こういう勉強を通して、考える習慣や、分析する力や好奇心を育てたりして、大人になる準備をしてるんだと言い聞かせました。
自分は何が好きで、得意で、何が嫌いで、苦手かを知りながら、適性を知ることができるんですね。
僕自身、正直に言うと、この順番をちゃんと意識できたのは大人になってからです。
だから「教える」というより、「もっと早く知りたかった」をあなたに渡している感覚ですね。
ここで、ひとつ、視点を変えます。
学校の時間割も、いま読んでいるこの記事も、あなた自身も、誰かが目的や意図をもって作ったものです。
ただ、作られた側からは、その目的や意図が見えにくい。見えるのは、目の前の合目だけです。
作った側と作られた側のあいだには、それだけの隔たりがあります。上と下、という話ではありません。見えているものが違う、という話です。
だから、目的を知りたければ、道は2つしかありません。作った側に聞くか、自分が作る側に回るか。
さっきの一問(これを達成すると、何に近づく?)は、作られた側にいながら、山頂を見に行くための道具です。合目の看板しか見えない場所で、山頂の方角を確かめる。それだけのことです。
最後に、ひとつだけお願いさせてください。
答えが出なくてもいいです。
「出ない」と分かるのが、あなたの山探しの一歩目だから。
もし答えが出たら、それはもう、あなたの山です。
もし出なかったら、「なぜ?」を一緒に考えてくれる人を、ひとり見つけてみてください。
先生でも、親でも、部活の先輩でも。
僕でもいいですよ。
つまんなかったら、この記事のことは忘れてくださいね。
それも大歓迎です。
秋元進吾でした。
前回。世の中の仕事の、12のかたまりの地図。
この講の土台になっている、進路の3つの円。
全体像は、入口の一枚の絵から。
つながる先:はじめに(第0講)/第4講 「将来、何になりたいの?」は、かなり無茶な質問です/第9講 続かないのは、意志が弱いからじゃない/第14講 世の中の仕事は、こう分かれている/仕事の地図(中高生向け連載)/7つのそだてる力 経験値の枝/資料室(仕組み編)
AIのサポートを受けながら、私のアイデアと考えを体系化した作品集です。