更新しました(2026年9月26日) 挿絵を入れました
こんにちは。秋元進吾です。今日から「暮らしの出張サービスの選び方」というシリーズを始めます。第1回は、家事代行です。
夜の10時。ようやく座れたと思ったら、シンクには朝の食器がそのまま残っている。乾いた洗濯物は、畳まれないままソファの上で山になっている。「明日でいいや」と電気を消して、朝になってまた同じ景色を見る。

共働きで、二人とも帰りが遅い。実家の母が、掃除も買い物も前ほどできなくなってきた。産後で、赤ちゃんを抱えたまま台所に立てない。事情はそれぞれですが、行き着く先は同じです。家のことが、静かに積み上がっていく。
家事代行という仕事があるのは、誰もが知っています。でも、どこにどう頼めばいいのかとなると、急に分からなくなる。私自身、調べるまで、料金の見方も、頼めない仕事があることも知りませんでした。何も分かっていなかった頃の自分に渡したかった予習ノートを、そのままお裾分けします。
家事代行とは、掃除・洗濯・調理・買い物・整理整頓といった日常の家事を、スタッフがご自宅に来て代わりに行ってくれるサービスです。1回2時間から3時間ほど、週1回や隔週で来てもらう使い方が標準的です。
似ているけれど別の仕事を、先に整理しておきます。
頼む側として知っておきたいのは、家事代行を直接しばる業法がなく、日常の家事の範囲なら国家資格も営業許可も原則いらない、ということです〔要確認〕。誠実な方がたくさんいる一方で、資格の有無では相手を測れない仕事でもあります。手がかりのひとつに、経済産業省が関わる第三者認証の「家事代行サービス認証制度」があり、安全・安心、機能同等性、接遇の3つの観点で評価を受けた事業者は、運営団体のサイトで一覧を見られます〔要確認〕。
高齢の親のために調べている方が、いちばん混乱するのがここです。
介護保険の訪問介護には「生活援助」というメニューがあり、掃除や調理、洗濯を頼めます。ただしこれは、要支援・要介護の認定を受けた方にケアプランに基づいて提供されるもので、内容は自立した生活に必要な最低限に限られます。掃除はご本人が日常的に使う居室やトイレなど、調理や洗濯もご本人の分のみが対象です。

外れやすいのは、同居しているご家族の分の食事や洗濯、大掃除や窓拭き、換気扇の掃除、庭の手入れ、ペットの世話、来客へのお茶出しなど。さらに、同居のご家族がいる場合は、生活援助そのものが原則として使えません。ご家族が病気であったり、日中は仕事でいないなど、特別な事情が認められれば例外もある、という運用です〔要確認〕。
ここで出番になるのが、保険外の家事代行です。範囲の制限がないぶん自由に頼めて、そのかわり全額が自己負担になります。両方を組み合わせて使うご家庭もあります。迷ったら、担当のケアマネジャー(介護の計画を立てる専門職)に「これは保険で頼めますか」と聞くのが確実です。
金額に絶対の正解はありません。地域、時間帯、依頼の内容、移動の距離で変わります。あくまで目安の幅として受け取ってください。
同じ会社でも、単発は定期より1割から3割ほど高いのが一般的です。毎回スタッフが代わり、そのつど段取りを説明する手間がかかるからだと言われています。週1回2時間の定期なら、月額はおおむね24,000〜36,000円に交通費が加わるのが目安です。
大手の料金には、研修・保険・事故対応・スタッフの交代といった、会社が担っている安心の分が含まれています。個人やマッチング型はそのぶん安く頼めるかわりに、保険や鍵のルールを利用者側でも確かめる必要があります。安いか高いかではなく、何が含まれているかで見比べてください。
見積もりのコツは、1時間いくらだけで判断しないこと。最低利用時間、交通費、指名料、鍵の預かり料、延長料金、キャンセル料。この6つを先に聞いて、月いくらの総額に直してから比べます。
意外と知られていないのが、公的な支援です。産前産後のご家庭には、多くの市区町村に産前産後ヘルパー派遣事業があります。たとえば横浜市では、条件を満たす世帯が1回2時間以内を1,500円で利用でき、住民税非課税世帯などは減免されます〔自治体ごとに大きく異なるため要確認〕。高齢のご家庭には、シルバー人材センターの家事援助や、市区町村の総合事業による生活支援サービスがある地域もあります〔要確認〕。窓口は、産前産後なら子育て支援の担当課、高齢のご家族なら地域包括支援センター(高齢者の総合相談窓口)です。
ここを先にすり合わせておくと、当日「え、それはできないんですか」というすれ違いが起きません。
頼めることの例です。
範囲から外れやすいことの例です。
この線引きは事業者ごとに違います。問い合わせのときに、やってほしいことを具体的に読み上げて、ひとつずつ可否を確認するのがいちばん早いです〔要確認〕。

