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誰も教えてくれなかった仕組み 第13回

そのパンは、何人の手を通ってきたのか

商業・流通の仕組み

家に食パンの袋があったら、裏を返してみてください。

小さい字で、製造者、と書いてあるところがあります。会社の名前と、住所。

その名前は、たぶん、買ったお店の名前とは違います。

当たり前じゃないか、と思われるかもしれません。でも、ここが今日の入口です。パンを作った人と、パンを売った人が別の人である。ということは、そのあいだに道がある、ということです。

第1回「その"無料"、誰が払っているか考えたことありますか?」(別タブで開く)で、原価は消えない、誰かが先に払っている、と書きました。第7回「その値段は、誰が決めているのか」(別タブで開く)では、値段は費用と綱引きで決まる、と書きました。

そのあいだにある道の話を、今日はします。


道は、だいたい4段

作る、運ぶ、卸す、売る。

ざっくり言うと、この4段です。

作るのは、メーカー。袋の裏に、製造者として名前が書いてある会社ですね。原料を仕入れて、工場で形にします。

運ぶのは、運送です。作った場所から、置く場所へ移します。

卸す(おろす)のは、卸売(おろしうり・作り手からまとめて買って、小売店に配る仕事)です。たくさんの作り手の商品をまとめて引き受けて、たくさんの店に配ります。一軒ずつのお店が、何十社もの作り手と直接やり取りしなくて済んでいるのは、ここが束ねているからです。

売るのが、小売(こうり)です。お店です。

そして、それぞれの段に、取り分が乗ります。


取り分は、抜いているのではない

取り分、と聞くと、中抜き、という言葉が浮かぶかもしれません。

でも、各段が乗せているものの中身を分けると、こうなります。

ひとつは、その段でかかった費用です。工場の電気代、トラックの燃料、倉庫の家賃、店の照明とレジと人。

もうひとつは、その段で働いた人の代金です。

第2回「振り込まれた金額が、求人票より少ない理由」(別タブで開く)で、給料の明細の話を書きました。あの明細は、この道のどこかの段に立っている、誰かの明細です。

だから、段が多いと値段が上がりやすいのは事実です。ただ、その分だけ誰かの手間が入っている、というのも事実なんですね。どちらか片方だけを見ると、話がずれます。


段を減らすと、別のものが乗る

作った人が、直接売る。産地直送や、ネット販売がそれです。

卸と小売の段を飛ばせるので、そのぶんの取り分は乗りません。

ただし、飛ばした段の仕事そのものが消えるわけではありません。誰かがやらないといけない。

注文を受ける仕組みを用意する。箱に詰める。宛名を書く。運送に渡す。代金を受け取る。問い合わせに答える。返品に対応する。

そして、そこには送料と、決済(けっさい・支払いを済ませて代金のやり取りを完了させること)の手数料が乗ります。ネットの店で、商品の値段のわりに送料が重いな、と感じたことがある人は多いと思います。あれは、飛ばしたはずの段の仕事が、別の名前で顔を出しているところです。


広告費は、値段のどこにいるか

第1回で、無料のサービスは広告のお金で回っていることがある、と書きました。

ものを売る側でも、同じことが起きています。チラシ、ネットの広告、店頭の飾り。あれには費用がかかります。

その費用は、どこから出ているか。売った代金の中からです。

つまり、、、値段の中には、そのものを作る費用だけでなく、そのものを知ってもらうための費用も入っています。

ここに良い悪いはありません。知られなければ売れないので、誰かが払うことになる。多くの場合は、買った人が、値段の中で少しずつ払っています。


値引き・在庫・返品

第7回で書いた綱引きが、いちばん目に見える現場が、ここです。

売れ残ると、置いておく場所の代金がかかります。食べ物なら、日付があります。だから、値引きが起きます。夕方の値引きシールは、綱引きの結果がそのまま形になったものですね。

作る側から見ると、作りすぎると余ります。少なすぎると、売る機会を逃します。この読み違いの費用も、どこかに乗ります。

返品も同じです。返ってきたものを確かめて、直して、また出す。あるいは処分する。その手間の費用も、値段のどこかに含まれています。

安いものを見たとき、誰かが手を抜いた、と考える必要はありません。段が少ないのか、たくさん作っているのか、値引きの局面なのか。理由はいくつもあります。


買う側にも、仕組みがあります

道の話をしてきましたが、買う側を守るための仕組みも、別に用意されています。

第3回「そのうまい話は、なぜあなたのところに来たのか」(別タブで開く)で、クーリングオフ(一定の期間内なら契約を取り消せる制度)に一行だけ触れました。訪問販売や電話勧誘など、決められた売り方については、あとから契約をやめられる期間が法律で定められている、と説明されています。

どの売り方が対象で、期間がどれくらいかは、ここには書きません。「特定商取引法 クーリングオフ」で調べると、国の機関の説明が出てきます。


意見が分かれるところは、ここです

流通の話をすると、その先に議論があります。

段は減らすべきなのか。大きなお店と小さなお店は、どちらがよいのか。ネットで買うのと、店で買うのと、どちらが正しいのか。

ここには、立ち入りません。特定の会社や店やサービスの名前を出して、良い悪いを言うこともしません。

仕組みを説明するところまでが、わたしの仕事です。どう考えるかは、あなたの主導権のほうにあります。


今日、ひとつだけ

いつもどおり、最後にひとつだけお願いをします。ひとつだけです。

🚚 今日の1つだけ
家にある食べ物の袋を、ひとつだけ裏返してください。そして、製造者と、売っていたお店の名前が、同じか別かを見てください。

見るだけでいいです。今日はそれで十分です。

わたしも、この記事を書きながら、台所の袋を一枚裏返しました。裏返すまでは、買った店のものでした。裏返したあとは、ここまで何人か通ってきたんだな、と、ちょっとだけ道のほうが見えてきます。


この連載について

📖 連載 第13回
誰も教えてくれなかった仕組み
知らなかったのは、あなたのせいじゃない。
習ってないだけです。

前回。借りる・増やす・備えるを1本の道に束ねました。

連載 第12回
その"増やす話"は、誰のお金を、誰に回しているのか
記事を読む

原価と広告の話の出発点は、第1回です。

連載 第1回
その"無料"、誰が払っているか考えたことありますか?
記事を読む

値段の綱引きは、ここに書いてあります。

連載 第7回
その値段は、誰が決めているのか
記事を読む

道のどこかの段に立つ人の明細は、この回で。

連載 第2回
振り込まれた金額が、求人票より少ない理由
記事を読む

クーリングオフに最初に触れたのは、この回です。

連載 第3回
そのうまい話は、なぜあなたのところに来たのか
記事を読む

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この回で育てる力:お金(副:経験値)

7つのそだてる力
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次の期は、家族・国・宗教・国と国のあいだの話です。準備ができしだい、お知らせします。

この連載の土台:仕組みには、作った側の目的や意図があります。作られた側からは、それが見えにくい。だから、知らなかったのは、あなたのせいじゃない。習ってないだけです。

秋元進吾でした。

#誰も教えてくれなかった仕組み 第13回

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