公開日: 2026-08-10
更新しました(2026年9月26日) 挿絵を入れました
友だちとカラオケに行って、2時間歌って、出てきました。
さて、いま何を買ったんでしょう。
部屋? ちがいますよね。部屋は借りただけで、持って帰っていません。マイク? あれも置いてきました。ドリンクバー? それは、おまけです。
買ったのは、"楽しい2時間"です。
形のあるモノは、なにひとつ手元に残っていない。でも、たしかに何かを買った。こういう商品を「コト」と呼びます。世の中の商品は、モノだけではありません。

1つの文の、ふたつめの空欄。「だれの"何を"」の、"何を"の部分です。中身で分けると、商品は5つになります。
モノ。形があって、持って帰れるもの。おにぎり、服、自転車。
コト。体験や時間。カラオケ、旅行、映画、遊園地。
チエ。知識ややり方。塾の授業、建物の設計、弁護士の助言。「答え」や「解き方」そのものが商品です。
時間。"そこにいてくれること"が商品になるもの。警備員さん、介護の見守り、留守番サービス。何も起きなければ何もしない。でも、いてくれることに意味がある。
お金。お金そのものを扱う商品。銀行の貸し出し、保険。「いま貸す」「万一に備える」という約束を売っています。

前回のコンビニ店員さんは、時間と腕を"会社に"売っていました。今日の5つは、会社が"お客に"売る商品の話です。同じ「売る」でも、階がちがう。ここを分けて考えられると、仕事の話は一気に見通しがよくなります。
もうひとつ、商品を見わける物差しがあります。
歯が痛くなったときの歯医者さん。雨もりしたときの屋根の修理。壊れたスマホの修理。これらは"なくなると困る"商品です。痛みを止めてくれる。だから、待ったなしで買われます。
いっぽう、推しのグッズ。ゲーム。スイーツ。旅行。これらは"あると嬉しい"商品です。なくても生きてはいけます。でも、人生がずっと明るくなる。
前者を痛み止め型、後者をビタミン型と呼ぶことにします。
どちらが上でもありません。世の中が苦しいとき、先に削られるのはビタミン型で、痛み止め型は残ります。そのかわり、人を夢中にさせて、行列をつくって、世界に広がっていくのは、たいていビタミン型です。日本のアニメやゲームは、ビタミン型の横綱ですね。
自分が心を動かされる商品はどっち側か。ここは、後半のコンパス編でもう一度出てきます。頭の片すみに置いておいてください。
"何を"が決まっても、まだ半分です。同じおにぎりでも、持ち場によって仕事はまるでちがいます。
おにぎりの旅を、役割で色分けし直してみます。

作る。米をつくる農家、海苔の養殖、工場。ゼロから形にする役です。
売る。コンビニ、スーパー。お客と向き合う、旅の最終ランナーです。
運ぶ。トラック、倉庫、船。作る人と売る人のあいだの距離を消す役です。
つなぐ。農家と工場のあいだに立つ卸(おろし→まとめて仕入れて、ふり分ける問屋さん)。それから、売り手と買い手を引き合わせる仲介。不動産屋さんも、フリマアプリの運営会社も、ここです。自分ではモノを持たずに、"出会い"を商品にしています。
支える。工場の機械を直す人、経理、清掃、警備。ここが面白いところで、支える役の名前は、商品には残りません。おにぎりのパッケージに「機械整備・田中」とは書いていない。でも、この役が止まると、旅ぜんぶが止まります。
作る・売る・運ぶ・つなぐ・支える。世の中のどんな仕事も、この5役のどれか(または複数)を担っています。あなたが将来やる仕事も、必ずこの中のどこかです。
全国のコンビニは、およそ5万6千店あります。小学校は、およそ1万9千校。
コンビニは、小学校の3倍あります。
(日本フランチャイズチェーン協会の統計、文部科学省「学校基本調査」)
これは"売る"の持ち場だけの数です。その1店1店の裏に、作る・運ぶ・つなぐ・支えるの人たちが連なっている。前に旅した、あのおにぎりの列が、5万6千本あると思ってみてください。
今日、あなたか家族がお金を使った1件を選んでください。
そして2問だけ。「中身は5つのどれ?(モノ・コト・チエ・時間・お金)」「痛み止め? ビタミン?」
コンビニのおにぎりなら、モノで、どちらかといえば痛み止め(お腹がすくと困る)。カラオケなら、コトで、ビタミン。慣れると3秒でできます。3秒でできるようになったころには、町の看板の見え方が変わっています。
中身と役割が見えたら、次は"相手"です。
ヒントをひとつ。あなたの教室の机。あれを買ったのは、あなたではありません。じゃあ、だれでしょう。