こんにちは。秋元進吾です。今日は、親の買い物が少しずつ大変になってきたご家族に向けて、そっとお届けします。
実家に帰るたびに、冷蔵庫を開けてしまう自分がいます。同じメーカーの豆腐が三つ。賞味期限の近いヨーグルトが並んでいる。「買い物、ちゃんと行けてる?」と聞くと、「大丈夫、まだ自分で行けるから」と、いつも同じ返事が返ってきます。
でも、よく見ると米は重いからと買うのをやめていたり、雨の日は結局コンビニで割高なお惣菜を買っていたり、薬局までの道のりを「最近ちょっと遠く感じる」とこぼしていたり。本人は「大丈夫」のつもりでも、できることが少しずつ削られている。そんな景色に、心当たりはありませんか。
・・・その「大丈夫」を、そのまま受け取っていいのかな。
このガイドは、専門家ぶるための記事ではありません。頼む側として何を知っておけばよかったのか、調べるまで何も分かっていなかった自分に渡したかった予習ノートを、そのままお裾分けします。
買い物代行・付き添いとは、日用品や食料品の買い物、薬の受け取り、通院や外出の付き添いを、スタッフが代わりに行ったり、一緒に出かけて手伝ったりしてくれるサービスです。大きく分けて、二つの頼み方があります。
経済産業省の推計では、日常の買い物に不便や苦労を感じる「買い物弱者」は全国に600万人前後いるとされています〔推計の時期や方法により600万〜700万人など幅があるため要確認〕。車の運転をやめたり、近所の店がなくなったりすれば、誰にでも起こりうることなんですね。
家事代行の会社が買い物代行もあわせて請け負っている場合もあれば、外出の付き添いを専門にする事業者、訪問介護の会社が保険外のサービスとして提供している場合もあります。似ている名前の仕事との違いも、先に整理しておきます。
家事代行と同じく、この仕事にも直接しばる国家資格はありません。誠実な方がたくさんいる一方で、資格の有無では相手を測れない仕事だということは、先に知っておいて損はないと思います〔要確認〕。
高齢の親のために調べている方が、いちばん迷うのがここです。
介護保険の訪問介護には「生活援助」というメニューがあり、ホームヘルパーに買い物を頼めます。ただしこれは、要支援・要介護の認定を受けた本人のためだけに使えるもので、内容は日常生活に必要な最低限に限られます。厚生労働省の通知(老計第10号)にもとづくと、同居する家族の分の買い物や、来客用・嗜好品といった本人の日常生活に必要な範囲を超える買い物は、対象外とされています〔要確認〕。現金の引き出しや振り込みの代行、通帳や印鑑の管理も、生活援助の範囲には含まれません。
さらに、同居の家族がいる場合は生活援助そのものが原則使えず、家族が病気であるなど特別な事情が認められたときだけ例外が検討される、という運用です〔要確認〕。「今日は牛乳とパンだけでなく、来客用のお菓子も」「ついでに家族の分の洗剤も」といった頼み方は、介護保険では難しいということですね。
ここで出番になるのが、保険外の買い物代行・付き添いです。家族の分もまとめて頼めますし、店を選ぶところから一緒に出かけることもできます。そのかわり、費用は全額自己負担です。介護保険で頼める部分と、保険外でお願いする部分を組み合わせて使うご家庭もあります。迷ったら、担当のケアマネジャー(介護の計画を立てる専門職)に「これは保険で頼めますか」と聞くのが確実です。
なお、通院の付き添いにも介護保険のメニュー(通院等乗降介助など)がありますが、車での送迎が中心で、病院の中で診察に付き添ったり会計を待ったりする部分は原則含まれません〔要確認〕。院内の付き添いまでまとめて頼みたいときに、保険外の付き添いサービスが選ばれることが多いようです。
金額に絶対の正解はありません。地域、依頼の内容、買い物の点数や店までの距離で変わります。あくまで目安の幅として受け取ってください。
