更新しました(2026年9月26日) 挿絵を入れました
こんにちは。秋元進吾です。このシリーズも今日で最終回。最後は、食卓の話です。
久しぶりに実家へ帰って、冷蔵庫を開けたとき。買い置きの菓子パンと、日付の過ぎたお惣菜。前に帰ったときと、中身がほとんど変わっていない。食卓に並ぶのは、いつもの煮物とごはんが少し。「ちゃんと食べてる?」と聞くと、「食べてるよ。もう、そんなに食べられないのよ」と笑う。

・・・その「食べられないのよ」を、年のせいだと片づけていいのかな。
この記事は、そんなふうにモヤッとした気持ちを抱えたご家族のために書きました。専門家ぶるつもりはありません。私自身、調べるまで知らないことばかりでした。
訪問栄養指導とは、通院が難しい方や食事に不安のある方のご自宅へ管理栄養士が出向き、栄養の状態を確かめて食事の相談に乗るサービスです。正式には訪問栄養食事指導と呼ばれます。
いちばんの特徴は、病院の相談室ではなく、その家の台所で話ができることです。「たんぱく質を増やしましょう」と言われても、家のガス台はひと口かもしれない。スーパーまで歩いて15分かもしれない。歯の具合で固いものを避けているのかもしれない。そういう暮らしの条件をぜんぶ見たうえで、この家で続けられる形に落とし込んでいく仕事です。
なお、栄養士と管理栄養士は役割が少し違います。栄養士は都道府県知事の免許で、主に健康な方への指導や給食の管理を担います。管理栄養士は国家試験に合格して受ける厚生労働大臣の免許で、療養のための栄養指導まで担い、保険を使った栄養食事指導を担えるのはこちらとされています〔要確認〕。持病の食事を相談したいときは、ここを最初に確かめておくと安心です。
訪問栄養指導には、公的な保険を使う道と、自費でお願いする道の二本立てがあります。
保険のほうで先に押さえておきたいのは、家族が事業者へ電話して始まるものではない、という点です。かかりつけ医など、その方を診ている医師の指示があってはじめて動き出します。
保険の種類は状況で分かれます〔要確認〕。要介護・要支援の認定を受けている方は介護保険が優先され、居宅療養管理指導という名前になります。認定を受けていない方などは、医療保険の在宅患者訪問栄養食事指導料というかたちです。どちらも月2回程度が上限で、1回30分以上の指導が条件とされています。
窓口でのお支払いは、その方の自己負担割合に応じた分だけです。目安の幅としては、1割負担の方でおおむね1回400円台から600円台、3割負担の方で1,200円台から1,600円台あたり〔要確認〕。別に交通費がかかる場合があります。しかも介護保険の居宅療養管理指導は、ケアプランの区分支給限度額の枠の外にあるとされています〔要確認〕。デイサービスやヘルパーの回数を削って入れる、という取り合いになりにくい、ということです。
退院した直後に、入院していた病院の管理栄養士が家を訪ねる仕組みもあります〔要確認〕。病院食から家のごはんへ切り替わる、いちばん揺れる時期です。退院前の話し合いの場で「家での食事が不安です」と言っておくと、話が早いことがあります。
医師の指示が取りにくいとき、条件に当てはまらないときは、自費の栄養相談という道があります。料金の幅は大きいのですが、目安としてはこのあたりです〔要確認〕。
自費のいいところは、保険の枠ではやりにくいことを頼める点です。冷蔵庫の中身から今週の献立を組む。一緒にスーパーへ行って選び方を教わる。家族ぶんの食事も含めて相談する。こういう暮らしごとの相談は、自費のほうが動きやすいようです。

入口は4つあります。
かかりつけ医。保険を使うならここが本丸です。「食べる量が減っている」「体重が落ちてきた」と具体的に伝えてください。
ケアマネジャー(介護支援専門員。介護の計画を立てる専門職)。すでに介護保険を使っているなら、まずここへ。医師とも事業所ともつながっているので、段取りをまとめて引き受けてもらえます。まだ認定を受けていない段階なら、地域包括支援センター(高齢者の総合相談窓口)へ。どちらも相談は無料のことがほとんどです。
そして、あまり知られていない4つめ。都道府県の栄養士会が運営する栄養ケア・ステーションです。地域の食と栄養の相談窓口で、一般の方からの相談も受け付けています。日本栄養士会のサイトから全国47都道府県の窓口を探せます。「近くに管理栄養士っているのかな」と思ったら、ここから当たってみるのが早道です。
相談する前に、家族が気づけることもあります。
いちばん確かなのは体重です。数字はうそをつきません。目安としては、6か月で2kgから3kgほど減っている、あるいは1か月から6か月で体重の3%以上が減っている場合は、注意して見たほうがよいとされています〔要確認〕。
体重計に乗るのを嫌がるなら、ふくらはぎを両手の親指と人さし指で作った輪で囲んでみる方法もあります。輪のほうが大きくて隙間ができるようなら、筋肉が落ちているサインのひとつと言われます。指輪っかテストと呼ばれる、簡単な目安です。