家事代行がほかの出張サービスと違うのは、留守のあいだに家へ入ってもらう場合がある、という点です。だからここだけは、口約束にしないでください。
合鍵を預けるなら、鍵預かり証を書面で交わし、保管方法・返却の条件・複製をしない約束まで書いてもらう。預かりに料金がかかる会社もあります。開錠の記録が残るスマートロックの一時パスコードを使うご家庭も増えてきました。
貴重品は、現金・通帳・印鑑・カード・貴金属には触れない、と最初に約束し、書面にも入れておきます。同時に、こちら側も出しっぱなしにしない。疑う疑われるの話ではなく、お互いを守るための段取りです。開けていい引き出しと、開けなくていい場所も、初回に伝えておくと楽になります。
賠償責任保険は、「入っていますか」だけでは足りません。補償の上限額はいくらか。破損だけでなく、鍵や物品の紛失も対象に入るか。自己負担になる分はあるか。事故のときの窓口は誰か。ここまで聞ければ十分です〔補償の内容は保険ごとに異なるため要確認〕。
そして、毎回の作業報告です。やったこと、気づいたことを短く残す習慣のある事業者は、それだけで信頼できます。話し合っても解決しないときは、お住まいの消費生活センター(消費者ホットライン188)に相談できます。契約書や領収書、やりとりの記録が、そのときに効いてきます。
難しい知識はいりません。次の5つを、問い合わせと初回のやりとりで見てください。
5つ全部が満点でなくても大丈夫です。でも、料金があいまいで・保険の話をぼかし・鍵の扱いを口約束で済ませようとする、この3つが揃ったら、いったん離れて別の事業者をあたっていい合図だと思います。
入口は、思っているよりずっとシンプルです。
高齢のご家族のために探している場合は、1番の前にケアマネジャーか地域包括支援センターへ一声かけてください。介護保険で頼める部分と保険外にお願いする部分を整理してもらえますし、地域で実績のある事業者を教えてもらえることもあります。相談そのものは、多くの場合、費用がかかりません。
家事を人に頼むことに、うしろめたさを感じる方は少なくありません。「自分でやったほうが早いし」と、つい後回しにしてしまう。私も、調べるまでは同じことを思っていた一人です。
でも、洗い物を見て「明日でいいや」と電気を消す夜が続くのは、家事の問題というより、時間と余力の配分の問題なのだと思います。誰かに2時間だけ渡してみる。それは手抜きではなく、暮らしの設計です。
今日の1アクションは、これだけです。
紙でもスマホのメモでもいいので、「1回2時間で、いちばん助かること」を3つだけ書き出してみませんか。頼むかどうかは、そのあとで決めればいい。合わなければ、やめればいいだけです。まずは、そういう選択肢があることを、ご自身にそっと置いてあげてください。
それでは、また。あなたの家の夜が、少しでも軽くなりますように。
【免責事項】
本記事は、家事代行サービスの利用を検討する方が判断材料を得るための、一般的な情報提供を目的としています。記載内容は執筆時点の情報に基づくもので、料金・サービス範囲・保険の補償内容・介護保険制度の運用・自治体の助成や派遣事業は、地域や時期、制度改定、ご本人の条件によって変わります。実際の内容・料金・契約条件・賠償責任保険の適用範囲は必ず各事業者にご確認のうえ、公的な制度についてはお住まいの市区町村の窓口や地域包括支援センター、担当ケアマネジャーにもご相談いただき、ご自身の判断と責任でお決めください。本記事は特定の事業者・サービスを推奨または保証するものではなく、本記事の利用により生じたいかなる損害についても、著者は責任を負いかねます。
【出典】