こんにちは。秋元進吾です。「工事をプロに頼む前に読む 安心ガイド」、第9回はいったん家の中を出て、庭に立ちます。テーマは、庭木の剪定(せんてい・伸びた枝を切って整えること)です。
いきなりですが、ある光景を想像してください。
伸びすぎた庭の木をなんとかしたくて、2軒の植木屋さんに見積りをお願いしたら・・・A社は2万円、B社は6万円。同じ庭、同じ木なのに、3倍。
「B社、ふっかけてきたな?」と思いますよね。でも、そうとは限らないんです。植木屋さんの世界には、料金の「数え方」が2つあって、どちらの方式かで見積りの姿はガラッと変わります。片方は木の本数で数え、もう片方は職人さんの日数で数える。数え方が違えば、同じ仕事でも数字は違って見える。ここを知らずに金額だけ比べると、安く見えたほうが実は高かった・・・なんてことも起きます。
しかも庭木は、待ってくれません。壁のヒビは1年放っておいても1年ぶんの劣化ですが、木は放っておくと、伸びます。お隣の敷地に枝がはみ出す。落ち葉が雨どいに詰まる。気づけば2階の窓より高い。「そろそろ頼まなきゃ」が、毎年やってくる工事なんですね。
このガイドは、そんなときのための「発注する側の予習ノート」です。専門家ぶるつもりはありません。僕自身、木の名前もろくに知らないまま「なんとかしてください」と言いかけた側の人間です。だからこそ、かつての自分に渡したかったメモを、そのままお裾分けします。
最初に、言葉の交通整理をさせてください。植木屋さんへの依頼は、大きく3種類に分かれます。
この記事で扱うのは、いちばん出番の多い「剪定」です。ただ、電話をかける前に「うちがしたいのはどれか」を一度考えておくと、話がとても早くなります。「小さくしたい」のか「無くしたい」のか。ここが曖昧だと、見積りも曖昧になります。
そして剪定の中にも、実は切り方の種類があります。枝を間引いて風を通す「透かし剪定」、表面を刈りそろえる「刈り込み」、思い切って大きく詰める「強剪定」・・・。名前まで覚えなくて大丈夫です。ただ、「短くして」とだけ伝えると、想像より丸坊主になって帰ってくることがあります。よくあるすれ違いです。「腰の高さまで」「窓にかからない程度に」のように、仕上がりのイメージを先に共有する。散髪と同じですね。「おまかせで」と言って泣くのは、床屋さんでも植木屋さんでも一緒です。
さて、冒頭の「A社2万円・B社6万円」の種明かしです。植木屋さんの料金体系は、大きくこの2つと言われています。
まず1つめが「単価制」。木1本ごとに値段がつく方式で、木の高さで料金が変わります。調べた範囲では、目安はだいたいこんな幅です。
幅が広いなあ、と思いますよね。木の高さだけでなく、枝ぶりの広がり・木の種類・作業のしやすさで変わるためです。それでも「高さ3mを境に、1本の値段が一段上がる」という感覚は、持っておいて損がありません。
2つめが「日当制」。木の本数ではなく、職人さん1人が1日働いていくら、という方式です。相場は職人さん1人あたり1日15,000〜30,000円程度、時給制なら1時間2,000〜3,000円程度と言われています〔要確認〕。
どちらが得か。ざっくり言えば、「気になる木が数本だけ」なら単価制、「庭まるごと手入れしてほしい」なら日当制が向きやすい、とされています。冒頭のA社は「中木1本を単価制で」、B社は「庭全体を1日仕事として」数えていたのかもしれない。そう考えると、3倍の差は「ウソ」ではなく「数え方の違い」だった可能性がある、というわけです。
そしてもうひとつ。剪定の見積りには、隠れた主役がいます。ゴミ処分費です。
切った枝や葉は、想像よりずっとかさばります。目安として、45Lのゴミ袋1枚で500円前後、軽トラック1台分で5,000〜8,000円程度の処分費がかかると言われ〔要確認〕、作業全体の3割ほどがゴミ処分代だった、という話もあるくらいです。ここが「料金に込み」の業者さんと「別料金」の業者さんがいるので、見積りを比べるときは、必ず「ゴミ処分費は込みですか?」と聞いてください。本体が安く見えて、ゴミ代で逆転・・・は、本当によくあるパターンです。
ほかにも、遠方なら出張費、駐車場がなければパーキング代、特別に高い木ならクレーンや高所作業車の費用が乗ることがあります。どれも「かかること自体」は変ではありません。見積りに書いてあるかどうか、が大事です。
ここ、塗装や水回りの工事にはなかった、庭木ならではの話です。
木は生きものなので、切っていい時期と、切らないほうがいい時期があります。ざっくりした目安はこうです。
「去年、庭師さんに切ってもらったのに今年は花が咲かない」・・・これ、腕が悪かったのではなく、切る時期が合っていなかっただけ、ということがあるんですね。逆に、真夏や真冬にバッサリやると木が弱ることもあると言われます。
だからこそ、頼む側が覚えておきたいのはこの一言です。「この木は、いつ切るのがいいですか?」
木の種類ごとに答えが返ってくる相手なら、かなり心強い。そして良い植木屋さんほど、適期の仕事が混み合います。特に年末(お正月前にきれいにしたい)とお盆前は繁忙期と言われるので、予約は1〜2か月前くらいの気持ちで、早めに動くのがおすすめです。
