公開日: 2026-07-28
更新しました(2026年9月26日) 挿絵を入れました

30年飛び級 基本編 第13講
こんにちは。秋元進吾です。
前回、お金は消えずに移動する、という話をしました。
今日はその矢印の中でも、人生でいちばん太い一本の話をします。
家です。
多くの人にとって、家は人生でいちばん大きな買い物です。そして、いちばん大きい買い物なのに、買い方を学校で習った人はいません。
同じ家なのに、仕組みを知っているかどうかで、支払いの総額が大きく変わります。今日は、その仕組みの話です。
金額の桁に驚いてもらうための記事ではありません。桁が大きいからこそ、仕組みで差がつく。その差の正体を、順番に見ていきます。
こんにちは。秋元進吾です。
今日はすこし背筋を伸ばして、正座するような気持ちで書いています。
というのも今日は、人生でいちばん大きな買い物・・・"家"の話だからです。
家がほしい。
マイホームがほしい。
いまの狭い部屋から、広い家に引っ越したい。
チラシの間取り図を、気づけば10分も眺めていたこと、ありませんか。
モデルハウスの、あの新しい木の匂いにくらっとしたこと、ありませんか。
物件アプリを閉じては、また開いて。
「見てるだけだから」と言いながら、ローンシミュレーションのボタンを押したこと、ありませんか。
その気持ち、痛いほどわかります。
そしてその気持ちは、なにひとつ、まちがっていません。
でも実は・・・家を買うという行為には、間取り図には載っていないことが、ものすごくたくさんくっついてきます。
35年のローン。毎年やってくる税金。上がりつづける物価。
10年ごとに壊れる家電。忘れたころに来る、外壁のメンテナンス。
だからこの記事では、先に結論をお渡ししておきます。
ひとつだけ、謎かけを置いておきますね。
同じ3,500万円の家なのに、最終的に払う合計が"約1,500万円"も変わることがあります。
なぜそんなことが起きるのか。理由は第2章でわかります。
それでは、いっしょに行きましょう。
まず最初に、これだけは言わせてください。
「家がほしい」と思うあなたは、欲張りでも、見栄っ張りでもありません。
朝、自分の庭で採れたミニトマトを食べる。
リビングで子どもが走り回っても、下の階に謝らなくていい。
犬を飼う。猫も飼う。金魚も飼う。カメも飼う。
・・・さすがに象は飼えませんが、夢はいくらでも広がります。
壁に、子どもの身長をきざむ柱がある。
好きな色の壁紙にして、好きな場所に棚をつける。
「ここは私たちの場所だ」と思える空間がある。
家がほしいという気持ちの正体は、たぶん"モノ"がほしいのではなくて、そういう"暮らし"と"安心"がほしい、ということなんですよね。
だからこの記事は、「家なんて買うな」という記事ではありません。
その逆です。
大切な夢だからこそ、夢のまわりにくっついている"現実のぜんぶ"を、先に一緒に見ておきましょう、という記事です。
現実を知ったうえで買う家は、勢いで買う家より、ずっと強い家になりますから。
さて、ここからが本題です。
多くの人が信じている、ある"常識"をひっくり返させてください。
その常識とは・・・「住宅ローンの審査に通ったんだから、買っても大丈夫」というものです。
でも実は、ちがいます。
銀行の審査が見ているのは、あなたの年収、勤続年数、他の借入れ、信用情報(クレジットカードやローンの支払い履歴の記録)。
つまり"この人に貸しても、銀行が損をしないか"という計算です。
そこには、あなたの35年分の物語は載っていません。
子どもの進学。
親の介護。
転職したくなる日。
体調を崩す日。
物価がじわじわ上がっていく毎日。
こうしたことは、審査書類のどこにも書く欄がないんです。
だから、ぎりぎりで審査に通ったとき。
それは「やったー、買える!」の合図ではなく、"ここから先は危険水域かもしれませんよ"という水面のラインだと思ってください。
冒頭の謎かけの答えです。
正体は、金利(お金を借りるレンタル料の割合)です。
たとえば3,500万円を、35年・元利均等返済(毎月の返済額がずっと同じになる返し方)・ボーナス払いなしで借りたとします。
