「今すぐ直さないと雨漏りしますよ」・・・その一言だけで、数十万円の工事を決めていませんか


こんにちは。秋元進吾です。「工事をプロに頼む前に読む安心ガイド」、今回は屋根・雨漏り修理編をお届けします。

いきなりですが、ひとつ聞かせてください。あなたは今の家の屋根を、自分の目でじっくり見たことがありますか。

・・・たぶん、ほとんどの方が「ない」と答えるはずです。無理もありません。屋根は、住んでいる本人がいちばん見ない場所。梯子をかけてまで登る人は、まずいないですよね。

そして、これが屋根修理という工事の、いちばんの弱点です。「近所で工事をしていたので、ついでにお宅の屋根を見たら、瓦が浮いていました」・・・そう言われて差し出されたスマホの写真。それが本当に、あなたの家の屋根かどうか、あなたには確かめようがないんです。

屋根のトラブル相談は、いまも消費生活の現場でいちばんよく聞く部類のひとつと言われています。このガイドは、そういう「見せられたものを、そのまま信じてしまう」状況から自分を守るための予習ノートです。専門家ぶるつもりはありません。知っておくだけで態度が変わる、いくつかのポイントだけをお伝えします。


屋根修理は、なぜ「今すぐ」を迫られやすいのか

屋根トラブルには、よく聞く手口が大きく2つあります。ひとつずつ見ていきましょう。

突然の訪問と「点検商法」

「近くで工事をしているので、無料で屋根を点検します」。そう言って訪ねてきて、屋根に登り、降りてきてから「瓦が浮いています」「このままだと雨漏りします」と告げる・・・これがいわゆる点検商法です。

国民生活センターや自治体の消費生活センターには、この手の相談が長年にわたって寄せられ続けています。中には、点検のふりをしてわざと屋根を傷つけ、その場で修理契約を迫るような、悪質なケースが報告されたこともあるようです。屋根は本人が登って確認できない場所だからこそ、「言われたことを、そのまま信じるしかない」状況に追い込まれやすいんですね。

大事なのはここです。突然訪ねてきた人の「今すぐ」を、その場で信じないこと。本当に傷んでいるなら、あなたが自分で選んだ業者に見てもらっても、傷みは逃げません。逃げるとしたら、それは「今すぐ契約させたい理由」のほうです。

「火災保険を使えば自己負担ゼロ」という誘い文句〔要確認〕

もうひとつ、近年よく聞くようになったのが「火災保険を使えば、自己負担なく屋根を直せますよ」という営業です。

台風や雪など、自然災害による被害は火災保険の対象になることがあります。ここまでは本当です。ただし、その先に罠があります。国民生活センターは、こうした勧誘をきっかけに「保険会社への申請を業者に任せたら、手数料として保険金の一部(数割にのぼるケースもあるようです)を請求された」「実際は被害がないのに、あるように保険会社へ伝えるよう求められた」「契約を解約しようとしたら、高額な解約料を請求された」といったトラブルが全国で相次いでいると、繰り返し注意を呼びかけています。台風シーズンにあたる秋は、特にこの手の勧誘が増える傾向があるとも指摘されています。

冷静に考えると当たり前のことなのですが、保険金がいくら出るか、そもそも申請が通るかどうかを決めるのは保険会社であって、訪問してきた業者ではありません。「保険を使えば実質無料」は、あくまで業者側のセールストークだと思っておいたほうが安全です。

このあたりの適用条件・手数料の扱い・解約時のルールは保険会社や契約内容によって異なり、私が一律の答えを持っているわけではありません(要確認)。火災保険の話が出たら、契約している保険会社に、ご自身で直接問い合わせて確認することを強くおすすめします。


相場の目安〔要確認〕・・・「直し方」で金額がまったく変わる

屋根・雨漏りの修理は、実は「ひとつの相場」がありません。傷み具合によって、直し方そのものが3段階くらいに分かれるからです。

小さなひび割れやズレを直す、いちばん軽い対応です。数万円〜30万円程度が目安とされ、発生したばかりの雨漏りなら数万円で収まることもあるようです。

古い屋根材を撤去しないぶん、工期が短く、廃材も少ない工法です。一般的な戸建てで、100万円前後〜200万円程度が目安とされています。ただし下地そのものが傷んでいる場合は、この工法だけでは根本解決にならないこともあるようです。

下地から確認・補修できるので、劣化が進んでいる場合や、雨漏りの原因が内部にある場合はこちらが向いているとされています。目安は150万円前後〜250万円程度です。

金額の幅がかなり広いことに、気づかれたと思います。それもそのはずで、屋根の面積・勾配・使う材料・お住まいの地域によって、大きく変わるからです。上の数字は「だいたいこのくらいの桁になる」という目安として捉えてください。あなたの家の正解は、複数の業者に実際に見てもらった見積書の中にしかありません。

