「エントランスの床、なんだか黒ずんできたね」・・・それ、掃除の回数を増やしても直らないかもしれません


こんにちは。秋元進吾です。「プロに頼む前に読む 安心ガイド」、今回で第10回になりました。今日のテーマは、マンション・アパートの「定期清掃」。共用部の掃除を、清掃業者さんに頼む話です。

最初にひとつだけ、交通整理をさせてください。「お部屋の中の掃除(ハウスクリーニング)を頼みたい」という方は、このシリーズの第6回がその回です。今日はお部屋の外側・・・エントランス・廊下・階段といった、みんなで使う場所の話。読者として思い浮かべているのは、分譲マンションで理事が回ってきた方、アパートをお持ちの大家さん、そして「建物の顔」が気になりはじめたオーナーさんです。

さて、タイトルの黒ずみの話から始めます。

管理人さんや清掃スタッフさんが、毎日ほうきで掃いて、モップをかけてくれている。ゴミ置き場もきちんとしている。それなのに・・・エントランスの床が、なんとなくくすんでいる。石やタイルの目地(継ぎ目の溝)が、うっすら黒い。雨の翌日は、足跡がシミのように残って消えない。

「掃除してもらってるはずなのに、なんで?」

理事会でこの話になると、ときどき「管理人さんの掃除が雑なんじゃないか」という声が出ます。でも、たぶん違うんです。犯人は人ではなく、汚れの種類。ほうきとモップで落ちる汚れと、機械でないと落ちない汚れは、別物なんですね。

毎日の掃除は、汚れが「たまる速さをゆるめる」仕事。いっぽう、たまってしまった汚れを「リセットする」のは、ポリッシャー(床を磨く回転ブラシの機械)などの機材と専用の洗剤を使う、別の作業です。この後者が、今日の主役「定期清掃」。ここが分かると、共用部の掃除の悩みは、半分解けたようなものです。


まず全体地図|マンションの清掃は「3層」でできている

建物の清掃は、ざっくり3つの層に分かれています。名前が似ていてややこしいので、役割で覚えてください。

家庭にたとえると、毎日の食器洗いが日常清掃、週末のコンロまわり磨きが定期清掃、年末の換気扇の分解掃除が特別清掃・・・みたいな関係です。

大事なのは、この3つが「代わりになれない」こと。日常清掃の回数をいくら増やしても、ワックスの内側に入り込んだ黒ずみは取れません。逆に、定期清掃を入れても、日常のゴミ拾いがなければ建物はすぐ荒れて見える。役割が違う仕事は、別々に頼む。これが出発点です。

なお、この記事で扱うのはあくまで共用部の床や壁の話。排水管や貯水槽は法定の点検・清掃がからむ別の世界なので、今日は「そういう層もあるんだな」とだけ覚えておいてください。


料金と頻度の目安|ぜんぶ「幅」でお伝えします〔要確認〕

「で、いくらなの?」・・・ですよね。正直にお伝えすると、金額そのものに絶対の正解はありません。共用部の面積・階数・床材の種類・エレベーターの有無・地域で、ぜんぶ変わるからです。それでも「幅」を知っておくと、変な見積りに気づけるようになります。

よく言われている目安を並べます。数字はすべて「およそ」で、最終的にはお住まいの地域の見積りでご確認ください〔要確認〕。

頻度は、こんな組み方が定番のようです。

そして、ひとつ知っておくと得な傾向を。単発(スポット)で頼むより、年間契約にしたほうが1回あたりの単価は下がる傾向があると言われています〔要確認〕。業者さんも予定が組みやすくなるからですね。まず単発で1回試して、良ければ年契約へ・・・という順番が、発注側としては安心だと思います。


ここが本題|良い清掃業者を見分ける「5つのチェック」

ここで、塗装の回でもお話しした考え方が、また顔を出します。清掃も「終わった直後は、どこに頼んでも同じに見える」仕事なんです。ワックスは塗りたてなら、どれもピカピカ。下地の洗浄を丁寧にやったか、ワックスを薄めていないかは、数か月後の「持ち」で初めて分かる。だから、仕上がりの写真ではなく、仕事の進め方で見分けます。

①作業仕様書(どこを・何を・どの頻度でやるかの明細)を出してくれる

「共用部清掃 一式」ではなく、「エントランス床 ポリッシャー洗浄+ワックス2層、1階廊下は洗浄のみ、隔月」のように書けるか。仕様書は、あとで「言った・言わない」を防ぐ命綱でもあります。

②損害保険(賠償責任保険)に入っている

ワックスで滑って住民の方が転倒した、洗浄水が郵便受けに入った・・・清掃には清掃の事故があります。万一のとき補償できる保険に入っているか、聞いていい質問です。ちゃんとした業者さんなら、さらっと答えてくれます。

③写真つきの作業報告書を出してくれる

作業前と作業後のビフォーアフター写真。毎回立ち会えない理事さんや、遠方の大家さんにとって、報告書は「自分の目の代わり」です。これがあるかないかで、頼んだあとの安心感がまるで違います。