ざっくり計算すると、こうなります。
| 金利 | 毎月の返済(目安) | 35年の総支払い(目安) |
|---|---|---|
| 年1% | 約9.9万円 | 約4,150万円 |
| 年2% | 約11.6万円 | 約4,870万円 |
| 年3% | 約13.5万円 | 約5,660万円 |
※諸費用や税金は別。金利がずっと一定と仮定した単純な概算です。

同じ3,500万円の家。
なのに、金利1%と3%では、総支払いが"約1,500万円"ちがう。
1,500万円あったら、車が何台買えるでしょう。
家族旅行に何回行けるでしょう。
家の値段とは、値札の数字ではなく「値札×金利×時間」で決まる。
これが、家を買う前に知っておいてほしい、いちばん大事な足し算・・・いえ、掛け算です。
家の値段は、氷山に似ています。
水面の上に見えているのが「物件価格」。
水面の下に、見えないお金がたっぷり隠れています。
ひとつずつ、見ていきましょう。
物件価格とは別に、買う瞬間にこんなお金がかかります。
これらを合わせた諸費用は、注文住宅の場合、物件価格の10〜12%くらいが目安とよく言われます。
3,500万円の家なら、350万円前後が"値札とは別に"必要になる計算です。
「値札の金額を用意すれば買える」ではないんですね。
家は、買ったあとも毎年お金がかかります。
代表が、固定資産税(土地や建物を持っている人に、毎年かかる税金)です。
土地と建物の評価額に対して、標準で1.4%。
市街地では、これに都市計画税(街づくりのための税金。最大0.3%)が上乗せされる地域もあります。
新築の家には数年間、建物分の税金が軽くなる措置があったり、住宅用の土地には税金がぐっと軽くなる特例があったりします。
それでも、一般的な戸建てで"年10万円前後〜十数万円"を毎年払うご家庭が多い、と言われます(地域と家の評価によってかなり差が出ます。正確な金額は、お住まいの市区町村が毎年春に送ってくる納税通知書で確定します)。
35年で考えると、税金だけで数百万円。
これも家の値段の一部です。
ほかにも、火災保険の更新料などが定期的にやってきます。
そして家は、生き物のように年をとります。
戸建てには、マンションのような"修繕積立金"の仕組みが、自動ではついてきません。
つまり、未来の自分が困らないように、自分で積み立てておく必要があるということです(このコツは第6章でお話しします)。
第1章で、庭でミニトマトを育てる夢を見ましたよね。
その夢、ぜひ叶えてほしいです。
ただ・・・庭には、間取り図に載らない"続き"があります。
草木は、生きています。
夏の雑草は、1〜2週間でひざの高さまで育ちます。
庭木の枝は、こちらの都合おかまいなしに、お隣の敷地や道路へ伸びていきます。
敷地の境界を越えてはみ出すことを越境(えっきょう)と言いますが、これがご近所トラブルの定番中の定番。
はみ出した枝の扱いが法律(民法)でわざわざ定められているくらい、昔からの"あるある"なんです。
落ち葉が雨どいに詰まる、毛虫がつく、枝が道路にはみ出して通行のじゃまになる・・・こちらに悪気はゼロでも、苦情は来るときは来ます。
庭とのつきあい方は、3つあります。
あわせて、ウッドデッキやフェンスなど外まわりの木部・鉄部は、ペンキ(塗装)の塗り替えが数年ごとに必要になります。
3-3の外壁・屋根とセットで、"外まわりのメンテ"としてひとまとめに覚えておいてください。
そして、もうひとつ。
正直にお伝えしておきたい現実があります。
庭は・・・人間だけの場所ではありません。
塀があっても、猫は自由に出入りします。
やわらかい土や砂利の一角を気に入られると、そこが"通いのトイレ"になってしまうことがあります。
朝、花壇の手入れをしようとしたら糞が・・・というのは、戸建てあるあるのひとつです。
対策には、猫が嫌がるにおいの忌避剤(きひざい→動物を近づけないための薬剤)、超音波タイプの猫よけ、土を防草シートやネットで覆うといった方法がありますが、相手も生き物。
