こんにちは。秋元進吾です。「工事をプロに頼む前に読む安心ガイド」、今回は水道修理(水回りトラブル)編をお届けします。
夜中にトイレが詰まった。洗面台の下から、ポタポタ水が漏れている・・・。そんなとき、あなたはどうしますか。
たぶん、多くの人がスマートフォンで検索するか、冷蔵庫に貼ってあるマグネット広告に手を伸ばすはずです。「水漏れ修理、基本料金1,000円〜」「トイレのつまり、0円〜」。この「〜」の一文字が、実はいちばん危ないサインだったりします。
水道修理をめぐる高額請求のトラブルは、いまや社会問題と言っていいくらい相談件数が増えていると報告されています。このガイドは、緊急時ほど冷静になるための予習ノートです。もしもの前に、5分だけ読んでおいてください。
消費者庁・国民生活センターには、マグネット広告やインターネット広告をきっかけにした水道修理のトラブル相談が、数年にわたって増え続けていると報告されています。
流れは、だいたい共通しています。「水回り修理、基本料金950円〜」といった安い金額を見て業者を呼ぶ。ところが、実際に来た作業員が「これは特殊な作業なので」「部品がこのタイプだと追加費用がかかります」などと説明し、気づけば請求額は数万円、時には数十万円にふくれ上がっている・・・というものです。過去には、マグネットチラシなどで全国展開していたある水道緊急業者が、虚偽の説明で高額な契約を結ばせたり、クーリングオフを妨害したりしたとして、行政処分(業務停止命令)を受けた例も報道されています。
広告の「◯円〜」は、あくまで「いちばん簡単な作業の、いちばん安いケース」の金額であることがほとんどです。あなたの症状がそれに当てはまるとは限らない・・・そう知っておくだけで、心構えがまったく変わります。
もうひとつ、知っておくと武器になるのが「指定給水装置工事事業者」という制度です。
水道法にもとづき、各自治体の水道局(水道事業者)は、給水管の工事を適正に行えると認めた業者を「指定」しています。指定を受けるには、給水装置工事主任技術者という国家資格者を事業所に置くことなど、いくつかの要件を満たす必要があるとされています。
つまり、お住まいの自治体の指定を受けている業者かどうかは、多くの水道局のホームページで確認できる、ということです。マグネット広告や検索広告に出てくる業者が、必ずしもあなたの地域の指定業者とは限りません(他の地域の指定を受けている、あるいは指定を受けた業者から実質的に仕事だけ請け負っている、といったケースもあるようです)。
制度の詳しい適用範囲や確認方法、どこまでの工事がこの指定の対象になるのかは、自治体によって案内の仕方が異なります(要確認)。気になる場合は、お住まいの水道局のホームページで、指定業者の一覧や確認方法を調べてみてください。
水道修理も、内容によって金額の桁がかなり変わります。目安として頭に入れておくと、高額請求への耐性がつきます。
部品代自体は数百円ほどで、業者に依頼した場合の目安は5,000円〜1万円程度とされています。蛇口本体ごとの交換が必要な場合は、基本料金1万円〜2万円程度に、本体価格(1万5千円〜)が加わるイメージです。
ラバーカップなどで解決できる軽いつまりなら3,000円〜8,000円程度、便器を外さない範囲の作業で8,000円〜2万円程度が目安とされています。便器の取り外しや配管の分解が必要になると、1万5千円〜3万円以上に上がることもあるようです。高圧洗浄による本格的な対応では、1万5千円〜5万円程度が目安という情報もあります。
多くの業者で2,000円〜5,000円程度の出張費が別途かかるか、作業料金にすでに含まれているかのどちらかです。これも業者ごとに違うので、電話の時点で確認しておくと安心です。
これらはあくまで目安の幅です。症状の程度・築年数・部品の在庫状況・深夜早朝かどうかで変わります。大事なのは「金額そのものを暗記すること」ではなく、「電話口で総額の目安を聞いたときに、あまりにもかけ離れた金額が出てきたら、いったん立ち止まる」という姿勢を持っておくことです。
「来てみないとわかりません」としか言わない業者より、症状を聞いたうえで大まかな幅を答えてくれる業者のほうが、後の説明にも一貫性が期待できます。
指定番号や事業者名を隠さず教えてくれるか。答えをはぐらかす業者は、それだけで注意信号です。
「ここが劣化しているので、この部品を交換します」と、作業前に状態を見せてくれるか。見せないまま作業を進め、終わってから高額請求、というのがいちばん多いパターンです。
口頭だけの「だいたいこれくらいです」で作業を始めさせない。金額が形に残っているかどうかが、後のトラブルを防ぎます。
「見積りだけで結構です」と言ったときの態度でも、その業者の姿勢はよく分かります。
この5つ、ぜんぶ完璧でなくても大丈夫です。でも「総額を言わない・書面を渋る・断ると態度が変わる」・・・この3つが揃ったら、そこはいったん離れていい相手だと思います。
パニックになる前に、水を止める。それだけで「今すぐ誰でもいいから呼ばなければ」という焦りが、少し減ります。止水栓の場所は、後の章で一緒に確認しましょう。
時間に余裕があれば2〜3社に電話し、症状を伝えたうえでの概算を比べてください。緊急でも、1社だけで即決するのはできるだけ避けたいところです。
「見積りを見てから決めます」と伝えて、態度が変わらない業者を選んでください。この一言を渋る業者とは、そもそも縁がなかったと思っていいと思います。
なお、訪問して契約した水道工事でも、内容によっては契約書面を受け取った日から8日以内のクーリングオフが使える場合があります(特定商取引法。工事の性質によって扱いが異なることがあるため、該当するか不安な場合は消費生活センターに相談することをおすすめします)。すでに高額請求をされてしまった場合も、諦める前に一度、お住まいの自治体の消費生活センターや、消費者ホットライン(188)に相談してみてください。
長くなりました。最後に、これだけ持って帰ってください。
水道トラブルで守られるのは、「安い広告を早く見つけた人」ではありません。「焦らず、総額を確認できた人」です。
そして、今日の1アクション。
今日はまだ何も起きていないと思います。だからこそ、今のうちに。
家の中の止水栓の場所を、ひとつだけ確認しておいてください。キッチンや洗面台の下、トイレのタンク横、それから家全体を止められる元栓(水道メーターのそば)。これを知っているだけで、夜中に水漏れが起きても「まず止める、それから落ち着いて業者を選ぶ」という順番を踏めるようになります。
それだけで、慌てて検索1位に電話してしまう未来を、ひとつ回避できます。
次回もまた、別の工事編でお会いしましょう。それでも、あなたの家が、変な業者にだまされませんように。
それでは、また。
【免責事項】
本記事は、水道トラブルを依頼する方が業者選びの判断材料を得るための一般的な情報提供を目的としています。記載内容は執筆時点の情報に基づくもので、価格・相場・各種制度は、症状の内容、地域、時期、依頼先によって変動します。実際の作業内容・金額・制度の適用可否は、必ず業者の見積書や、お住まいの自治体・水道局への確認をもとに、ご自身の判断と責任でお決めください。本記事は特定の業者・商品・サービスを推奨・保証するものではなく、本記事の利用により生じたいかなる損害についても著者は責任を負いかねます。
出典・参考情報
著者:秋元進吾