家の中に、お金に関わる紙が、たぶん何枚かあります。
保険の証券。ローンの明細。証券会社からのお知らせ。銀行の通帳。
ばらばらの紙に見えます。差出人も違います。でも、この4枚は、同じ一本の道の上に並んでいます。
今日は、その道の話です。
金融(きんゆう)という言葉は、お金を融通する、と書きます。
世の中には、いま使う予定のないお金を持っている人がいます。同時に、いま手元にないけれど、必要としている人がいます。
余っているところから、足りないところへ。この通り道のことを、金融と呼びます。
道である以上、通るには料金がかかります。運ぶ人にも、取り分があります。ここを先に押さえておくと、このあとの話が全部、同じ形に見えてきます。
道の使い方は、大きく3つです。借りる、増やす、備える。
第7回「その値段は、誰が決めているのか」(別タブで開く)で、金利はお金のレンタル料です、と書きました。
借りるというのは、時間を前借りすることです。いま手元にないお金を、先に使わせてもらう。そのかわり、使わせてもらった期間に応じてレンタル料を払う。
家のローンも、車のローンも、事業の借入も、カードの分割払いも、形が違うだけで、中身は同じです。第6回「その会社は、誰のお金で動いているのか」(別タブで開く)で書いた、会社にお金が入る3つの入口のうちの、借入がこれにあたります。
次が、増やすです。
代表的なものが2つあります。
ひとつは、株(かぶ・会社の持ち分)です。第6回で、会社には出資(しゅっし・元手のお金を出してもらうこと)の席がある、と書きました。その席の権利を細かく分けて、売り買いできるようにしたものが株だと説明されています。売り買いする場所が、証券取引所です。
もうひとつは、債券(さいけん・お金を貸したことを証明する券)です。国や会社が、たくさんの人からまとめて借りるときに発行するものだとされています。持っている側から見れば、貸している証書ですね。
どちらも、値段が動きます。なぜ動くかというと、第7回に書いた綱引きが、ここでも起きているからです。ほしい人が多ければ上がり、手放したい人が多ければ下がる。
大事なのは、ここです。増やすと言っても、お金がどこかから湧いてくるわけではありません。第12講「社会は、どんな仕組みで回っているのか」(別タブで開く)に書いたとおり、お金は消えずに移動します。誰かの手元で増えているとき、そのお金は、どこかから移動してきています。
3つ目が、備えるです。
保険(ほけん)は、大勢の人が少しずつお金を出し合っておいて、その中で困ったことが起きた人に、まとまったお金を渡す仕組みだと説明されています。
第5回「そのお金は、積み立てられていません」(別タブで開く)で、年金は貯金ではなく、みんなで出し合って困った人に渡す型です、と書きました。保険は、それと同じ型です。自分が払ったお金が、自分のために取ってあるのではなく、いま必要な人のところへ回っている。
だから、何ごともなければ、払ったぶんは戻ってきません。これは損をしたのではなくて、その型のとおりに動いた、ということです。ここを知らずに入ると、あとで話が違う、となりやすいところですね。
借りる・増やす・備える。この3つには、たいてい、あいだに立っている会社があります。
銀行。証券会社。保険会社。
第11回「預けたお金は、銀行の金庫にはありません」(別タブで開く)で、銀行は、預けた側に払う利息と、貸した側から受け取る利息の差で商売をしている、と書きました。
証券会社は、売り買いの場につなぐ仕事をして、その手数料を受け取ります。保険会社は、集めた保険料と、支払う保険金や経費との差で成り立っている、と説明されています。
どこも、悪いことをしているわけではありません。道を通す仕事には費用がかかるので、その対価があるのは当たり前です。
ただ、ひとつだけ覚えておくと役に立ちます。あいだに立っている人には、こちらが動いたときに入る取り分がある、ということです。それを知ったうえで話を聞くのと、知らずに聞くのとでは、聞こえ方が変わります。
第3回「そのうまい話は、なぜあなたのところに来たのか」(別タブで開く)で、うまい話は台本を持ったプロが持ってくる、と書きました。
その受け皿を、ここに置いておきます。
誰かの手元で増えるとき、そのお金は、どこかから来ています。値上がりで得をした人がいるとき、その値段で買った人がいます。集めたお金を配っている仕組みなら、配る元は、あとから入ってきた人のお金かもしれません。
だから、増える話を聞いたときの質問は、ひとつでいいです。
そのお金は、誰から、どういう理由で、こちらに回ってくるんですか。
これに答えられる話と、答えられない話があります。それだけで、かなり見分けがつきます。
答えられない相手を、その場で問い詰めなくていいです。持ち帰って、あとで考えれば十分です。
ここまで読んで、で、結局やったほうがいいのか、と思った人がいると思います。
そこには、立ち入りません。
やるべきだとも、やめるべきだとも書きません。どの会社がよいか、どの商品がよいかも書きません。事情も、時期も、気持ちも、人によって違うからです。
仕組みを説明するところまでが、わたしの仕事です。どう考えるかは、あなたの主導権のほうにあります。
もう少し先の話を読みたい人のためには、別館として「投資の海図」(https://toushi-kaizu.akimo10shin5.com ・別タブで開く)を置いてあります。この連載のほうは、仕組みの説明のところで止めておきます。
いつもどおり、最後にひとつだけお願いをします。ひとつだけです。
そして、これは借りる・増やす・備えるのどれだろう、と、ひとつだけ当ててみてください。
当てるだけでいいです。今日はそれで十分です。
わたしも、この記事を書きながら、引き出しから一枚出して当ててみました。出すまでは、お金の紙、とひとまとめでした。当てたあとは、3つに分かれて見えてきます。
前回。銀行の中身を開けました。
会社の3つの席と3つの入口は、ここです。
金利と綱引きの話は、ここに書いてあります。
みんなで出し合って困った人に渡す型は、この回で。
うまい話の見分け方は、ここに書きました。
連載の棚はこちら。
この回で育てる力:お金(副:知性)
次回は、そのパンは、何人の手を通ってきたのか。
この連載の土台:仕組みには、作った側の目的や意図があります。作られた側からは、それが見えにくい。だから、知らなかったのは、あなたのせいじゃない。習ってないだけです。
秋元進吾でした。
AIのサポートを受けながら、私のアイデアと考えを体系化した作品集です。