効きめには個体差があり、正直、いたちごっこになりがちです。
ひとつだけ、大事な注意を。
どんなに腹が立っても、猫を傷つけるような対処は、動物愛護法(動物をみだりに傷つけたり苦しめたりすることを禁じる法律)に触れるおそれがあります。
あくまで"来たくなくなる環境づくり"で対抗してください。
ねずみが、どこからか敷地に入り込むこともあります。
そしてある朝、庭でその死骸に出会ってしまうことも・・・。
賃貸なら「管理会社に電話」で済んだ場面ですが、持ち家では、この敷地で起きることの最終対応者はあなたです。
ゴム手袋とビニール袋で処理し、ごみの出し方はお住まいの自治体のルールに従ってください(多くの地域では可燃ごみとして出せますが、必ず確認を)。
家の中への侵入が続くようなら、侵入口(わずかな隙間や配管まわり)をふさぐ対策や、駆除業者への依頼(数万円〜かかることもある、と言われます)も選択肢になります。
ぎょっとする話をしてしまいました。ごめんなさい。
でも、知っていれば、その日の朝に慌てずにすみます。
庭を持つとは、小さな自然をひと区画あずかるということ。
招かれざるお客さんへの対応も、その"あずかりもの"の一部なんです。
庭は、"買う"ものというより"飼う"ものに近い存在です。
手間ごとかわいがるのか、お金で解決するのか、最初から手のかからない子にするのか。
どれを選んでも正解です。決めずに放置してしまうことだけが、ご近所トラブルの入口になります。
さらに、家とは関係なく、暮らしのお金も動きます。
物価が上がれば、食費も光熱費も上がります。
子どもが育てば、教育費がかかります。
親のこと、自分の健康のこと。
そして、"もしも"のときのための貯金。生活費の半年〜1年分は現金で持っておくのが目安、とよく言われます。
| 引き出し | 中身の例 |
|---|---|
| 買うとき | 頭金、諸費用(物件価格の1割前後) |
| 毎年 | 固定資産税・都市計画税、保険、庭の手入れ |
| ときどき | 外壁・屋根、給湯器、家電、車、庭木の剪定・フェンスの塗り替え |
| 人生 | 教育費、親のこと、もしもの貯金 |

住宅ローンの返済額だけを見て「払える」と判断するのではなく、この4つの引き出しをぜんぶ開けたうえで「それでも笑って暮らせるか」を考える。
これが、家の"本当の値段"との向き合い方です。
銀行の審査では、額面年収の30〜35%くらいの返済までは通ってしまうことがあります。
でも、額面と手取りはちがいますよね。
暮らしの安全圏としてよく言われる目安は、"手取り"月収の20〜25%以内。
手取りが30万円なら、毎月の返済は6万〜7.5万円くらいまで、というイメージです。
「借りられる額」は銀行が決めます。
「返しても笑える額」は、あなたにしか決められません。
どちらが正解、というものではありません。
性格のちがいです。
ただし大事なのは、変動金利を選ぶなら「金利が上がっても耐えられる家計かどうか」を先に確かめておくこと。
たとえば「いまより1%上がったら、毎月いくら増える?」を、契約前にシミュレーションしておくことです。
正直に、聞いた話と公表情報をそのままお伝えしますね。
長いあいだ「超低金利」と言われてきた日本ですが、日本銀行は段階的に利上げを進め、2026年6月には政策金利(日銀が決める、世の中の金利の基準になる金利)をおよそ1%へ引き上げました。約31年ぶりの水準と報じられています。
これを受けて、多くの銀行が2026年春に変動金利の基準を引き上げました。
2026年前半の水準感としては、変動金利はおおむね年1%前後、フラット35(住宅金融支援機構という公的機関と民間銀行が提携した、全期間固定型のローン)などの全期間固定は年3%前後、と各社の公表や比較サイトで紹介されています。
ただし、金利は毎月動きます。
この記事の数字は"時代の空気"としてつかんでいただき、契約前には必ず、そのときの最新の金利をご自身で確かめてください(確認先は記事の最後にまとめてあります)。
ひとつ言えるのは、"金利がずっとゼロみたいな時代"を前提にした資金計画は、もう組めないということです。
