ここまで22の講を通ってきました。知る、選ぶ、買う、持つ、手放す。 そして手放したあと、また次の1台を選ぶところに戻ってきます。 この円を一周した人は、もう最初の人とはちがいます。 最後の講では、一周したことで何ができるようになったのかを確かめます。
第1講で、車の形は用途から生まれたという話をしました。 第7講で、自分の使い方を数字にしました。第10講で、個体の見方を覚えました。 第15講で払い方の構造を知り、第17講で維持費の全体像をつかみ、第22講で査定の見方を知りました。
これらは、ばらばらの知識ではありません。全部つながって、ひとつの輪になっています。
手放すときの金額は、買うときのグレードと色で決まっていました(第6講)。
維持費の大きさは、選んだ車の排気量とタイヤの大きさで決まっていました(第17講・第20講)。
いい店に出会えるかどうかは、こちらが何を聞けるかで決まっていました(第13講)。
出口で起きることは、すべて入口で決まっている。これが、この23講でいちばん伝えたかったことです。
一周した人にできるようになるのが、これです。手放すときのことを考えて、買う。
| 買うときの判断 | 出口でどう効くか |
|---|---|
| 台数の多い車種を選ぶ | 部品が安く、整備先が多く、中古の需要も安定する |
| 売れ筋のグレードを選ぶ | 手放すときに買い手が見つかりやすい |
| 白か黒を選ぶ | 査定で有利になりやすい(ただし好きな色が第一) |
| メーカーオプションを厳選する | あとから付けられないぶん、付いている車は評価される |
| 記録簿を残す | 費用ゼロで、数年後にお金になる |
| 乗る年数を先に決める | 払い方(第15講)も、車両保険(第18講)も、この前提で決まる |
第6講で書いたとおりです。優先順位は、1に使い方、2に好み、3に数年後の値段。 逆算はあくまで3番目の話です。売るときのために好きでもない車を買うのは、本末転倒です。 その車に乗るのは、これからの数年間のあなたなのですから。
2台目を選ぶとき、いちばん強い材料は、実際に乗った経験です。 ただし、経験を感想のままにせず、条件の言葉に翻訳する必要があります。
| 感想 | 条件に翻訳すると |
|---|---|
| 駐車がしんどかった | 全幅を◯cm以下に。最小回転半径の小さい車を(第1講) |
| 高速で疲れた | 高速の比率を出し直し、7項目のどれが足りなかったかを特定する(第7講) |
| 荷物が積めなかった | いちばん多い積み方を具体的に書き出す(第7講) |
| 維持費が思ったより高かった | どの項目が想定を超えたかを見る。次は年間コスト表で先に計算(第8講・第17講) |
| 燃料代がかかった | 距離と比率から、動かし方を選び直す(第2講) |
| 店との相性が悪かった | 次は10項目で見分ける(第13講) |
この翻訳ができると、2台目は1台目より確実に良くなります。 失敗も含めて、経験は全部使えます。むしろ、うまくいかなかった部分のほうが、次への材料としては優秀です。
最後に、確認です。次の問いに、自分の言葉で答えられるでしょうか。 答えられなければ、その講に戻ってください。それがこのカリキュラムの使い方です。
| 問い | 戻る講 |
|---|---|
| ミニバンとSUVは、それぞれ何のために生まれた形か | 第1講 |
| ハイブリッドが効くのはどんな使い方か | 第2講 |
| 同じ中身の車が別の名前で売られているのはなぜか | 第3講 |
| 「外車は維持費が高い」を、より正確に言い直すと | 第4講 |
| 1998年に軽自動車に何が起きたか | 第5講 |
| メーカーオプションとディーラーオプションのちがいは | 第6講 |
| 高速の快適さを決めるものを3つ挙げると | 第7講 |
| 維持費の9項目を挙げられるか | 第8講 |
| 登録済未使用車とは何か | 第9講 |
| 修復歴とは、どこを直したことを指すか | 第10講 |
| 見積書の3つの塊のうち、どこで比べるべきか | 第14講 |
| 残価設定クレジットは、何を前提にした仕組みか | 第15講 |
| 納車のときに絶対に抜かしてはいけない手続きは | 第16講 |
| 対人・対物賠償を無制限にする理由は | 第18講 |
| 「車検を通した」は何を意味するか | 第19講 |
| 査定で、手放す直前に変えられる項目は | 第22講 |
覚えることが目的ではありません。必要なときに、どこを見ればいいか分かること。それで十分です。 図解㉝のマップを手元に置いておけば、そのときどきで必要な1枚にたどり着けます。
ここまで読んだ人は、そのうち相談される側になります。 友人が初めての車を買うとき、家族が買い替えを考えるとき。そのときに渡してほしい言葉があります。
答えを与えるのではなく、問いを渡す。 そのほうが、その人は自分で決められるようになります。 このカリキュラムがやろうとしてきたことも、同じです。
いま、あなたが「次に買うなら、この条件」と言える条件を3つ、書き出してみてください。 車種名ではなく、条件です。全幅、乗る人数、高速の比率、充電環境、年間で出せる金額。 条件を持っている人は、店頭でも、ネットの書き込みの前でも、迷いません。 それが、このカリキュラムが渡したかった「目利き」です。