ほかに、暮らしのなかで見えるところを並べておきます。
不安をあおるつもりはありません。ただ、半年で体重の5%を超えて減っているようなときは、食事の工夫だけで様子を見ずに、まずはかかりつけ医に相談してください〔要確認〕。体重が落ちる原因は食事の量だけではなく、口の中の具合や薬の影響、別の理由が隠れていることもあります。そこを見分けるのは医師の仕事です。
実際に管理栄養士が来ると、まず体の状態を確かめます。体重の推移、食べている量、飲み込みの具合、持病や薬のこと。そして、台所と冷蔵庫を見せてもらいます。
ここが訪問ならではのところです。「なぜ食べられていないのか」の答えは、たいてい台所にあります。買い物に行けないから食材がない。ガス台の前に立ち続けるのがつらい。缶詰を開ける握力がない。ひとりだと作る気が起きない。原因が違えば、打つ手も変わります。

そのうえで、献立の中身だけでなく、買い物と調理の段取りごと組み替える提案をしてくれます。市販品や冷凍食品を使う。まとめて作って小分けにする。理想の献立ではなく、この家で明日から続く形に寄せてくれる人が、良い管理栄養士だと私は思っています。
配食サービスとの併用も、よく使われる手です。自治体によっては、高齢の方向けに見守りを兼ねた配食があり、管理栄養士が献立を監修していたり、塩分やカロリーを調整した食事に対応していたりします〔内容・費用・対象は自治体ごとに違うので要確認〕。昼は配食、朝と夜は家で、という組み方も一緒に設計できます。1日3食すべてを家族が背負う必要はありません。
訪問栄養指導は、毎日ごはんを作っている家族の負担を減らす仕組みでもあります。「これだけ押さえれば、あとは市販品でいいです」と言ってもらえるだけで、肩の荷が下りることがあります。作る側が倒れてしまっては、続かないのですから。
家に上がって、冷蔵庫まで見せる相手です。次の5つを、電話や初回のやりとりで見てください。
5つ全部が満点でなくても大丈夫です。でも、料金があいまいで・特定の食品を強く勧めてきて・「これで病気が治ります」と断定する。この3つが揃ったら、いったん離れて別を当たっていい合図だと思ってください。
3番だけ補足を。人が来るとなると、つい冷蔵庫を整えたくなります。でも、いつものままを見てもらったほうが、はるかに役に立つ提案が返ってきます。管理栄養士さんは、たくさんの家の冷蔵庫を見てきた人ですから。
6回にわたってお届けしてきたこのシリーズも、これで最後です。家事、片づけ、生前整理、見守り、子育て、そして食事。並べてみて思うのは、どれも、頼んだからといって家族の関係が終わるわけではない、ということです。むしろ、手が足りない部分を外に渡したぶんだけ、家族は家族のことをできるようになる。ごはんを作る役から少し降りたら、一緒に食べる役に戻れるかもしれない。
「もう、そんなに食べられないのよ」も、本心とはかぎりません。作るのがしんどい、買い物に行けない、ひとりで食べてもおいしくない。そのぜんぶが、あの一言に押し込められているのかもしれない。家に来て、台所を見て、一緒に考えてくれる専門職がいる。それを知っているだけで、家族の気持ちも少し軽くなります。
今日の1アクションは、これだけです。
次に実家へ帰ったとき、体重計に乗ってもらって、日付と数字をメモしてきてください。それだけで十分。思ったより減っていたら、そのメモを持ってかかりつけ医のところへ行けばいい。話は、そこから始まります。
長いシリーズにお付き合いいただき、ありがとうございました。それでは、また。あなたのご家族の食卓に、おだやかな時間が戻りますように。
【免責事項】
本記事は、訪問栄養指導の利用を検討するご家族・ご本人が判断材料を得るための、一般的な情報提供を目的としています。記載内容は執筆時点の情報に基づくもので、料金・自己負担・医療保険や介護保険の取り扱い・自治体の助成は、地域や時期、制度改定、ご本人の条件によって変わります。本記事は特定の食事法・食品・事業者の効果を保証または推奨するものではなく、診断や治療にかかわる助言を行うものでもありません。体重の減少や食欲の低下、飲み込みにくさなど気になる変化があるときは、自己判断で対処せず、必ずかかりつけ医にご相談ください。栄養や食事の具体的な内容は医師および管理栄養士の判断を軸にお決めいただき、実際のご利用にあたっては主治医・担当ケアマネジャー・お住まいの自治体・各事業者に必ずご確認ください。
【出典】
著者:秋元進吾