公開日: 2026-08-10

自分というプレイヤーを知る

更新しました(2026年9月26日) 挿絵を入れました

机の上で空欄の進路希望用紙を前にペンが止まり、窓の外の廊下では文化祭の飾りを運ぶ生徒たちが見える。

「やりたいことは?」に答えられない、あなたへ

進路の紙を前にして、志望の欄が埋まらない。友だちはすらすら書いているように見える。自分だけ、何もない気がしてくる。

先に、はっきり言っておきます。やりたいことがないのは、欠陥ではありません。

考えてみてください。この連載で見てきたように、世の中の仕事は、細かく数えれば千を超えます。そのほとんどを、あなたはまだ見たことがない。見たことのないものの中から「やりたいもの」を選べ、と言われているんです。答えられないのが、普通です。

じゃあ、どうするか。順番を変えます。

「何がしたいか(What)」の前に、「どう関わると気持ちいいか(How)」を先に知る。

Whatは千個ありますが、Howは、実は数えるほどしかありません。今日はその話です。


文化祭の準備を、思い出してください

文化祭の準備期間。教室に、いろんな動き方の人がいたはずです。

大道具にかかりきりの人。のこぎりと絵の具で、看板や壁をひたすらつくっている。

出し物のネタを調べ込む人。「本物のお化け屋敷はどう照明を組むのか」を、気づいたら夜中まで調べている。

ポスターを描く人。頼まれてもいないのに、フォントと色にこだわり出して止まらない。

初めての子に教える人。段取りが分からず困っている子の横に、自然にいる。

クラスをまとめて宣伝する人。「隣のクラスより人を集めよう」と仕切って、廊下で呼び込みを始める。

会計と進行表を整える人。買い出しのレシートがそろい、当日のタイムテーブルが正確なのは、この人のおかげ。

全員、同じ文化祭の準備をしています。でも、気持ちよく動けている場所が、それぞれちがう。

そして、6人とも欠けたら文化祭は成り立ちません。優劣は、ありません。

文化祭準備の教室を俯瞰し、木材を切る人、照明を調べる人、絵を描く人、教える人、呼び込む人が働く。

これ、実は世界共通の6タイプです

いま並べた6人は、私が考えた分け方ではありません。

ホランドというアメリカの学者が整理した、人と仕事の相性を見る6つのタイプです。頭文字をとってRIASEC(リアセック)と呼ばれ、世界中の職業相談で、半世紀以上使われています。

第5回を思い出してください。分類は、目的のためにだれかが引いた線でした。この6タイプも同じです。目的は、「自分の気持ちよさに名前をつけて、探しものをしやすくすること」。それだけの道具です。


使うときの注意書き

道具なので、取扱説明を3つ。

ひとつ。血液型占いにしないこと。「おれはRだから」と1文字に自分を閉じ込めるのは、いちばんもったいない使い方です。人はふつう、2〜3個のタイプの組み合わせです。「AとI」「SとE」のように、強い順に2つ3つで見てください。

ふたつ。変わってよいこと。中学のときと高校のとき、部活と教室で、強く出るタイプはちがったりします。それで正常です。

みっつ。ラベルは檻(おり)ではなく、語彙(ごい)だということ。「自分はSが強いから営業はムリ」と可能性を消すために使うのではなく、「自分はSが強いから、営業をやるなら"売り込む営業"より"困りごとを聞く営業"が合うかも」と、探し方を細かくするために使う。線は、自分のために引き直していいんでしたよね。


国がつくった、無料の道具箱

Howに名前がついたら、次はWhatを眺める番です。ここで、とんでもなく便利な道具を紹介します。

job tag(ジョブタグ)。厚生労働省がつくった職業情報サイトです。

500以上の職業について、仕事の中身、なり方、働く人の声が載っていて、多くは紹介動画つき。しかも、興味や価値観をはかる検査があって、結果からタイプに合う職業をたどれます。全部、無料です。

第5回でやったハローワークの地図(大15・中99・小440)が"住所録"だとしたら、job tagは1軒1軒の"家の中が見える"サイトです。地図とセットで使うと、効きます。


数字の窓

job tagに掲載されている職業は、500以上。

(厚生労働省「職業情報提供サイト(job tag)」)

あなたが名前を言える職業は、何個くらいでしょうか。試しに紙に書き出すと、たいていの人は50個前後で手が止まります。つまり、まだ見ていない職業が、少なくとも450個ある。「やりたいことがない」のではなくて、「まだ9割を見ていない」だけ・・・そう考えると、少し気がラクになりませんか。


ことばの言いかえ


今日の1つ

文化祭でも、部活でも、家でも、グループワークでもかまいません。

「気づいたら引き受けている役」を、3つ思い出してください。頼まれていないのにやっていたこと、頼まれて嫌じゃなかったこと。

その3つを、6タイプのどれかに置いてみてください。2つ以上が同じタイプに集まったら、それがあなたのHowの、最初の手がかりです。

余力があれば、job tagで検査を受けて、答え合わせをしてみてください。当たっていても、外れていても、収穫です。外れたと感じた理由の中に、自分の情報が入っていますから。


次回

Howの手がかりがつかめたら、最後の道具です。

同じ仕事でも、大企業とひとりでは、まったく別の生活になる。チームかソロか、動かす側か動く側か、収入の柱は何本か。地図の2階に置いてあった、働き方の4つの軸を、いよいよ自分に当てはめます。

→ 第12回 どう働きたい?