公開日: 2026-09-29

1分のアニメを、AIに「自由に作って」と頼んだら、一晩で映画になった話

こんにちは。秋元進吾です🏮

先日、60秒の短編アニメ『夜明けのランタン』を公開しました。夜の山で、おじいちゃんの形見のランタンがしゃべりだす話です。
まだの方は、作品ページで1分だけ見てみてください。音が出ます。

雲海の上の山頂。朝日がのぼる空の下で、ランタンを提げた子どもが遠くの光を見ている。

今日は、その裏側の話です。
ぼくが打ったお願いは、ほとんど一つだけ。そこから朝までに何が起きたのか、うまくいったことと転んだところを、正直に書かせてください。


お願いは、ひとつだけでした

AI(Claude Code)に打った文章を、そのまま載せます。

好きな内容を自由に選んで、信じられないほど魅力的な2Dアニメーションを制作してください。長さは1分で、連続性のあるストーリー、対話、日本語の音声を含めてください。私を驚かせてください。たくさんのエージェントを利用して、必要なツールはすべてインストールして使用してください。

題材を、決めていません。物語も、登場人物も、絵柄も決めていません。「自由に選んで」です。

ふつう、ものを頼むときは、細かく指示したほうが、いい結果が出ます。でも今回は、逆をやってみたかった。細かく指示すると、出てくるのは「ぼくの想像の範囲」の作品です。ぼくが想像していないものを、見てみたかったんです。

そのあと打ったのは、「そのまま完成まで一気に進めて」。それだけです。夜に頼んで、寝ました。

朝、できていたもの

60秒。1920×1080。24コマ/秒で、1,440枚の絵。台詞は13本。効果音は19種類。音楽は、ニ長調の劇伴。

そして、絵の素材が1枚も入っていません。画像ファイルも、録音も、フリー素材も、ゼロ。山も星空も、ハルの顔も、ランタンの炎も、プログラムが「今は何秒か」を受け取って、その瞬間の1枚を描いています。

正直に言うと、見終わって驚いたのは、絵よりも、話の中身でした。

てっぺんを見るから、しんどいんじゃ。足もとを照らしてごらん。

これは、この場所で何度も書いてきたことです。目的と目標の順番。続かないのは、意志が弱いからじゃない。題材を渡していないのに、この場所の考えとぴったり重なる話が出てきました。偶然なのか、サイトを読んでいたのか。正直、わかりません。


どうやって作ったのか

ここからは、仕組みの話です。登山の道にたとえて、五つに分けます。

一合目:設計書を一枚にまとめる

最初にできたのは、絵ではなく、設計書でした。脚本、台詞、秒単位のカット割り、効果音と音楽のきっかけ、配色、光の重ね方の約束。これを「時刻表」にして、全員の共通の台本にします。

なぜ先に時刻表かというと、あとで担当が同時に動くからです。声の担当が29.85秒に台詞を置き、効果音の担当が29.6秒に石の鈴を鳴らし、作曲の担当が46.000秒の日の出に小節の頭を合わせる。同じ時刻表を見ているから、別々に作っても、最後に合います。

完成した映像から24コマを4段に並べた一覧。夜の山と星空から、ランタンとの出会い、光る石の道、雲海の日の出まで。

二合目:担当が同時に作る

声、作曲、効果音、背景、キャラクター。それぞれ別のAIエージェントが、並行して作りました。

キャラクター設定の一枚。ハルの横・正面・後ろ・座りの姿と9つの表情、ともしびの3つの状態と6つの表情、色の見本。

三合目:監督が組み立てる

カメラ、演技、光、粒子、字幕。夜の場面は「青い環境光」と「ランタンの光」を掛け合わせて描いています。

ここで大事にしたのが、「時刻を渡せば、必ず同じ一枚が描ける」ことです。乱数(らんすう→サイコロのようにばらつく数)も種を固定してあるので、何度描いても同じ絵になります。これがあると、あとで一コマだけ直せます。

四合目:場面ごとに磨く

場面ごとの担当が、試し撮りを見ながら直します。カットの前後のつながり、足が地面を滑っていないか、音と動きが合っているか。一コマずつ。

山頂:全コマを描いて、音と合わせる

ブラウザの描画エンジンを画面なしで動かして、1,440コマを並列に描きます。声・音楽・効果音を混ぜた音声と合わせて、動画にして、おわり。

完成版からの4コマ。地面に置かれたランタン、ハルとともしび、山肌をのぼる光の道、朝日の中で泣き笑いするハル。

口パクが、ずれない理由

いちばん気に入っている仕組みが、これです。

声を合成するエンジンは、「どの音を、何秒鳴らしたか」を返してくれます。子音と母音の長さです。そこから、一モーラ(かな一文字ぶんの音)ごとに口の形を計算しています。だから、声と口が、ずれません。

口パクの設計図。2つの台詞の波形の上にカナが並び、下の帯に「あ・い・う・え・お・ん・閉」の口の形が時間順に色分けされている。

上が声の波形とカナ、下の帯が口の形(あ・い・う・え・お・ん・閉じる)です。「わあっ!?」の「わ」で口が開き、「っ」で閉じる。図にすると当たり前のことが、当たり前に起きているだけなのですが、この当たり前を作るのが、いちばん難しいところでした。

音楽は、日の出に合わせて

劇伴は、テンポを区間ごとに設計してあります。理由は一つ。46.000秒の日の出の瞬間に、小節の頭がぴったり来るようにするためです。

劇伴のピアノロール。横に時間、縦に音の高さ。楽器ごとに色分けされた音符が並び、金の縁の音符が「ランタンの動機」。

金の縁の音符が「ランタンの動機」。同じ四つの音が、楽器を変えて、四回出てきます。


転んだところも、書いておきます

うまくいった話だけだと、うそになるので。

どれも、人が作るアニメでも「よくある話」だと思います。違うのは、直すのに描き直しがいらないことです。数値を一つ変えて、そのコマだけ描き直す。それで終わります。

何が、変わったのか

一人の会社です。アニメーターも、作曲家も、声優さんも、いません。

その一人が、夜に頼んで寝たら、朝には1分の映画ができていました。

でも、正直に書くと、AIが全部やったわけでもないんです。「何を作るか」を決めず、「どこまで自由にするか」を決めたのは、ぼくでした。朝、見て、「これは公開しよう」と決めたのも。作るのは、速くなりました。決めるのは、まだ人の仕事です。たぶん、これからも。


今日、ひとつだけ

もし、あなたの中に「いつか作りたかったもの」があるなら。

紙に、一行だけ書いてみませんか。「1分のアニメ」でも、「一冊の絵本」でも、「一曲」でも。作り方は、あとで考えていい。先に、一行だけ。

一歩だけなら、今日もできます。

使ったもの:VOICEVOX(声:白上虎太郎・ちび式じい)/FluidR3_GM(楽器の音色・MIT)/Klee One・Zen Maru Gothic・Shippori Mincho B1(字体・Google Fonts)。絵・動き・音楽・効果音・演出は、すべてコードで生成(Claude)。