そして、ここが肝心なところです。「部分補修で済む傷み」を、「葺き替えが必要です」と大げさに言われていないか。逆に「葺き替えが必要な傷み」を、「カバー工法で安く済ませましょう」と、隠れた劣化を見ないふりをされていないか。金額そのものより、「なぜその工法を選んだのか」の説明に納得できるかどうかを見てください。


良い屋根業者を見分ける5つのポイント

難しい専門知識は必要ありません。次の5つを、見積もりや対応の中でチェックしてみてください。

  1. ドローンや高所カメラで、屋根の状態を写真・動画で見せてくれる

あなたは屋根に登れません。だからこそ、「見せる努力」をする業者かどうかが分かれ目です。口頭で「傷んでいます」と言うだけの業者より、画像で状態を示し、どこがどう傷んでいるかを説明できる業者のほうが、信頼度は高いはずです。

  1. 自社施工か、下請けに丸投げしていないかを、聞けば答えてくれる

「御社の職人さんが直接工事しますか」と聞いて、はっきり答えられるか。何社も経由した下請けだと、中間マージンが積み重なったり、責任の所在があいまいになったりしがちです。

  1. 見積書に工法名・使用材料・面積が明記されている

「屋根修理工事 一式 ◯◯円」ではなく、「カバー工法・ガルバリウム鋼板・◯◯㎡」のように、何をいくらでやるのかが書いてあるか。ここがぼやけている見積書は、後から追加請求が来るリスクも高くなります。

  1. その場で契約を急がせない

「今日契約してくれれば足場代を無料にします」「今週中じゃないと保険が使えなくなります」・・・こうした急かし文句が出たら、いったん距離を置いていい合図です。

  1. 保証とアフター点検の中身を、書面で示してくれる

「何年保証」だけでなく、何が保証の対象で、点検はいつ来るのかまで。曖昧な口約束で終わらせない業者を選んでください。

この5つ、ぜんぶ完璧でなくても大丈夫です。でも「写真を見せない・急がせる・下請けを隠す」・・・この3つが揃ったら、そこはいったん離れていい相手だと思います。


頼み方3ステップ

  1. 突然の訪問・飛び込みの点検は、その場で頼まない

「無料点検します」と言われても、契約はもちろん、その場での作業依頼もいったん保留に。本当に必要な工事なら、後日あなたが選んだ業者に見てもらっても遅くありません。

  1. 複数社(目安3社)に見てもらい、写真つきで比較する

1社の見積もりだけでは、金額が高いのか安いのかすら判断できません。3社に同じ条件で見てもらうと、極端に高い・安い会社が自然と浮かび上がってきます。

  1. その場で契約しない・火災保険を使う場合は自分でも保険会社に確認する

持ち帰って、家族と相談する時間を取ってください。良い工事は、一晩寝かせても良い工事のままです。そして火災保険を使う話が出たら、申請の可否や金額は、業者ではなくご自身で保険会社に確認することをおすすめします。

なお、訪問販売で契約してしまった場合でも、契約書面を受け取った日から8日以内であれば、原則として無条件で解約できるクーリングオフの制度があります(特定商取引法)。「もう契約してしまったから」とあきらめず、まずは書面の日付を確認してみてください。


まとめ・・・今日の「ひとつだけ」

長くなりました。最後に、これだけ持って帰ってください。

屋根修理で守られるのは、「屋根に登って自分の目で確かめられる人」ではありません。「写真を見せてもらい、複数社を比べ、その場で決めない人」です。

そして、今日の1アクション。
いきなり3社に電話するのは、ハードルが高いですよね。なので今日はもっと小さく。

もし訪問業者から見せられた写真や見積書が手元にあるなら、「工法名・面積・使用材料」の3つが書いてあるかどうかだけ、確認してみてください。

それだけで、その見積書が「説明する気のある書類」か「急がせたいだけの書類」か、ぼんやり見えてくるはずです。

次回もまた、別の工事編でお会いしましょう。それでも、あなたの家が、変な業者にだまされませんように。

それでは、また。


【免責事項】
本記事は、工事を依頼する方が業者選びの判断材料を得るための一般的な情報提供を目的としています。記載内容は執筆時点の情報に基づくもので、価格・相場・制度・保険の適用条件は、家の状態や地域、時期、契約している保険会社によって変動します。実際の工法・工事内容・金額・保険適用の可否は、必ず業者の見積書や契約書面、および保険会社への確認をもとに、ご自身の判断と責任でお決めください。本記事は特定の業者・商品・サービスを推奨・保証するものではなく、本記事の利用により生じたいかなる損害についても著者は責任を負いかねます。

出典・参考情報

著者:秋元進吾