更新しました(2026年9月26日) 挿絵を入れました
夜の八時すぎ。実家に電話をかける。三コール、五コール、そのまま留守番電話に切り替わる。

お風呂かな、と思って十分後にかけ直す。やっぱり出ない。テレビの音で聞こえていないだけ、たぶんそう。そう言い聞かせながら、頭のすみでは別のことを考えています。最後に顔を見たのはいつだったか。実家まで車で何時間かかるか。
三十分後、「ごめんごめん、洗い物してた」と折り返しがきて、力が抜ける。よかった。よかったんですが、この落ち着かない三十分が、月に何度もやってきます。
・・・その繰り返しを、そのままにしていていいのかな。この記事は、そんなふうにモヤッとした気持ちを抱えたご家族のために書きました。頼む側の予習ノートとして読んでいただけたらうれしいです。専門家ぶるつもりはありません。私自身、調べるまで知らないことばかりでした。
一人暮らしの高齢者の安否や暮らしぶりを定期的に確かめて、離れて暮らすご家族に知らせる仕組みです。多くは介護保険の外にある自費のサービスですが、市区町村が地域の事業として無料や低額で行うものもあります〔自治体ごとに違うため要確認〕。
確かめ方で、ざっくり4つに分かれます。
| タイプ | 何で確かめるか | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 訪問型 | 人が家に来て、顔を見て話す | 会話が減ってきた。様子を報告してほしい |
| センサー型 | ドアの開閉、電気やガスの使用、人の動き | 部屋を見られるのは嫌。機械の操作も苦手 |
| カメラ型 | 室内に置いたカメラの映像 | 転倒が心配。本人が納得している |
| 電話・アプリ型 | 自動音声の電話への応答、スマホの使用状況 | まだ元気。まずは費用を抑えたい |

訪問型は、情報が濃いのが強みです。郵便局が全国一律で行うみまもりサービスは、月1回30分の訪問で写真つきの報告が家族に届く形。個人の事業者なら、週1回まで頻度を上げやすいという違いがあります。センサー型は生活の痕跡だけを拾うので、姿を見せずに済み、ご本人の抵抗がいちばん少ないタイプです。カメラ型は情報量が最大で、そのぶん抵抗も最大。電話・アプリ型は、毎日決まった時間に自動音声がかかってきて、ご本人のボタン操作が家族にメールで届きます。
静かな事実として、警察庁が2024年分を初めて集計したところ、自宅で亡くなった一人暮らしの65歳以上の方は約5万8千人、発見までに1か月以上かかった例も一定数あったと報じられています。数字で怖がらせたいわけではありません。ただ、こうした集計が始まったこと自体が、家族の暮らし方が変わった証拠なのだと思っています。
金額に絶対の正解はありません。タイプ、機器を買うか借りるか、駆けつけを付けるかで変わります。あくまで「目安の幅」として、こんな水準と言われています。
見落としやすいのが、駆けつけの実費です。実際に人が向かうときは、月額とは別に1回5,000〜8,000円ほどかかる設定が一般的とされています〔要確認〕。
料金を見るコツは、三つに分けて聞くこと。最初にいくら(機器代・工事費)、毎月いくら、何かあったときにいくら。この三つを分けて答えられる相手なら、あとから驚くことはまず起きません。
民間のサービスを比べる前に、ひとつ寄り道してほしいところがあります。親が住んでいる市区町村の窓口です。
多くの市区町村が、一人暮らしの高齢者向けに緊急通報装置を貸してくれます。ボタンを押すと受信センターにつながり、状況に応じて消防や家族、地域の協力員へ連絡が回る仕組みです。費用はまちまちですが、住民税が非課税の世帯は無料、課税世帯でも月数百円という水準を定めているところがあります〔対象・費用・条件は自治体ごとに大きく異なるため要確認〕。近所の協力員を2人立てることが条件になっている自治体もあります。
配食サービスも、見守りを兼ねています。手渡しを原則にして、届けるついでに顔色を見る設計になっているところが多く、利用料を一部助成する自治体もあります〔要確認〕。ほかに、民生委員による訪問や、地域の見守り相談拠点を置いている自治体もあります。
入口は、地域包括支援センター(高齢者の総合相談窓口)です。介護保険の認定を受けていなくても相談でき、費用もかからないことがほとんどです〔要確認〕。公的な仕組みで足りない部分だけを民間で埋める。この順番が、いちばん無駄が出ません。
良かれと思って提案したのに、「まだボケてない」と思わぬ強さで返ってくる。ここでつまずくご家族は、とても多いです。
嫌がる理由は、だいたい三つと言われます。監視されている感じがする。機械の操作に自信がない。まだ自分には必要ないと思っている。どれも、ご本人にとっては正当な言い分です。
私がいいなと思ったのは、目的の主語を入れ替える伝え方でした。「お母さんを見守るため」ではなく、「私が安心して眠るため」と言う。実際そうなんですよね。心配で落ち着かないのは、親ではなく子のほうです。「心配で毎晩電話したくなる自分をなんとかしたい。だから手伝ってほしい」。お願いの形にすると、受け取り方が変わることがあります。
そのうえで、進め方を軽くします。
いきなり全部を整えなくて大丈夫です。ひとつ入れて、慣れて、必要になったら足す。それで十分間に合います。
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。見守りの価値は、平常時ではなく、応答がなかったときに決まります。契約の前に、次の六つを口頭ではなく紙で確認してください。