変動金利を検討するなら、この3つの言葉だけは知っておいてください。
一見、「返済額が急に上がらないなんて優しい!」と思いますよね。
でも実は、これは"痛みの先送り"でもあります。
払いきれなかった利息は消えるわけではなく、あとでちゃんと請求されます。
しかも、この5年ルール・125%ルール自体を採用していない銀行もあります。
「変動金利」とひとことで言っても、中身は銀行ごとにちがう。
契約前に、ご自身のローンにこのルールがあるのか、必ず確認してください。
住宅ローンには多くの場合、団信(団体信用生命保険:ローンを借りた人に万一のことがあったとき、残りのローンが保険で完済されて、家族に家が残る仕組み)がセットになっています。
「自分にもしものことがあったら、家族がローンに苦しむのでは」という不安には、この団信がひとつの答えになります。
ただし、健康状態によっては団信に入れないことがあります。
その場合も、引受条件をゆるめたワイド団信や、団信への加入が任意になっているローン(フラット35など)といった選択肢があります。
持病がある方も、そこであきらめず、選択肢を並べてみてください。
ここで、お金の話のようでいて、いちばん大事な"体"の話をさせてください。
「ローンがあるから、休めない」。
そう言って無理を重ねて、体をぼろぼろにしてしまったら・・・それは本末転倒です。
家は、家族と自分が笑って暮らすための箱。
箱を守るために健康を失っては、順番が逆になってしまいます。
それでも、人生には病気やけががあります。
入院や休職で収入が減っても、ローンの引き落としと固定資産税は待ってくれません。
足りない分を別の借金で埋め始めると、苦しい悪循環に入ってしまうこともあります。
だから、備えの選択肢を知っておいてください。
ただし、正直な話をひとつ。
保険は、入れば入るほど"保険料"という毎月の固定費が増えます。
守りを固めるほど家計は重くなる。このジレンマからは、誰も逃げられません。
だから、順番はこうです。
まず公的保障で何がもらえるかを確認し、足りない分だけを民間の保険で埋める。
そして何より、いちばんの保険は"体を壊さずに返せる返済計画"そのものだということ。
4-1の「返しても笑える額」は、お金の話であると同時に、あなたの体を守る話でもあるんです。
国の制度として、住宅ローン控除(年末時点のローン残高の0.7%を、最長13年間、所得税などから差し引いてくれる制度)があります。
2026年の制度改正で、対象になる入居期限が2030年末まで延長され、床面積の要件が40平方メートル以上に緩和されました(ただし合計所得金額1,000万円以下の場合。子育て世帯などの借入限度額の上乗せを使う場合は50平方メートル以上が必要です)。
控除の上限額は、家の省エネ性能や、子育て世帯・若者夫婦世帯かどうかで変わる仕組みになっています。
数百万円規模の支援になりうる、ありがたい制度です。
ただし、注意点がふたつ。
ひとつ。制度の中身は年度ごとに変わるので、必ず国税庁・国土交通省の最新情報で確認すること。
ふたつ。"戻ってくる前提"で、ぎりぎりの予算を組まないこと。控除はあくまでご褒美であって、命綱にしてはいけません。
「早く返してラクになりたい」と、繰り上げ返済(毎月の返済とは別に、まとまった額を前倒しで返すこと)をがんばりすぎる方がいます。
気持ちはとてもわかります。
でも、貯金をぜんぶ返済に突っ込んでしまうと、"もしも"のときに現金がない家計になってしまいます。
ローンの利息を減らすことと、手元に現金というお守りを残すこと。
この2つは、綱引きの関係です。
生活費の半年〜1年分の現金は残したうえで、余った分で考える。この順番をおすすめします。
さあ、ここからは楽しい話です。
何もない更地に、あなたの家が建って、鍵を受け取るまで。
全体を12のステップに分けて、順番に歩いていきましょう。

先に全体の時間感覚をお伝えすると、土地探しからスタートして入居まで、1年〜1年半くらいかかるのが一般的な目安と言われます。
思ったより長い、と感じましたか?
