第8講で「本当にかかったお金=買った額 − 手放した額 + 維持費」という式を出しました。 その「手放した額」を大きくする回です。 やることは難しくありません。手放し方を知り、査定が何を見ているかを知り、少し準備をする。 それだけで、金額は変わります。
| 方法 | 中身 | ひとことで |
|---|---|---|
| 下取り | 次の車を買う販売店に引き取ってもらう | 手続きが楽。金額は控えめなことが多い |
| 買取専門店 | 買い取りを専門にする店に売る | 下取りより高くなることが多い。複数回ると差が見える |
| 一括査定 | 複数の業者にまとめて見積もりを依頼する | 金額は上がりやすいが、連絡が集中する |
| 個人売買・ フリマ形式 | 個人に直接売る | 高くなる可能性はあるが、手続きと責任は自分持ち |
1か所だけで決めないこと。 最低でも2か所、できれば3か所で見てもらってください。 同じ車でも、店によって金額が変わります。理由は、その店が「いまその車を欲しがっているか」がちがうからです。 在庫が足りない店は高く出しますし、すでに同じ車を抱えている店は安く出します。
査定士が見ているのは、おおむねこの9項目です。第10講で「買う側」として見た項目と、ほぼ同じです。
| 項目 | 効き方 | 自分で変えられるか |
|---|---|---|
| 年式 | 新しいほど高い | 変えられない |
| 走行距離 | 少ないほど高い。5万km、10万kmが節目になりやすい | 変えられない(手放す時期は選べる) |
| 修復歴 | あると大きく下がる | 変えられない。隠さないこと |
| 車種の人気 | 需要のある車種は高い | 買うときに決まっている(第6講) |
| 色 | 白・黒が有利になりやすい | 買うときに決まっている |
| グレードと装備 | 上位グレード、人気装備は評価される | 買うときに決まっている |
| 外装と内装の状態 | 傷、へこみ、汚れ、におい | 変えられる |
| 記録簿 | 整備の記録があると評価される | 変えられる(残しておけば) |
| タイヤなど消耗品 | 残りが少ないと下がることがある | 状況による |
このうち、手放す直前に変えられるのは7番と8番だけです。 残りは買うときに決まっています。だから第6講で「数年後に効く選び方」を扱ったのです。 出口の話は、実は入口から始まっています。
査定士は状態を数字で見ますが、大事に乗られてきた車かどうかという印象も見ています。 きれいな車は、見えない部分も手入れされている可能性が高いと判断されます。 高価な磨きに出す必要はありません。半日の掃除で十分です。
| タイミング | なぜ効くか |
|---|---|
| 走行距離の節目の手前 | 5万km、10万kmを超えると評価が下がりやすい。手前で動くと有利なことがあります |
| 年式が変わる前 | 年式は1年ちがうだけで評価が変わります |
| 需要が高まる季節 | 四駆やSUVは雪の前、オープンカーは春先。売る側として有利な時期があります |
| モデルチェンジの前 | 新型が出ると、前の型の相場が下がることがあります |
| 車検の前 | 通してから売っても、車検費用の全額が査定に乗るとは限りません。通す前に一度査定してもらう |
ただし第21講と同じで、時期より自分の必要が優先です。 使えない車を、季節を待つために置いておく意味はありません。
複数の業者にまとめて依頼できる仕組みです。金額は上がりやすい一方で、知っておくべきことがあります。
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| 必要な書類 | 車検証、自賠責の証明書、印鑑証明、譲渡に必要な書類など。店が案内してくれます |
| 名義変更 | 確実に行われたか、あとで確認してください。名義が残ったままだと、税や事故の連絡が来ることがあります |
| 自動車税 | 前払いした分が戻る場合があります。扱いは相手や時期によります |
| 自賠責保険 | 残りの期間に応じて戻ることがあります |
| リサイクル料金 | 廃車ではなく譲渡の場合、預けた分が戻ることがあります |
| 任意保険 | 次の車に引き継ぐ手続きを。中断する場合は等級を保つ制度があります |
等級の中断制度は覚えておくと役に立ちます。 しばらく車を持たない場合でも、手続きをしておけば等級を保てることがあります。 次に車を持つときの保険料が変わります。保険会社に確認してください。
修復歴を隠す、事故の履歴を言わない、走行距離について虚偽の説明をする。 これらは契約の解除や、損害賠償の対象になりえます。 査定士はプロなので、たいていの場合は分かります。隠して得られるものより、失うもののほうが大きいです。
家の車のスペアキーがどこにあるか、探してみてください。 2本そろっていますか。それだけで、手放すときの評価が変わります。 出口の準備は、手放すと決めてから始めるものではありません。 買った日から、静かに始まっています。