三番の鍵は、とくに先に決めておきたいところです。預けない設計が基本で、預ける場合は預り証・保管方法・返し方まで確認します。玄関脇のキーボックスやスマートロックを使う方法もあります。鍵がなければ業者を呼んで開けることになり、その実費が別にかかることがあります〔要確認〕。
そしてもうひとつ。見守りは、医療でも介護でも警備でもありません。安否を確かめて連絡することが仕事であって、急病や事故そのものを防ぐと約束するものではない。誠実な事業者ほど、この線引きを自分から先に言ってくれます〔責任の範囲は契約書で要確認〕。
介護保険との違いも、ひとこと。安否確認や見守りだけを目的としたサービスは、原則として介護保険の給付にはなりにくいとされています〔要確認〕。ただし訪問介護などをすでに使っていれば、ヘルパーさんやケアマネジャーさんが訪ねる中で様子が分かります。まず今あるものを数えて、すき間がどこかを見てから足す。この順番がおすすめです。
難しい知識はいりません。次の5つを、電話や初回のやりとりで見てください。
5つ全部が完璧でなくても大丈夫です。でも、応答なしのときの手順があいまいで・料金を一式でしか答えず・できないことを言いたがらない、この3つが揃ったら、いったん離れて別のところをあたっていい合図だと思います。
「で、結局どう動くの?」というところですよね。入口は、思っているよりシンプルです。
1番の相談は無料のことが多く、地域の事業者の情報まで教えてもらえることがあります。3番の「ご本人にも紙を見せる」は、ぜひ入れてください。自分の知らないところで自分の情報が動くのは、誰だって気持ちのいいものではありません。中身を一緒に見て、ここまでね、と確かめ合う。それだけで、監視という感じは、ずいぶん薄まります。
私自身、調べるまでは見守りサービスを「機械で親を管理するもの」と思い込んでいた一人でした。でも中心にあったのは機械ではなく、応答がなかったときに誰がどう動くかという、人と人との取り決めのほうでした。
親が電話に出ない。その三十分を、ずっと一人で抱えてきた方は多いと思います。仕組みを入れるというのは、その三十分を誰かと分け合うということ。親を縛るためではなく、あなたの夜を少し静かにするために使っていい。私はそう受け取りました。
今日の1アクションは、これだけです。
親が住む市区町村の名前と「高齢者 見守り」を並べて、検索してみてください。五分で終わります。その町にどんな仕組みが用意されているかを知るだけで、次に電話がつながらなかった夜の心細さは、少し変わります。合わなければ、やめればいいだけです。まずは「そういう選択肢があるよ」ということを、ご本人にそっと届けてあげてください。
それでは、また。あなたとご家族の夜が、少しでも静かでありますように。
【免責事項】
本記事は、高齢者の見守りサービスの利用を検討するご家族・ご本人が判断材料を得るための、一般的な情報提供を目的としています。記載内容は執筆時点の情報に基づくもので、料金・自治体の事業・介護保険の取り扱い・事業者の責任範囲は、地域や時期、制度改定によって変わります。実際のサービス内容・料金・緊急時の対応範囲は必ず各事業者にご確認のうえ、お住まいの市区町村や地域包括支援センターにもご相談いただき、ご自身の判断でお決めください。本記事は特定の事業者を推奨・保証するものではなく、見守りサービスによって事故や急病を防げることを保証するものでもありません。
【出典】
著者:秋元進吾