そうなんです。だからこそ、焦らなくていいんです。
いきなり土地探しから始めたくなりますが、順番は"お金→土地"です。
第3章の「4つの引き出し」と、第4章の「手取りの20〜25%」を思い出しながら、"うちの上限額"を自分たちで決めます。
銀行に決めてもらうのではなく、です。
家族で、ほしい条件を出し合います。
コツは、3段階に仕分けすることです。
ぜんぶを「絶対」にすると、予算がいくらあっても足りません。
この仕分けの会話そのものが、家族の価値観をそろえる大事な時間になります。
土地には、見た目ではわからないルールと事情がたくさんあります。
安い土地には、安い理由があります。
高い土地には、高い理由があります。
理由ごと納得して選べたら、それがあなたにとっての正解の土地です。
買いたい土地が決まったら、買付証明書(この土地を買いたいです、という意思表示の書面)を出し、売買契約へ。
契約時には手付金(契約の証としていったん支払うお金。価格の5〜10%程度が目安)が必要になります。
家づくりの相棒には、大きく3タイプあります。
どれが上、ではなく、これも性格のちがいです。
複数社から相見積もりを取り、完成見学会だけでなく、できれば構造見学会(壁の中がまだ見える、建築途中の見学会)にも足を運んでみてください。
そして最後の決め手は、意外と「担当者と20年つきあえそうか」だったりします。
土地が決まると、敷地調査(土地の正確な寸法・高低差・周辺状況を測る調査)と、地盤調査(その地面が建物の重さに耐えられるかを調べる調査)が行われます。
ここで出てくるかもしれないのが、地盤改良(弱い地盤を、杭や固化材で補強する工事)です。
必要なければ0円。
必要になると、数十万円〜100万円を超えることもあります。
これは"やってみないとわからない費用"の代表です。
最初から予備費として100万円くらいを資金計画に入れておくと、心臓に優しい家づくりになります。
ここが家づくりのいちばん楽しいところ。
そして、いちばん予算が"育ってしまう"ところでもあります。
見積りは、3層構造になっていることを知っておいてください。
「本体価格1,800万円!」の広告を見て1,800万円で住めるわけではない、ということです。
総額でいくらか。必ず"総額"で比べてください。
そして打合せでは、キッチンのグレードアップ、造作棚、床材の変更・・・と、10万円単位の「せっかくだから」が積み重なっていきます。
おすすめは、最初に"せっかくだから予算"の上限を決めておくこと。
上限の中で選ぶオプションは、罪悪感ゼロで楽しめます。
間取りと総額が固まったら、いよいよ契約とお金の手続きです。
流れはこうなります。
ここで、注文住宅ならではの大事な言葉をひとつ。
つなぎ融資(家が完成して住宅ローンが実行される"前"に必要になるお金・・・土地代、着工金、中間金などを、一時的に立て替えて借りる短期のローン)です。
住宅ローンのお金が実際に振り込まれるのは、原則、家が完成して引き渡されるとき。
でも土地代や工事の前払い金は、完成前に払う必要があります。
その時間差を埋めるのが、つなぎ融資です。
つなぎ融資には、それ自体の金利と手数料がかかります。
「そんな費用、聞いてないよ!」とならないよう、資金計画の段階で建築会社と銀行に確認しておいてください。
契約が終わると、建築確認申請(その設計図が建築基準法などのルールに合っているかを、役所や検査機関がチェックする手続き)に進みます。
チェックに合格すると、確認済証という書類が交付されます。
これがないと、工事を始められません。
家は、法律のチェックを受けてから建ち始めるんですね。
なお、確認済証と、あとで出てくる検査済証は、住宅ローンや将来の売却でも必要になる大切な書類です。
一生保管、と覚えておいてください。
いよいよ着工です。
工事の前に行われることが多いのが、地鎮祭(じちんさい→その土地の神様に、工事の安全と家の繁栄を祈る儀式)です。
費用は数万円程度が目安。
やるかやらないかは自由で、最近はやらない選択をする方も増えています。
このタイミングで、ご近所へのあいさつ回りもしておきましょう。
工事中は騒音やトラックの出入りでご迷惑をかけます。