塗装編でもお伝えした通り、見るべきは「金額」より「内訳と態度」です。剪定版のチェックポイントを5つに絞りました。
①見積りが「木ごと」に分かれている
「庭木剪定 一式 50,000円」ではなく、「マツ(高木)1本」「サザンカ(中木)2本」のように、どの木にいくらかかるのかが見える見積り。書ける業者さんは、隠すことがない業者さんです。
②ゴミ処分費の扱いが明記されている
さっきの隠れた主役です。「込み」なのか「別途」なのか、別途ならいくらなのか。ここを最初から書いてくれる見積りは、それだけで信頼度が一段上がります。
③損害賠償保険に入っている
剪定は、高いところで刃物を使う仕事です。枝が落ちて瓦や車を傷つけた、お隣の物置に当たった・・・万一のとき、保険に入っていない相手だと話がこじれます。「保険には入っていますか?」の一言、聞いていいんです。ちゃんとした業者さんなら、嫌な顔をしません。
④木の名前と「切る時期」の話をしてくれる
庭を見て「このモッコクは今やると強すぎるので、秋にしましょう」のように、木ごとの事情を語れるかどうか。木を長く元気に保つ視点があるか、今日の売上だけを見ているか。ここで案外わかります。
⑤突然やってきて、急がせない
これは逆側からの見分け方です。ある日突然訪ねてきて「お宅の木、倒れそうで危ないですよ」「今日なら安くできます」と不安と締切をセットで置いていく・・・剪定や伐採の世界にも、この訪問営業型のトラブル相談が消費生活センターなどに寄せられていると言われます。木の心配をしてくれる人と、あなたの財布の心配をさせる人は、別ものです。心配になったら、その場で契約せず、別の業者さんにも見てもらう。それだけで、ほとんど防げます。
もし訪問販売で契約してしまっても、契約書面を受け取った日から8日以内なら、クーリングオフ(無条件解約)ができるのが原則です(特定商取引法)。困ったら消費者ホットライン「188」へ。泣き寝入りは、しないでくださいね。
庭木の話をすると、必ず出てくる名前があります。シルバー人材センター。市区町村ごとにある公的な団体で、定年退職後の会員さんが地域の仕事を請け負う仕組みです。剪定は、その人気メニューのひとつ。
魅力は、料金です。地域によりますが、1人1日あたり10,000〜18,000円程度と、プロの植木屋さんより安めの水準と言われています〔要確認〕。
ただし、性格の違いは知っておいてください。
つまりこういう使い分けです。「とにかくさっぱりさせたい生垣や低い木」はシルバーさんが心強い味方。「形を大事に育てたいマツ」「2階を超える高木」「花を確実に咲かせたい木」はプロの植木屋さんへ。どちらが上という話ではなく、散髪でいえば、近所の1,000円カットと指名料のある美容室。用事が違うんです。
最後に、実際に動くときの段取りです。難しいことはありません。
ステップ1・スマホで庭の写真を撮る
庭の全体と、気になる木を何枚か。ついでに木の本数を数えて、「これは自分の背より高いか、2階に届くか」をメモ。これだけで、電話やネットでの問い合わせが驚くほどスムーズになります。
ステップ2・2〜3か所に声をかける
地元の造園業者さん、シルバー人材センター、ネットの紹介サービス・・・入り口はどこでも構いません。大事なのは1か所で決めないこと。塗装編と同じで、比べた瞬間に「変なやつ」は浮かび上がります。
ステップ3・見積りで「3つ」だけ確認する
この3つに気持ちよく答えてくれたら、その相手は、たぶん当たりです。
長くなりました。これだけ持って帰ってください。
植木屋さんの料金は「木1本いくら」か「職人さん1日いくら」。金額を比べる前に、まず"数え方"を確かめる。
そして、今日の1アクション。見積り依頼はまだしなくていいです。もっと小さく。
今日、庭かベランダに出て、木の本数を数えるだけ。ついでに、いちばん高い木を見上げて「3m(だいたい自分の背の2倍弱)を超えてるかな?」と眺めてみてください。
それだけで、あなたはもう「単価制の見積りを自分で予想できる施主」です。業者さんと話すときの景色が、ちょっと変わりますよ。
次回も、暮らしと工事のあいだにある「知らないと損する話」でお会いしましょう。つまんなかったら、そっと閉じてもらって大丈夫です。それでも、あなたの庭が、変なやつにだまされませんように。
それでは、また。
【免責事項】
本記事は、庭木の剪定を依頼する方が業者選びの判断材料を得るための一般的な情報提供を目的としています。記載した料金・相場は執筆時点で公開されている情報に基づく目安の幅であり、地域・樹種・木の状態・時期・業者によって大きく変動します(〔要確認〕とした数値は特に幅があります)。剪定の適期も樹種や地域の気候により異なるため、実際の作業内容・金額・時期は、必ず各業者・各団体の見積りと説明をご確認のうえ、ご自身の判断と責任でお決めください。本記事は特定の業者・団体・サービスを推奨・保証するものではなく、本記事の利用により生じたいかなる損害についても著者は責任を負いかねます。
【主な参考情報】(2026年8月閲覧)
著者:秋元進吾