④現地を見てから見積もる

床材が石かタイルか長尺シート(ビニール系の床材)かで、洗剤も機材も変わります。図面や戸数だけで即答する業者さんより、実際に歩いて、床を触って、汚れ具合を見てから数字を出す業者さんを選んでください。

⑤建築物清掃業の登録や、資格を持つ人がいる

都道府県知事への「建築物清掃業」の登録制度や、「ビルクリーニング技能士」という国家資格があります。登録や資格がなくても良い仕事をする方はいますが、あれば技術と体制のひとつの目安になります。

5つ全部そろわなくても大丈夫。ただ、①の仕様書と③の報告書・・・この「紙が出てくるかどうか」だけは、譲らないことをおすすめします。


相見積りのコツ|「仕様を揃える」が9割

相見積り(複数の業者から見積りを取ること)は、清掃でも3社が基本です。ただし清掃の相見積りには、塗装以上に大事なコツがひとつあります。

条件を揃えないと、比べられない。

A社は「エントランスと廊下、月1回、ワックスあり」で3万円。B社は「エントランスのみ、隔月、洗浄だけ」で1.5万円。これ、B社が安いように見えて、実は比較になっていないんですね。

なので、見積りを頼むときは、こちらから条件を1枚のメモにして渡します。

同じ条件で3社に出してもらうと、不思議なもので「高すぎる1社」や「安すぎて何かを削っていそうな1社」が浮かび上がってきます。極端に安い見積りは、範囲が狭いか、頻度が違うか、ワックスの層数が少ないか・・・どこかに理由が隠れていることが多いです。金額より、条件との対応を見てください。


管理会社経由と直接契約|どちらが正解、ではなく

分譲マンションの場合、清掃はたいてい管理会社への委託契約に含まれています。アパートの大家さんも、管理会社にまとめてお願いしているケースが多いですよね。そこでよく出る疑問が「業者に直接頼んだほうが安いのでは?」です。

これ、半分当たりで、半分注意が要ります。

つまりこれは「手間をお金で買うかどうか」の選択なんです。どちらが偉いという話ではありません。

ひとつだけ、順番のお願いを。直接契約を検討する前に、まず今の契約書(管理委託契約書や重要事項説明書)を開いて、「清掃として何が・どの頻度で含まれているか」を確認してください。定期清掃が入っていると思ったら年1回だけだった、逆に、含まれているのに気づかず二重に頼みかけた・・・どちらの話も聞きます。現状を知らずに比較はできませんから。


頼み方3ステップ|今日から動ける順番で

最後に、実際の動き方です。難しくありません。

ステップ1:現状を棚卸しする
契約書で「いまの清掃の範囲と頻度」を確認。そして、エントランスに立って床を見る。真ん中ではなく、隅と目地を。黒ずみがたまっていたら、それが機械の出番のサインです。気になる場所はスマホで写真を撮っておくと、あとで業者さんに伝えるとき役立ちます。

ステップ2:条件メモを作って、3社に相見積り
さっきの「範囲・頻度・作業内容・広さ」を1枚にして、同じ条件で3社へ。このとき、5つのチェック(仕様書・保険・報告書・現地調査・登録資格)も一緒に確かめます。

ステップ3:小さく始めて、報告書で判断する
いきなり年間契約にせず、まずスポット1回、または年2回から。上がってきた報告書と、数か月後の床の「持ち」を見て、良ければ頻度や範囲を広げる。清掃は工事と違って、やり直しも乗り換えもしやすい買い物です。この身軽さを、発注側の武器にしてください。


まとめ|今日の「ひとつだけ」

長くなりました。持って帰っていただくのは、これだけで大丈夫です。

毎日の掃除は、汚れを「ためない」係。定期清掃は、汚れを「リセットする」係。別の仕事だから、別に頼む。

そして、今日の1アクション。

帰り道、エントランスの床の「隅っこ」を、10秒だけ見てください。

真ん中はきれいなのに、隅と目地に黒ずみがたまっていたら・・・それは誰かのサボりではなく、「リセット係がまだ呼ばれていない」だけかもしれません。犯人探しの前に、仕組みを見る。このガイドで一番お伝えしたかったのは、実はそこだったりします。

次回も、このシリーズでお会いしましょう。あなたの建物の「顔」が、いつも気持ちよく光っていますように。

それでは、また。


【免責事項】
本記事は、清掃業務を依頼する方が業者選びの判断材料を得るための一般的な情報提供を目的としています。記載内容は執筆時点の情報に基づくもので、価格・相場・制度・法令は地域や時期によって変動します。実際の作業内容・金額・契約条件は、必ず各業者の見積書および契約書面をご確認のうえ、ご自身の判断と責任でお決めください。本記事は特定の業者・商品・サービスを推奨・保証するものではなく、本記事の利用により生じたいかなる損害についても著者は責任を負いかねます。

【出典】(いずれも2026年8月閲覧)

著者:秋元進吾