車のカリキュラム第7講 最初の質問は「何に使うか」
🗺 目次
車のカリキュラム / 第2部 選ぶ編

第7講 最初の質問は「何に使うか」

用途から、必要な条件を逆算する

ここから第2部です。地図編で全体像をつかんだので、いよいよ自分の1台を絞っていきます。 最初の質問は「どんな車がほしいか」ではありません。何に使うかです。 使い方が決まれば必要な条件が決まり、条件が決まれば候補は数台まで絞れます。 この順番を守るだけで、車選びの失敗はかなり減ります。

01使い方の棚おろし

紙とペンを用意してください。次の3つを、頻度ごとに書き出します。

毎日/週に数回月に数回年に数回
誰を乗せるか自分ひとり/夫婦/子ども友人/親親族全員/帰省
何を積むか通勤かばん/買い物袋まとめ買い/子どもの用具旅行の荷物/大きな買い物
どこへ行くか職場/学校/スーパー郊外の店/病院実家/旅行先

ここでいちばん大事な原則

頻度の低い用途に、車を合わせないでください。 年に2回の帰省のために3列シートを買うと、残りの363日を大きな車で過ごすことになります。 駐車場でも狭い道でも、毎日その大きさと付き合うのです。 年に2回ならレンタカーを借りるほうが、多くの場合は安く、快適です。

📊 図解⑭ 使い方の棚おろしシート(A3横1枚)
書き込み式です。誰を・何を・どこへを頻度別に埋め、年間走行距離と街乗りと高速の比率を出すところまで、1枚でできます。

02街乗りと高速の比率を数字にする

ここが、この講のいちばんの要点です。 多くの人が「だいたい街乗りかな」で済ませてしまいますが、この比率が決まらないと、動かし方も車の大きさも決まりません

出し方

  1. 通勤・通学・・・片道の距離 × 2 × 月の日数 × 12か月
  2. 買い物・送迎・・・1回あたりの距離 × 回数 × 12か月
  3. 帰省・旅行・・・片道の距離 × 2 × 年の回数
  4. この3つを足すと、おおよその年間走行距離が出ます
  5. そのうち、高速道路を使う部分がどれだけかを数え、比率にします

比率で何が変わるか

高速の比率変わること
1割以下
(ほぼ街乗り)
ハイブリッドや軽が効く。小回りと駐車のしやすさを優先。力の余裕はそこまで要らない
2〜3割どちらも中庸に。コンパクトカーやSUVがちょうどよくなる帯
3割以上高速の快適さにお金を払う価値が出てきます。次の章の7つが、そのまま判断材料になります
5割以上車格・静かさ・運転支援を最優先に。ディーゼルや排気量に余裕のある車も候補

年に1回しか高速に乗らない人が、高速の快適さのために大きな車を買う必要はありません。 逆に、毎週のように高速で往復する人が軽自動車を選ぶと、体の疲れが積み重なります。 比率を数字にする理由は、この判断を感覚ではなく事実でやるためです。

03高速の快適さを決める7つ

高速道路が「疲れない車」と「疲れる車」の差は、はっきりあります。何が効いているのかを7つに分けました。

1. 車体の大きさと重さ、ホイールベース

ホイールベースとは、前のタイヤと後ろのタイヤの間の距離です。これが長いほど、直進が安定します。 重い車のほうが路面の凹凸に揺さぶられにくいのも事実です。軽くて小さい車ほど、高速では落ち着きにくいという関係があります。

2. 力の余裕

合流、追い越し、登り坂。ここで余裕があるかどうかは、安全にも直結します。 しかもカタログの数値は、たいてい運転手ひとりの状態の話です。 家族4人と荷物を積んだときにどうなるかを想像してください。人と荷物を積むほど、差が出ます。

3. 静かさ

高速で疲れる大きな原因が音です。音には種類があります。

遮音材をどれだけ入れているかは、価格帯にわりと素直に比例します。 ここは同じ車種の中でも、グレードによって差があることがあります。

4. シートと座り姿勢

2時間座って腰が痛くなるかどうかは、ほぼここで決まります。 背もたれの角度、太ももを支える長さ、腰のあたりの支え。 試乗のときは、必ず自分がいつも運転する姿勢に調整してから走ってください。 展示車で10分座ってみるだけでも分かることがあります。

5. 運転支援

前の車との距離を保って速度を自動で調整する機能(アダプティブクルーズコントロール)は、 高速でいちばん効く装備です。渋滞でもアクセルとブレーキの操作が減ります。 車線の中央を保つ機能と組み合わせると、長距離の疲れ方がはっきり変わります。

6. 燃費が得意な領域のちがい

第2講で扱ったとおりです。ハイブリッドは街乗りで効き、高速では差が縮まります。 ディーゼルは一定の速度で走り続ける場面が得意です。 電気自動車は高速で電力の消費が増えるので、充電の計画が必要になります。

7. 横風とふらつき

背の高い車は、橋の上やトンネルの出口で横風を受けやすくなります。 背の高い軽自動車やミニバンで高速をよく走る人は、ここを体で確かめておく価値があります。

試乗は、高速を含めて頼む

店の周りを一周する試乗では、この7つのうち5つが判定できません。 「高速に乗るコースで試乗させてもらえますか」と頼んでください。断られることもありますが、聞く価値はあります。 高速比率が3割を超える人にとっては、これがいちばん重要な確認作業です。

📊 図解⑮ 高速の快適さを決める7つ(A3横1枚)
7つそれぞれについて、なぜ効くのか・カタログのどこを見るか・試乗でどう確かめるか・影響の大きさを並べました。試乗に持って行く1枚です。

04必要条件を3つに分ける

棚おろしができたら、条件を3つの箱に分けます。これで候補が一気に絞れます。

意味
絶対に要るこれがないと生活が回らない。妥協しない条件駐車場に入る大きさ/スライドドア/四輪駆動/3人以上乗れる
あるとうれしい優先はするが、他とのバランスで捨ててもよい大きな画面/サンルーフ/本革シート/特定の色
要らないあっても使わない。ここを決めるのが実は大事3列目/大出力/過剰な装備

「要らない」の箱をきちんと埋めた人は、店頭で迷いません。 勧められた装備に対して「それは要らない箱です」と即答できるからです。 逆に、この箱が空っぽのまま店に行くと、全部が魅力的に見えます。

05よくある3つの失敗

失敗何が起きるか直し方
頻度の低い用途に
合わせてしまう
年数回のために大きな車を買い、毎日その大きさに苦労する年に数回のことは、借りる・別の手段を使うと決めてしまう
人数を最大で
考えてしまう
7人乗りを買ったが、実際は2人で乗ることがほとんどいちばん多い乗車人数で選ぶ。最大人数は例外として扱う
荷物を最大で
考えてしまう
大きな荷室を求めて車が大きくなり、駐車場が窮屈になるいちばん多い積み方で選ぶ。年1回の大荷物は積み方を工夫する

3つとも根は同じです。例外に合わせて日常を犠牲にしているという構造です。 車選びに限らず、大きな買い物ではよく起きます。気づけるだけで、選び方が変わります。

06試乗のときにやること

今日、ひとつだけ

これから1週間、車で移動した距離を記録してみてください。スマホの地図アプリの履歴でも十分です。 1週間ぶんが分かれば、1年ぶんはかけ算で出ます。 自分の数字を持っている人は、店頭でも、ネットの書き込みの前でも迷いません。

出典と注記