最初のひとことがあるだけで、その後のご近所づきあいがまるで変わります。ここは、家の性能と同じくらい大事な"住み心地"の工事です。
基礎工事では、鉄筋を組んでコンクリートを流し込みます。
このとき配筋検査(コンクリートを流す前に、鉄筋が図面どおり正しく組まれているかを確認する検査)という第三者のチェックが入ります。
家の足腰は、見えなくなる前にプロの目で確かめられている、というわけです。
基礎ができると、上棟(じょうとう→柱や梁など、建物の骨組みを一気に組み上げること。棟上げとも呼ばれます)を迎えます。
朝は基礎だけだった土地に、夕方には家のかたちが立っている。
たった1〜2日の出来事です。
多くの施主さんが「この日がいちばん感動した」と言う、家づくりのハイライトです。
昔ながらの上棟式(じょうとうしき→職人さんをねぎらうお祝い)は、いまは簡略化したり、しなかったりが主流ですが、飲み物の差し入れひとつでも、現場の空気はあたたかくなります。
このあと、屋根、外壁、断熱材、窓が入り、中間検査(工事の途中段階で、法律や図面に合っているかを確認する検査)を経て、内装と設備の工事へ進みます。
ひとつ、おすすめがあります。
工事中、ときどき現場に足を運んで、写真を撮っておいてください。
壁の中の断熱材や配線は、完成したら二度と見えません。
記録になるのはもちろん、「見に来る施主さんの家」は、現場の緊張感もすこし変わると言われます。
なにより・・・自分の家が育っていく様子は、単純に、一生モノの思い出になります。
工事が終わると、施主検査(引き渡しの前に、施主=あなた自身が仕上がりをチェックする機会。内覧会とも呼ばれます)があります。
ここは遠慮する場面ではありません。
気になったところに、付箋をぺたぺた貼っていきましょう。
指摘した箇所は是正(手直し)してもらい、直ったことを確認してから引き渡しへ進みます。
「入居後に言えばいいか」より、「鍵をもらう前に言う」。これが鉄則です。
いよいよ最終ステップです。
残金を決済し、鍵と書類の束を受け取ります。
このとき、登記(土地や建物の持ち主などの情報を、法務局の公の帳簿に記録すること)の手続きが行われます。
火災保険は、引き渡しの日から効くように手配します。
鍵をもらった瞬間から、その家の"もしも"はあなたの責任になるからです。
あとは引っ越しをして、住民票を移し、運転免許証や銀行の住所変更をして・・・
そして忘れてはいけないのが、入居した翌年の確定申告です。住宅ローン控除の1年目は、会社員の方でも自分で確定申告をする必要があります(2年目からは年末調整でOKになります)。
おつかれさまでした。
更地だった場所に、あなたの家が建ちました。
・・・でも実は、家づくりの物語には"第二章"があるんです。
家は、買って終わりではありません。
むしろ、暮らしという本編がここから始まります。
第二章を穏やかに過ごすコツを、4つだけ。
入居の翌年から毎年春、市区町村から固定資産税の納税通知書が届きます。
金額を初めて見て「えっ」と声が出る方、けっこう多いです。
でも、あなたはもう第3章で知っています。
「年10万円前後〜十数万円くらいの税金が毎年来る」と、最初から家計に組み込んでおけば、あの封筒はただの事務連絡になります。
知っているだけで、驚きが消える。情報とは、そういうお守りです。
マンションとちがい、戸建てには修繕積立金の仕組みが自動ではありません。
だから、自分でつくります。
やり方はシンプル。
毎月1万〜2万円を、生活費とは別の口座に移すだけ。
月1.5万円なら、10年で180万円。
外壁の塗り替えと給湯器の交換が来るころ、その口座があなたの家を守ってくれます。
未来の修繕費とは、"毎月の家賃の続き"を自分に払うようなものだと思ってください。
おすすめは、固定資産税の通知が届く春。
年に1回、この3つを点検する日を決めてしまいましょう。
大ごとになる前の小さな発見が、いちばんの節約になります。
ここまで読んで、「やることが多すぎる・・・」と感じたかもしれません。
だいじょうぶです。ぜんぶ、いっぺんにやらなくていいんです。
まずは今月、"修繕積立用の口座をひとつ作る"。
