更新しました(2026年9月26日) 挿絵を入れました

久しぶりに実家へ帰ったとき、こんなふうに感じたことはありませんか。
お父さんの髪が、ずいぶん伸びている。ひげも、なんだか整っていない。「床屋、行ってないの?」と聞くと、「もういいよ、どうせ誰にも会わんし」と笑う。
・・・その「もういいよ」を、そのままにしていいのかな。この記事は、そんなふうにモヤッとした気持ちを抱えたご家族のために書きました。
外出がしんどくなってきた家族に、散髪と顔そりを頼みたい。でも、どこに・どう頼めばいいのか分からない。そういう方の「予習ノート」として読んでいただけたらうれしいです。専門家ぶるつもりはありません。私自身、調べるまで知らないことばかりでした。
訪問理容とは、理容師さんがご自宅や施設に出向いて、調髪(カット)や顔そりをしてくれるサービスのことです。美容師が来てくれる「訪問美容」と合わせて、「訪問理美容」と呼ばれることもあります。
実は理容の仕事は、保健所(地域の衛生を監督する行政機関)に届け出た理容所で行うのが法律上の原則とされています。ただし、病気や高齢などで理容室に通うのが難しい方などには、例外として出向いての施術が認められています。つまり訪問理容は、外出が難しい方のために用意された、れっきとした仕組みなんですね。
ベッドに横になったまま、車いすに座ったままでも、姿勢に合わせて仕上げてもらえます。
「理容と美容って、何が違うの?」とよく聞かれます。ざっくり言うと、こういう整理になります。

顔そりは、皮膚にカミソリを当てる施術なので、一般に理容師さんの領域とされています。ここが両者の大きな違いです。お父さんやおじいさんが「さっぱりひげをあたってもらいたい」というときは、顔そりのできる訪問理容が向いていることが多いです。〔対応できる範囲は事業者ごとに違うので要確認〕
高齢の男性のお客さまには、調髪と顔そりをセットで頼む方が多いと言われています。首まわりや顔がすっきりすると、それだけで表情が明るく見えるものです。
いちばん気になるのが料金ですよね。正直にお伝えすると、金額に絶対の正解はありません。髪やひげの状態、お住まいの地域、移動の距離で変わるからです。あくまで「目安の幅」として、こんな水準と言われています。
出張費を料金に含めて、分かりやすく提示している事業者が多いようです。とはいえ最後は、必ず事前にお見積りを取ってください。「顔そりは別料金ですか」「出張費は込みですか」と、先に聞いておくと安心です。
そしてもうひとつ、知られていないのが自治体の助成です。市区町村によっては、外出が難しい高齢の方向けに、出張での調髪や顔そりの費用を助成している場合があります。やり方は地域によってバラバラなので、お住まいの市区町村の高齢者福祉の窓口か、担当のケアマネジャー(介護支援専門員。介護の計画を立てる専門職)さんに「理美容の助成ってありますか」と聞いてみてください。この一言で、負担が軽くなることがあります。〔制度の有無・内容は自治体ごとに異なるため要確認〕
顔そりは、皮膚にカミソリで触れる施術です。だからこそ、衛生と安全の確認は、他のどこよりも大事だと私は思っています。
出張での理容は、厚生労働省の「出張理容・出張美容に関する衛生管理要領」といった目安に沿って行うものとされています。きちんとした事業者は、たとえばこういう配慮をしてくれます。

特に、血をサラサラにするお薬を飲んでいる方や、肌が弱い方は、顔そりで小さな傷が心配になることがあります。持病やお薬のことは、遠慮せず先に伝えてください。良い理容師さんほど、その情報をありがたがってくれます。
見きわめのコツはシンプルです。電話で「衛生管理はどうされていますか」「顔そりの器具はどう消毒していますか」と聞いてみて、すっと自分の言葉で答えられるか。ここが、ひとつの目安になります。
難しい知識はいりません。次の5つを、電話や初回のやりとりで見てください。
5つ全部が完璧でなくても大丈夫です。でも、料金があいまいで・衛生の質問にごまかす・こちらの都合を嫌がる、この3つが揃ったら、いったん離れて別の事業者をあたっていい合図だと思います。
「で、結局どう頼むの?」というところですよね。入口は、思っているよりずっとシンプルです。

これだけです。1番の相談は無料のことが多く、紹介実績のある事業者を教えてもらえることもあります。いちばん確実で、いちばん安心な入口です。
ご本人からは、なかなか言い出しません。「お金がかかるから」「お前に悪いから」と、我慢してしまう世代です。だからこそ、最初の一声は、ご家族から。それだけで景色が変わることがあります。
私自身、今回このテーマを調べるまで、散髪や顔そりを「ただの身だしなみ」だと思い込んでいた一人でした。でも、ある調査では、施術のあとに「笑顔になる」ご本人が多く、ご家族の半数以上が「介護の状態の変化」まで感じ取っている、というデータもあります。髪とひげを整えることは、心のケアでもあるのかもしれません。
「もういいよ」は、本心ではないことも多いのだと、私は思っています。さっぱりした鏡の中の自分を見て、うれしくない人はいませんから。
今日の1アクションは、これだけです。
次にケアマネさんや地域包括支援センターと話す機会があったら、「訪問理容って使えますか。顔そりもできますか」と、ひとこと聞いてみませんか。合わなければ、やめればいいだけです。まずは「そういう選択肢があるよ」ということを、ご本人にそっと届けてあげてください。
【免責事項】
本記事は、訪問理容の利用を検討するご家族・ご本人が判断材料を得るための、一般的な情報提供を目的としています。記載内容は執筆時点の情報に基づくもので、料金・制度・助成・法令の扱いは地域や時期によって変わります。実際のサービス内容・料金・衛生管理・対応範囲は、必ず各事業者にご確認のうえ、お住まいの自治体や担当ケアマネジャーにもご相談いただき、ご自身の判断でお決めください。本記事は特定の事業者・サービスを推奨・保証するものではありません。
【出典】