買い物代行の場合、商品の代金そのものは別会計です。事前に予算を渡しておくか、レシートを見てあとから精算するか、方式は事業者によって違います。ここは次の章でくわしく触れます。
見積もりのコツは、1時間いくらだけで判断しないこと。基本料金、交通費、商品代金の立て替え上限、キャンセル料。ここまで先に聞いて、1回あたりの総額に直してから比べるのがおすすめです。
家事代行と少し違って、買い物代行にはもうひとつ、はっきりさせておきたいことがあります。それは、買い物のお金をどう扱うか、です。
方式は、事業者によって大きく三つに分かれます。
どの方式でも欠かせないのが、レシートの原本を必ず受け取ることです。「何を、いくつ、いくらで買ったか」が一目で分かる書類が手元に残る。それだけで、あとから金額を確認できる安心感がまったく違います。口頭で「だいたいこれくらいでした」と言われて終わる相手には、正直、お金は預けにくいですよね。
契約の前に確認しておきたいのは、次の三つです。上限額を超えそうなときは、買う前に必ず連絡がもらえるか。余ったお金は、その日のうちに現金かレシートと一緒に返してもらえるか。万が一の紛失や計算違いがあったとき、どう対応してもらえるか。ここまで先に答えられる事業者は、お金の扱いに慣れている証拠だと思います。
現金だけでなく、キャッシュレス決済に対応している事業者も増えてきました。どちらにしても、履歴が残る形で精算できるかどうかが、選ぶときの目印になります。話し合っても解決しないときは、お住まいの消費生活センター(消費者ホットライン188)に相談できます。レシートや精算の記録が、そのときにものを言います。
難しい知識はいりません。次の5つを、問い合わせと初回のやりとりで見てください。
5つ全部が満点でなくても大丈夫です。でも、お金の話をぼかし・レシートを渡したがらず・できないことを聞かれるまで言わない、この3つが揃ったら、いったん離れて別の事業者をあたっていい合図だと思います。
入口は、思っているよりずっとシンプルです。
本人が「一人で大丈夫」と言い張るときほど、無理に説得しようとしないほうがうまくいくことが多いです。「たまには荷物持ちだけ頼んでみようか」くらいの軽い誘い方から始めて、慣れてきたら少しずつ範囲を広げる。そのくらいのペースで十分だと思います。
「大丈夫、まだ自分で行けるから」。その言葉を疑えというわけではありません。ただ、大丈夫の中身が、去年と同じとは限らない。それだけです。
買い物を人に頼むことは、本人の生活を取り上げることではありません。重いものや遠い道のりだけを渡して、行きたい店には自分の足で行き続ける。そんな頼り方も、ちゃんとできます。
今日の1アクションは、これだけです。
次に実家に帰ったとき、冷蔵庫の中と、玄関にある買い物袋の重さを、さりげなく見てみませんか。頼むかどうかは、そのあとで決めればいい。まずは、今の「大丈夫」がどんな中身なのか、ご本人と一緒に確かめてみてください。
それでは、また。あなたと、あなたの親御さんの毎日が、少しでも軽くなりますように。
【免責事項】
本記事は、買い物代行・付き添いサービスの利用を検討する方が判断材料を得るための、一般的な情報提供を目的としています。記載内容は執筆時点の情報に基づくもので、料金・サービス範囲・お金の預かり方・保険の補償内容・介護保険制度の運用は、地域や時期、事業者、ご本人の条件によって変わります。実際の内容・料金・契約条件・お金の精算方法は必ず各事業者にご確認のうえ、公的な制度についてはお住まいの市区町村の窓口や地域包括支援センター、担当ケアマネジャーにもご相談いただき、ご自身の判断と責任でお決めください。本記事は特定の事業者・サービスを推奨または保証するものではなく、本記事の利用により生じたいかなる損害についても、著者は責任を負いかねます。
【出典】
著者:秋元進吾