同じ車を、同じ値段で買っても、払い方によって最終的に払う金額は変わります。 しかも、月々の支払いがいちばん安く見える方法が、いちばん総額が大きいことがあります。 この講では、5つの払い方の仕組みを、損得ではなく構造として説明します。 仕組みが分かれば、自分にとって合うものを自分で選べます。
| 払い方 | 仕組み | ひとことで |
|---|---|---|
| 現金 | 全額を一度に払う | 総額はいちばん小さい。手元の資金が減る |
| 銀行などの マイカーローン | 金融機関から借りて、車の代金を払う | 金利は低めの傾向。審査に時間がかかることがある |
| 販売店経由の クレジット | 販売店が扱う信販会社の分割払い | 手続きが早い。金利は商品による |
| 残価設定 クレジット | 数年後の下取り想定額を差し引いて、残りを分割で払う | 月々は安く見える。構造の理解が必須 |
| リース・ サブスク | 買わずに、月々払って使う | 税金や車検が含まれることが多い。所有はしない |
難しい計算は要りません。ひとつだけ覚えてください。
月々の支払額 × 支払回数 + 頭金 = 総支払額
この総支払額と、現金で買った場合の金額の差が、借りるために払った費用です。
見積書や契約書には、必ず総支払額が書かれています。まずそこを見てください。 そして、車両価格との差を計算します。この差額が、その払い方のコストです。
金利は「実質年率」という形で示されます。同じ%でも、借りる期間が長いほど支払う総額は増えます。 月々を安くするために期間を延ばすと、総額は増える。ここは避けられない関係です。
金利の数字そのものは、時期と金融機関で変わります。だからこの講では具体的な%を書きません。 大事なのは総支払額を自分で計算する習慣のほうです。
残価設定クレジット(残クレ)は、いま多くの人が使っている方法です。仕組みを正確に理解しておきましょう。
| 期間終了時の選択肢 | 中身 |
|---|---|
| 1. 返す | 車を返却して終わり。ただし条件を満たしている必要があります |
| 2. 乗り換える | 同じ販売店で次の車に乗り換える。多くの店が想定している形です |
| 3. 買い取る | 残価にあたる金額を払って、自分のものにする。再度の分割にできることも |
残クレは「数年後に手放すこと」を前提にした払い方です。 だから、数年ごとに乗り換える人には合理的な仕組みです。 逆に、1台を10年乗りたい人にとっては、そもそも設計思想が合っていません。 良い悪いではなく、前提が自分と合っているかを見てください。
仕組み自体は悪いものではありません。ただ、知らずに使うと困ることが4つあります。
| 注意点 | 中身 |
|---|---|
| 走行距離の上限 | 契約で上限が決められています。超えると精算が必要になることがあります。年間走行距離を先に出しておくこと(第7講) |
| 車の状態 | 傷やへこみ、内装の汚れがあると、返却時に費用が発生することがあります |
| 残価の扱い | あらかじめ決めた残価が保証されているものと、そうでないものがあります。ここは契約書で必ず確認 |
| 金利のかかり方 | 差し引いた残価の部分にも金利がかかる形が一般的です。月々が安くても、総額が小さいとは限りません |
契約する前に、この3つを聞いてください。
最初にまとめて払う金額です。頭金を入れると、借りる金額が減るので総支払額も減ります。 ただし手元の資金は減ります。第8講で確認した「突発の出費への備え」を削ってまで入れるのは避けてください。 車を買った直後に修理費が払えない、という事態がいちばん困ります。
年に2回、まとまった金額を追加で払う方法です。月々の支払いは小さくなります。 ただし、ボーナスは約束されたものではありません。 金額が変わる可能性、支給されない可能性を考えたうえで組んでください。 見積書にボーナス払いが入っていることに気づかず契約する人が、実際にいます。
ローンの審査に通ると、「認められた」という気持ちになります。でも、ここで立ち止まってほしいのです。
審査は、貸す側が「返してもらえそうか」を判断したものであって、 あなたの生活が無理なく回るかを判断したものではありません。 通ったからといって、その金額が自分にとって適切とは限りません。
住宅ローンでも同じことが言われます。ぎりぎりで審査が通ったとき、素直に喜ぶには早い。 判断すべきは「借りられるか」ではなく「返しながら、笑って暮らせるか」です。 第8講で作った年間コストの表に、ローンの支払いを入れて確かめてください。 それが自分の生活の中で無理のない金額かどうか。決めるのは審査ではなく、あなたです。
身近な人に「車、どうやって払った?」と聞いてみてください。 現金か、ローンか、残クレか。そして、その選択に満足しているか。 経験者の話は、パンフレットより正直です。 いくつか聞いていくと、自分に合いそうな形が見えてきます。