公開日: 2026-08-05

125,000円のFAXと、6個100円のたこ焼き

更新しました(2026年9月26日) 挿絵を入れました

こんにちは。秋元進吾です。

2020年の梅雨どき、ふと気になって「ファックス 価格」で検索したことがあります。

出てきたのは、高いものでも25,000円ほど。そして1995年ごろの価格として出てきた数字は、125,000円でした。

25年で、10万円安くなっている。

ぼったくりだったのか。いえ、違います。値段には、動く理由があるんです。

今日はそれを、FAXとたこ焼きと、少しの未来で見ていきます。読み終わるころには、値札の見え方が少し変わっているはずです。

6個100円のたこ焼き屋

中学生のころ、通学路の途中にたこ焼き屋さんがありました。

たこ焼きが大好きだったので、学校の帰り道、休憩がてら店内で何度も食べました。たまに友達に見つかって、「たこ焼き食ってるやん」と言われて走り去られたこともあります。

駅前でも、人通りの多い場所でもありません。それでも6個で100円。中学生の財布にはとってもナイスな値段で、私はすっかりリピート客になりました。

いま、100円で食べられるたこ焼き屋は、なかなかないと思います。

あの店の値段を決めていたのは、立地と、たこ焼きの大きさと、そして店主のおっちゃんの裁量でした。「うちはこれでええねん」という値付けです。

夕方の路地のたこ焼き屋で店主の手元が鉄板のたこ焼きを返し、手前のカウンターに学生かばんと盛られた皿がある。

値段を動かしている三つのもの

FAXとたこ焼き。この二つを並べると、値段を動かしているものが見えてきます。

一つめは、原価(作って届けるのにかかるお金)。

材料費、人件費、運ぶ費用。ここが上がれば値段は上がり、技術がこなれて安く作れるようになれば、値段は下がります。FAXが25年で10万円下がった理由の半分は、これです。作るのがどんどん安くなった。

二つめは、需要と供給(欲しい人の数と、出回る品物の数のバランス)。

欲しい人が多くて品物が少なければ、値段は上がる。逆なら下がる。FAXのもう半分の理由はこちらです。メールが普及して、FAXを欲しい人そのものが減りました。欲しい人が減れば、値段も下がります。

三つめは、売る人の裁量。

同じたこ焼きでも、観光地なら8個600円、あの路地なら6個100円。原価でも需給でもなく、「誰に、どんな顔で売りたいか」が値段になることがあります。おっちゃんの100円は、たぶん、近所の中学生の顔を見て決めた値段です。

無地の値札を3本の糸が引き、左は資材を運ぶ手とトラック、右は人と箱を量る天秤、下は店の前で糸を握る両手につながる。

2020年の私が、間違えていたこと

じつはこの話、2020年に一度noteに書いています。そのときの私は、こんなことを書きました。

FAXは、恋人との愛を育んだとか、有名人が使っていたとか、そういう思い出が付加価値になって、中古で買った値段より高く売れるかもしれない、と。

いまなら、はっきり訂正できます。

思い出は、持ち主にとっての価値です。中古市場の値段は、他人が払う額です。この二つは、別物です。

恋人とFAXで愛を育んだ思い出は、あたたかい。でもメルカリの値札には、乗りません。値札に乗るのは、品物の状態と、手に入りにくさと、欲しい人の数だけです。

ただ、逆も言えます。値札に乗らないからといって、価値がないわけではない。あのたこ焼き屋の100円に付いてきた放課後の時間は、いくらの値も付きませんが、32年たってもこうして思い出せます。

「自分にとっての価値」と「市場でつく値段」。この二つを分けて見られるようになると、買い物は少し楽になります。高いものが偉いわけでも、安いものが正解なわけでもないと分かるからです。

2026年のいま、値段はもっと身近になった

最初に書いた2020年から、6年たちました。値段の動きは、あのころより日常に近づいています。

無料で始まったAIサービスに、月額を払うのが普通になりました。便利さにお金を払う、付加価値の値段です。

フリマアプリでは、定価と転売価格の二重価格が当たり前になりました。欲しい人の数と品物の数のバランスが、そのまま値段になる世界です。

そして毎日の買い物。値上がりを実感している人は多いはずです。材料や運ぶコストが上がれば、店頭の値段も上がる。原価の値段です。

2020年にFAXとたこ焼きで考えたことが、そのまま、レジの前で起きています。

2030年、たこ焼きはいくらか

少しだけ、先の話をします。

2030年、たこ焼きは1個500円になっているかもしれません。AIの屋台が焼いて、焼き加減はアプリで指定する時代が来ているかもしれません。

でも私はたぶん、路地裏のどこかに残った、おっちゃんが焼く店を探すと思います。

「うちはこれでええねん」という値付けが残っている限り、値段の話は、最後は人間の話です。

今日、ひとつだけ

次に何かを買うとき、値札の後ろにある理由を、ひとつだけ想像してみてください。

これは原価が高いのか。人気で釣り上がっているのか。それとも、売る人の「これでええねん」なのか。

当たっているかどうかは、どうでもいいんです。想像するだけで、買い物がちょっと面白くなって、無駄な買い物がちょっと減ります。

あなたが最近「高いけど買ったもの」、よかったら教えてください。次の記事のヒントになります。


この記事は、2020年6月にnoteへ書いた記事を、2026年のいま、最初から書き直したものです。元の記事と、AIと5往復して作り直した顛末は、連載過去のメルマガをAIに評価してもらったら(4)で読めます。

この記事を書いた人

秋元進吾(進選ライフ)。AI活用、コンテンツ制作、アプリづくり、職人向けコンサル、暮らしのサポートを一人でやっています。ネットショップを運営していたころは "ちゃんご店長" の名前で親しまれていました。

akimo10shin5.com