それだけで、あなたの家の第二章は、もう守られ始めています。
さて、長い旅もいよいよ最後の章です。
世の中には「賃貸か、持ち家か」という永遠の論争があります。
でも私は、この論争に唯一の正解はないと思っています。
正解は、暮らしの数だけある。あなたの家の正解を決められるのは、評論家でも銀行でも親戚のおじさんでもなく、あなた自身です。
そのための道具として、"12の問い"を置いていきます。
お金のことだけでなく、庭の手間や、あなた自身の体のことまで含めた問いです。
急いで答えなくて大丈夫。ひとつずつ、ご自身の言葉で答えてみてください。
ぜんぶに「はい」と言える必要はありません。
ただ、答えに詰まった問いこそが、あなたが契約の前に向き合うべき宿題です。
12の問いと向き合ったあと、あなたの結論はきっと、次の3つのどれかになります。
"買う"と決めたあなたへ。
おめでとうございます。現実をぜんぶ見たうえでの「買う」は、勢いの「買う」とはまったく強度がちがいます。あなたの家づくりが、いい職人さんと、いい担当者さんに恵まれますように。この記事の12ステップが、道中の地図になれたらうれしいです。
"まだ待つ"と決めたあなたへ。
それは後退ではありません。頭金を育てる、情報を育てる、家族の未来像を育てる・・・待つとは、育てる時間のことです。1年後のあなたは、今日のあなたより確実に強い買い手になっています。
"買わない"と決めたあなたへ。
それも、堂々たる正解です。身軽さと柔軟さは、持ち家にはない立派な資産です。浮いたお金を貯蓄や投資や経験にまわす人生設計は、なにも引け目を感じるものではありません。
そして・・・いまは事情があって"選べない"あなたへ。
転勤の多いお仕事、住まいが決まっているお勤め、資金の事情、ご家族の事情。人生には、選びたくても選べない時期があります。
どうか忘れないでください。暮らしの幸せは、家を持っているかどうかでは決まりません。今日の部屋であたたかいごはんを食べて笑えるなら、それはもう立派な"わが家"です。この記事は、いつかあなたに選べる日が来たとき、また開いてもらえたら十分です。
ここまで読んでくださって、ほんとうにありがとうございます。
家を買うことは、間取りを選ぶことではなくて、これからの35年の暮らしをまるごとデザインすることなんだと・・・書きながら、あらためて感じました。
この記事は、あなたの背中を押す係ではありません。
あなたの隣で、いっしょに地図を広げる係です。
急がなくていい。
迷っていい。
あなたと、あなたの大切な人が、"どこに住んでいても"笑って暮らせますように。
(つまらなかったら、そっとページを閉じてくださいね。それも大歓迎です。また会える日を楽しみにしています)
金利や税制は変わり続けます。契約・申請の前には、必ず以下の一次情報をご確認ください。
※本記事の金額・割合は、2026年7月時点で一般に公表・紹介されている目安をもとにした概算です。個別の条件で大きく変わります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の金融商品や不動産の勧誘ではありません。最終的なご判断は、ご自身の状況に合わせて、必要に応じて専門家にもご相談のうえで行ってください。
更新のきろく 2026年8月18日 ファクトチェックを行い、住宅ローン控除の床面積の要件について「40平方メートル以上に緩和」の条件(合計所得金額1,000万円以下の場合。子育て世帯の上乗せを使う場合は50平方メートル以上)を補いました。金額の検算(返済額・金利差)や住宅ローン控除の率・期間、固定資産税、日銀の政策金利、傷病手当金、接道義務など他の記述は、独立に検証してすべて一致を確認しています。
前回。社会の血流の、1枚の地図。
→ 連載 第12回 その“増やす話”は、誰のお金を、誰に回しているのか
家づくりを、別の角度から書いた記事もあります。
家とまったく同じ組み立て方を、車で書いたものもあります。買えるかどうかは本体価格では決まらない、という話と、月々の安さは安さではない、という話です。
次回は、第14講です。世の中の仕事は、どう分かれているのか。
#ホットだ脳 30年飛び級 基本編 第13講