車の予算というと、多くの人は「本体でいくらまで」と考えます。ここが最初のつまずきです。 車は、買ったあとも毎年お金がかかり続けます。 1年に車全体でいくら使えるのかから始めると、見える景色が変わります。 この講は、その計算のしかたを渡す回です。
| いつ | 何にかかるか | 特徴 |
|---|---|---|
| 買うとき | 車両価格、税金や保険などの法定費用、販売店の手数料、オプション | いちばん目に見えやすい。ただしこれは全体の一部 |
| 持っている間 | 税金、保険、車検、駐車場、燃料、消耗品、突発の修理 | 毎年かかり続ける。ここを見落とすと苦しくなる |
| 手放すとき | 下取りや買取で戻ってくるお金(マイナスの費用) | ここを含めて初めて、本当の負担額が出る |
3つを合わせると、こうなります。
(買ったときに払った額)-(手放したときに戻った額)+(持っている間に払った額)= その車にかかった総額
この式を持っている人は、車両価格だけで判断しません。 たとえば同じ200万円の車でも、数年後に100万円で売れる車と50万円にしかならない車では、実質の負担が50万円ちがいます。 第6講の図解⑬で扱った話が、ここにつながります。
持っている間にかかるお金を、もれなく9つに分けます。ここが今日の中心です。
| 項目 | いつ払うか | 金額を左右するもの |
|---|---|---|
| 1. 自動車税 | 毎年(春) | 排気量。軽自動車は定額でいちばん安い |
| 2. 重量税 | 車検のとき | 車の重さ。13年を超えると上がる仕組みがある |
| 3. 自賠責保険 | 車検のとき | 加入が義務の保険。車種の区分で決まる |
| 4. 任意保険 | 毎年 | 年齢、等級、車種の区分、補償の内容。人によって差が大きい |
| 5. 車検・点検 | 2年ごと(新車の初回は3年後) | どこで受けるか、交換する部品の量 |
| 6. 駐車場代 | 毎月 | 住んでいる場所。地域差がいちばん大きい項目 |
| 7. 燃料・電気代 | そのつど | 走る距離、燃費、動かし方(第2講) |
| 8. 消耗品 | 1〜数年ごと | タイヤ、オイル、バッテリー、ワイパーなど |
| 9. 突発の修理 | 読めない | 年式、走行距離、運。ここを見込んでいない人が多い |
金額の具体例(軽・コンパクト・ミニバン・輸入車の比較)は、第17講「維持費の全体像」で扱います。 この講では項目をもれなく数えることに集中してください。金額より、抜けをなくすほうが大事です。
車両価格が安くても、維持費が高い車があります。逆に、車両価格が高くても維持費が安く、 手放すときに高く売れる車もあります。年間コストで比べて初めて、どちらが安いかが分かります。 候補が2台に絞れたら、この計算を2回やってください。答えが逆転することが、実際にあります。
販売店で「月々2万円で乗れます」と言われることがあります。この言い方には、注意すべき点が3つあります。
月々の金額は、比べるための数字としてはとても弱いものです。 比べるなら、総支払額と、この講で出した年間コストです。 払い方の仕組みそのものは、第15講「払い方で総額が変わる」で正面から扱います。
いくらまで出していいか。これは家庭ごとに事情がちがうので、一律の答えはありません。 ただ、考える順番はあります。
多くの人が思っていたより、車両価格に回せる金額は小さくなります。 それはがっかりする話ではなく、現実に合った予算が見えたということです。 逆の順番(先に車を決めてから資金を考える)でやると、生活のほうを削ることになります。 家のローンでも同じことが起きます。順番を守ってください。
金額の具体的な目安をお伝えすることはできますが、それが正しいかどうかは家計の状況によります。 大きな借り入れを検討している場合は、金融機関や専門家に相談してください。ここでは考え方だけをお渡ししています。
9項目のうち、9番目の「突発の修理」だけは予測できません。だから備え方で対応します。
いま車を持っている人は、この1年で車に使ったお金を書き出してみてください。 通帳やクレジットカードの明細を見れば、だいたい分かります。 思っていたより多い、と感じる人がほとんどです。 その数字が、次の車を選ぶときのいちばん確かな出発点になります。 まだ持っていない人は、身近な人に「1年でどのくらいかかっている?」と聞いてみてください。