公開日: 2026-08-10
更新しました(2026年9月26日) 挿絵を入れました
前回の宿題のような問いから始めます。
公立学校の先生。コンビニ本部の会社員。子どもの居場所づくりをするNPO(民間の非営利団体)の職員。
この3人、毎月給料をもらっています。そのお金は、それぞれ、もともとどこから来たものでしょうか。
答えを先に言うと、3人は"別の世界"に住んでいます。世の中の仕事は、お金の出どころで、大きく3つの世界に分かれているんです。

コンビニ本部の会社員の給料は、たどっていくと、お客が払ったお金です。おにぎりの130円が集まって、仕入れ先に払われて、働く人の給料になって、残った利益が会社と株主のものになる。
この世界のルールはシンプルです。お客に選ばれなければ、お金が入ってこない。だから、選ばれる工夫を続けます。ここまでの連載で見てきたのは、ほぼ全部この世界でした。正式には民間営利(みんかんえいり)・・・利益を目的とする民間、と呼びます。
水源は、お客の財布。ひとつめの川です。
公立学校の先生の給料は、税金から出ています。
税金は、お客が"買いたくて"払うお金ではありません。みんなから集めて、みんなのために使うお金です。だからこの世界の仕事は、「選ばれること」よりも「だれも取りこぼさないこと」が仕事になります。
警察、消防、市役所、公立の学校。もうかるかどうかで決めていたら、成り立たない仕事たち。もうけを考えなくていいように、税金という水源が用意されている、とも言えます。
水源は、税金。ふたつめの川です。
さて、3人目。NPOの職員です。ここで、たぶん一番多い誤解を解いておきます。
非営利は、タダ働きという意味ではありません。
非営利の「利」は、利益のこと。正しい意味は、"利益を山分けしない"です。会社の世界では、もうかった利益を株主に分配します。非営利の世界では、分配せず、次の活動につぎ込みます。それだけのちがいです。
だから、NPOでも給料は出ます。働くことは、ちゃんと仕事です。
水源は、会費と寄付、それから自分たちの事業の収入。みっつめの川です。応援したい人がお金を出す、という点で、最初のふたつとは性格のちがう水源です。
じつは、この世界は思っているより大きいです。多くの私立学校(学校法人)、多くの病院(医療法人)、赤十字、生協。あなたが「会社かな」と思っている場所の、けっこうな数が、この3つめの世界にあります。
同じ「教える仕事」で、3つの世界を縦断してみます。
公立学校。お役所の世界。税金で回り、全員に教育を届けるのが役目。
私立学校。非営利の世界(学校法人)。授業料と寄付で回り、独自の教育方針を選んでもらう。
塾。会社の世界。授業料で回り、成果で選ばれ続けなければ生き残れない。
3つとも、教壇に立って教えることは同じです。でも、水源がちがうから、大事にするものがちがう。どれが正しいのではなく、3つそろって、教育の全体ができています。

中学の公民で習う「家計・企業・政府のお金のめぐり」の図は、この3つの世界の地図です。教科書のあの図、この連載を読んだあとに見直すと、ただの矢印には見えなくなっているはずです。
最後に、ちょっと面白い場所を紹介します。
道路工事の看板を見てください。工事をしているのは、建設会社・・・つまり会社の世界の人たちです。でも、お金を払っているのは、多くの場合お役所・・・税金です。
税金という水源から、会社の世界へお金が流れ込む合流点。これを公共事業と呼びます。第4回でやったBtoGは、まさにこの合流点の商売でした。

3つの世界は、べつべつに存在しているのではなく、あちこちで合流しながら、ひとつの大きな流れをつくっています。その流れの全体を、次回、川として上から下までたどります。
NPO法人は、全国におよそ5万あります。
(内閣府のNPO統計)
コンビニが約5万6千店でしたから、ほぼ同じ規模です。「非営利の世界」は、レアな存在ではなく、コンビニ並みにそこらじゅうにある。そう聞くと、見え方が変わりませんか。
今日通った場所、知っている場所を5つ選んで、3つの世界に仕分けてみてください。
コンビニ、学校、図書館、病院、郵便局、駅、公園、スーパー・・・なんでもいいです。
ひとつだけ予告しておくと、病院で迷うと思います。迷ったら大成功です。その「どっちだろう?」が、この回でいちばん持ち帰ってほしいものなので。
3つの水源から流れ出したお金は、川になって世の中をめぐります。
おにぎりは川上から川下へ。お金は、その逆向きに流れる。そして、あなたの給料は、その川の分け前です。